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第四話:外交官たちとの邂逅


「こちらこそ初めまして、ガグ大使。私は吹上ユツキと申します。私はあまりまわりくどい表現は好みません、早速ではありますがご用件は?」


「はい、なれば単刀直入に申し上げます。吹上ユツキ様、我がバレシア公国のある御方が、貴方の力を借りたいと申しております。一緒に来ていただきたいのです」


 ガク大使のこの提案、噛みついたのは私ではなく。


「そのセリフ、ルクイアーダ王国騎士団首席騎士カヴァンの前だと知っていて申し出ですか?」


「…………」


「ガク大使、聖女は人であれど聖樹に認められた我が国家の財産でもあります、それを知らぬとは言わせません。その聖女に対して堂々と他国への亡命を進めるとは明らかな内政干渉、これは本国に抗議をさせていただきますよ」


「ご自由に」


「な!? それは、我が王国に対しての侮辱行為であると」



「「元聖女」吹上ユツキは王子の不興を買い爵位剥奪の上追放処分となった。そう既に「公告」されております。即ち聖女ユツキは「自由意志を持つ一般国民」であると、そちらが言っているのですよ? 故に私の行為は内政干渉には当たらない、亡命を促しているなどもってのほか、そうですね、海外旅行のお誘いだと解釈ください」



「ぐっ!」


 挑発的な文言に反論できないカヴァン、そう、あの馬鹿王子の為に、目の前の外交官の筋が通るようになっている。


 必死に私を守ろうとしてくれるのは嬉しい、けど。



 私には目的がある。



「分かりました。その「御方」にお伝えください。吹上ユツキは招待を受けると」



 私の回答は意外だったのだろう、カヴァンだけではなくガク大使も目を見開く。


「何も聞かないのですか?」


「ならば逆に問いかけます、貴方は「聞かれても答えられる権限」を与えられているのですか?」


「……どうしてそう思うのです?」



「大使と言えば、諸外国の国民の代表格にある人物、つまり高級官僚。ですが貴方は「ただの使いパシリ」だと思ったからです」



「っ!」


 私の挑発する文言に、顔を歪めるガク大使。


「失言をお詫びしますわガク大使、ですが思わせぶりにもったいぶっていますが、それはおそらくハッタリ、ひょっとしたら用件すら知らないのではないですか?」


「…………」


「だから「使いパシリ」と表現しました。高級官僚である大使をそのように使える人物に興味がわいた、これが招待を受ける理由の一つ。更に御方は、我が国の内情にも詳しそうですね?」


「…………」


「この対応の早さを鑑みるに、私の聖女としての立場が前々から危ういという情報を得ているのでしょう。しかもカヴァン首席騎士の下に身を寄せていることも知っている。情報の速さ、正確さ、対応の速さ。これが同行を承諾する二つ目の理由です」


「……話が早く助かります。出立についていつごろがよろしいですか?」


「こちらにも色々と準備があります。追って知らせますので、大使館あてに私が文を出しますわ」


「分かりました。お待ちしておりますよ」


 とガク大使たちは立ちあがりカヴァン宅を後にした。





「ユツキ様、その」


 カヴァンが話しかけてる。


「ざまあないってね、あの偉そうな態度、気に喰わなかったの」


「え?」


「あの大使様よ、それよりごめんね、折角伝手を紹介してくれたのに」


「い、いえ、それは問題ないのですが、、、」


 悔しそうな表情、自分の無力さを噛みしめているようだったが。


「カヴァン、今回の事で色々とやらなければいけないことが出来た、だから私の頼みを聞いてくれる?」


 私の問いかけに。


「も、もちろんです!」


 と答えてくれた。


「そのためには、まず聖女達の関係についてだけど」


 と話し始める。


 まずは、私の置かれた現状についての情報を共有しなければならない。



――



 聖女とは国から認められた聖女という爵位を持つ貴族であるというのは繰り返し述べたとおりだが、これは聖女を保護するための例外貴族の立場であると解釈してよい。


 聖女に認定されてからは、外出の自由すらなくなる。常に警護がつき、城の敷地内の聖女居住区に住まいが限定され、国家への奉仕が義務づけられる。


 私で例えると。


 起床後、聖女達が一堂に会して聖樹に祈りを捧げる。


 捧げた後、聖域を清掃ご朝食。


 その後、各魔法能力に応じて割り当てられた職務に精励する。


 ざっくりいうとこんな感じで、同じ魔法使いは割とチームとして組まされることも多い。


 回復魔法使いは特命無ければ、王立病院に勤めており、そこで回復魔法を使い患者の身体の回復業務に勤めている。



 そして私はノバルティスと一緒の回復魔法のチームで組んでおり、彼女はそこのリーダー格だった。



「なるほど」


 と話を聞いて頷いたのはルミで、、。


「…………」


 そのまま考え込んでいる。


「姉さま、今までの話だとノバルティスは、、、」



「そう、手強いわ、単純に政治力で負けたよね、今回は」



 先ほどの話、私の王国病院での立場は悪かった。


 元より魔法力だけを見ればライバル関係であった私が邪魔であったのは容易に想像がつくだろうし、持ち前の立ち回りの良さを駆使して「私の立場が悪いという空気」を確立されてしまって、そこから挽回不可能だった。



(よくみる追放系の王子等を誑し込むぶりっ子女は、脳味噌お花畑で浅はかで愚かで男の媚び売りだけ上手)



