20
外はもう完全に暗くなっていた。
何時ごろだろう……たぶん20時くらい?
「じゃあもう今日は暗くなってるし帰るか」
「あ、はい。私はギルドの解体場に戻ってもうひと仕事しますので、ピースさんはお帰りください」
「え、そうなの? 分かった。ああ、明日の解体の予約も入れときたいんだけど」
「何時でも大丈夫ですよ。私は7時くらいから出勤してますので」
「なるほど、じゃあ9時くらいに行くわ! そこから解体たのんだ」
「かしこまりました! ありがとうございます。よろしくお願いします!」
そうして去っていくリーリルを見送った。
「さーて一段落ついたかな。半日でいろいろありすぎだ……マジで疲れた」
もう風呂に入って寝たい……そうだ宿に泊まってもう寝るとしよう。お金も手に入ったことだしな。
「やべ、そういや俺依頼受けてたんだっけな。その報告だけいくか? てか牛乳牛の証明部位のこと聞くの忘れてたんだけど!」
証明部位がなければ依頼の報告もクソもない。
やべーリーリルに聞いとくべきだったなぁ。
あの感じは多少詳しそうだし知ってただろ。
確か解体場に戻るって言ってたよな? 今からでもギルドに行って証明部位だけでも剥いでもらうか? どうせ角だろ?
「もういいや。とにかく今日はもう疲れたから寝よう。報告は明日でもいいだろ」
そう思い、もう宿を取ることにする。
「はぁ、ここから宿を探さないとなのか。異世界初日にやること多すぎ問題だな……」
もう面倒くさいから一番最初に目に入った宿でいいか。
ランダム要素があってそっちのほうが面白いだろ。
てわけで俺は適当に街道を歩いた。
かなり暗いが店の明かりなどでギリギリ足元は見える。
「暗すぎ……さっきから思ってたけど異世界の夜中ってこんな暗いの? 提灯を持ってる人とかいるし。いいな」
俺は真似しようと思い、適当に光魔法を発動させた。
目立たない程度の淡い光を造りだす。
それを片手に乗せた。
「まぁこれで遠目からは提灯を持ってるようにしか見えないだろ。足元も大分見えるようになったな」
完璧すぎて最高の気分だ。
そして良いことは続くのか、斜め前に宿屋っぽい感じの建物を見つけた。
「『疾風亭』。これもう宿屋だろ。かっこよさそうだし気に入ったわ。ここでいいや。たのもう!」
宿っぽい建物に深く考えず突撃した。
「いらっしゃいませー!」
中学生くらいの女の子が迎えてくれる。
「ここって宿屋?」
「そーですよー!」
「一泊泊まりたいんだけど」
「かしこまりましたー。空いてますのでこちらにどうぞー!」
カウンターに案内された。
「一泊につき朝食が一食付いております。朝5時から8時までの間でやっておりますのでお好きな時間に一階までお越しください。料金の方は前払い制となってまして、お一人様4000ドリアとなります」
てことは銀貨四枚か。
「これで……」
丁度あったので渡す。
「はい、ありがとうございます。朝食に関してましては先程申し上げた通りで、12時から15時の間は清掃時間となっております。こちらの時間帯までに退室の方お願い致します。連泊の場合は、お部屋の方にいていただいても構いませんが、スタッフの方が部屋に立ち入らせていただく場合がございます」
「わかりました」
「連泊される場合は、何日分かをまとめて先払いしておくことも可能です。一ヶ月でも一年でも大丈夫です。こちらがお客様のお部屋の鍵になります」
鍵を受け取った。
202と書かれていた。
「万が一紛失された場合は2万ドリアいただくことになりますのでご注意ください。それではお部屋の方にご案内いたします」
その後中学生の案内に従い、階段を昇っていった。
「ここがお客様のお部屋になります」
部屋は六畳くらいの広さで、凄く殺風景な感じだった。
タンスと椅子と小さい机。あとはベッドくらいのものだ。
「各種オプション等取り揃えておりますので、気兼ねなく受付までお申し付けください。何かご質問等はございますか?」
「お風呂ってありますか?」
「お風呂……? 申し訳ございません、当宿では取り扱っておりません」
「もしかしてこの近辺では贅沢品だったりする?」
「え? あっ、そうですね。あまり聞くことはないですかね……それこそ高級宿くらいのものなんじゃないですかね」
マジかよ……お風呂高級パターンきたわ。
「あ、でもでも! お湯とタオルはオプションで用意の方が可能ですので、そちらをご利用していただければ」
「いくらなの?」
「お湯とタオルセットで1200ドリアになります。桶とタオルは返却していただく形になりますが」
宿代4000ドリアに対し1200ドリア……ちょっと高い気もするけど、まぁこの世界ではそんなものなのかな。
「じゃあそれもお願いできますか?」
「かしこまりました! 支払いは受付の方でさせていただきます!」
「ああ、もうこれ、払うからお釣りと一緒に持ってきてもらうことできる?」
俺は金貨一枚を渡した。
もう疲れたのでできるだけ動きたくなかった。
「か、かしこまりました! 融通が利かずにすみません! 用意でき次第持ってまいります!」
そう言い残し中学生は去っていった。
俺は扉を締め、ベッドに腰掛けた。
「はぁ、疲れたな。というかお腹も空いてきたけど、疲れの方が流石に勝つかな。肉体的には大丈夫だけど、精神的な疲れかな?」
まぁ明日は朝食もあるし、飯は我慢するか。なんだったら牛肉をちょっと切り分けて焼いて食ってもいいけど。でも塩とかもないし微妙かな。
「そういう調味料もいざという時の為に買っときたいよな。後は服とか生活用品もそろえないと」
まだまだやることは多い。
その後五分くらいで中学生がお釣りとお湯を持ってきたので、体を適当に拭いて、もう寝ることにした。
タオルで拭くのは意外と気持ちよかった。
髪はどうしても流したい気はしたが。
ベッドは結構硬かったが、不快感を覚えるほどではなかった。
俺はそんなに拘る方ではないからな。ただ枕だけはマイ枕が欲しいかも。
寝る寸前で歯を磨いていないことに気づいたが、歯ブラシもないので今日は断念する。やっぱり生活用品を揃えないと……明日、買いにいくか。羊が一匹、羊が二匹。ぐぅ。