 だったらどれだけ良かったことか。


「私は政治が正直苦手で、前々から立場がよくなかったの、浮いてたし」


「…………」


 と押し黙るルミの横で、、。


(´・ω・`) ←カヴァン


「ど、どうしたの?」


「え、え、その、聖女達の話って、な、なんです、その人間関係、余りにドロドロしていて、そ、そんな、それは、嘘じゃないですか?」


「はい?」



「だって普段皆さんあんなに仲良さそうにしていたじゃないですか!!」



「…………」


「いつも一緒に食事して笑顔で話していて遊んだりもしていて、お互いにプレゼントとか(以下略)」



――説明中



((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル ←カヴァン


 その後の説得に30分かかった、見てのとおりえらいショックを受けている。


「だって、男は、嫌いなら態度に出るし、話さない、関わり合いを極力持とうとしないし、どうしてそんな」


 と泣きそうな顔を虚ろな顔で独り言をブツブツ言っている。


 結局面倒になったルミが「考えるな感じろ」という何処の格闘家の名言を放って、それには何故か「剣術と一緒か」と謎の納得したのであった。


 さて、思わぬ寄り道をしたものの。


 急にカヴァンの顔が騎士のそれになる。


「ユツキ様、その嵌められた話についてですが、ナンパした3人についてはどういう人物かご存知ですか?」


「? いいえ 知ってるの?」


「……言葉は良くないですが、この3人は有名なクズ達ですよ」


 この3人は所謂、私の世界での反社会勢力にカテゴライズされる人物で、犯罪と呼ばれるものはありとあらゆる事をやってのける外道だそうだ。当然に人身売買にも手を出している。


「それだけやって捕まらなかったの?」


「もちろん何回も捕まえていますが、死刑や終身刑だけは避ける手段だけは上手な奴らです。正直言えば、こいつらにとっての初めての世の貢献はまさに「処刑」されたことでしょうね」


 処刑。


 そう、聖女は爵位を持つ貴族。


 王子の言ではないが、あの3人は策謀を自供したのも事実。


 その後の捜査により3人組の数々の犯罪が「不自然に明るみ」になり情状酌量の余地なしという事で処刑されたのだ。


 その捜査の陣頭指揮をとっていたのが騎士団だ。


「ユツキ様、ノバルティス様の出身はご存知ですか?」


「知ってる、スラムでしょ? よくそれで他の聖女達から苛められてたわ」


 ここでルミが発言する。


「イジメを、、、受けている? イジメをする側にしか見えないのに」


「もちろんそれを利用して「可哀想で健気な私」を演出していたわ、本当に大したタマよね」


「はー、なんか、そこまでいくと、凄いと思ってしまう自分がいる」


「同感よ」


「「はっはっは」」


(´・ω・`)←カヴァン


「っと、ごめんね、それで」


「は、はい、ごほん、えっと、あの3人の出身もスラムなんです、これについては」


「多分無関係よ」


「え?」


「言ったでしょ? それこそスラム出身で同じスラム出身の人物を使って嵌めるなんて、逆にそんな単純な手段を使ってくれればどれだけよかったか、実際に捜査して繋がりは出てきたの?」


「……いいえ、確かにスラム出身だから全員がクズという訳ではありませんが」


「ならそれが正解だと思う」


「…………」


 ここでカヴァンはあることに気付く。


 この3人とノバルティスは無関係、そしてユツキの言葉が信じるのなら、、、。


「何故、この3人は、そもそも自供なんてしたのでしょう?」


 そこに尽きる。


 行動自体に訳が分からない。


 訳が分からないのなら、、、。


「まさか、他に聖女の協力者が!」


 とカヴァンが発言する。


 聖樹の祝福は、1人に1つの魔法しか与えず、それに例外は無いからだ。


「正直、その可能性はかなり低いとは思っている」


「そ、そうなのですか?」


「確かに人心を操る魔法を使える聖女はいることはいるけど、「そんな気分にさせる」といったレベルなの。とてもじゃないけど洗脳を軽く超えたレベルの行為をすることはできないの」


「……な、なら、あまり考えたくありませんが、王家公認以外で、聖女の祝福を受けて魔法を使えるものが、これも根強い噂で」


「それも正直0ではないかなってぐらいだから、私は外して考えている。馬鹿王子はともかく、ルクイアーダは聖樹を崇める国ではあるけれど、それは一方通行ではない。聖樹もまた、それに応えているの」


 聖女としての言葉に説得力がありカヴァンは黙る。


「となるとノバルティス様は、どうやって」



「そこが気になるし「急所にもなる」と私は考えている」



「…………急所?」


「ええ、でもまだそれは言えない」


「…………」


「だからどんな情報でもいいの。ノバルティスの行動を私に報告して欲しい。ただし、積極的な情報収集は必要ない。あくまで通常勤務を通じてでいいよ。あの女は勘が鋭いからね」


「分かりました、このカヴァン、誠心誠意ユツキ様の期待に応えます」


「ありがとう、私がこの国を離れる今、それこそ頼れるのはカヴァンとルミしかいないから」


「「…………」」


 なんとなくしんみりとしてしまうが。


「言っておくけど、私は戻ってくるつもりだよ」


「え?」


「だから待っててね」


 私は驚いている2人を見据えてこう言い放つ。


「全ては聖樹ルクイアーダの導きの下に」




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