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結局俺は牛乳牛の討伐を受注することにした。
とにかく急いでお金を稼ぐ必要があった。
裏路地とかで寝泊まりするのは嫌だからな。そんな不健康な異世界生活などまっぴらごめんだ。
依頼用紙を、ヴィヴィに渡しに行く。
「はぁ、言う事聞かないんですね。目覚めが悪いんで死なないでくださいね。くれぐれも私に取り憑いたりしないでくださいよ」
人聞きの悪いことを平然というヴィヴィ。もうこいつの性格分かってきたわ。
「……善処します」
「あっ、そう言えば一つ聞いておきたいことがあるんだった! ねぇ、ユイセさんと一緒に来たけど、結局どういう関係なの?」
「え、ゆ、ユイセくんと?」
イケメンも驚いている感じだった。やっぱりあの子って有名なの?
「いや、関係も何も本当に偶然出会ったってだけだよ。さっき会って、もしかしたらもう会うこともないかも」
「まぁそうだよね、そんなことだろうとは思った。あ、もういいよ」
聞いておいてなんだよそれは……はぁ、もういい。とっとと依頼クリアしてこよ。
「それじゃあ行ってくるから」
「装備とかは大丈夫なのかい? 見たところ何も装備していないようだけど……」
「ああ、それなら必要ないですよ」
「……さようなら」
俺はギルドを後にした。
ギルドを出た先にユイセが待っていた……ということもなく、まばらな人通りがあるだけだった。
はぁ、マジでどこ行ったんだあの子……今思えばよく分からんやつだったな。
「さて、時間もないし、超スピードで目的地まで向かうか? 大体の生息場所は聞いてきたし、たぶん辿り着けると思うけど」
最悪探知魔法を使えば解決できるだろう。
しかし流石に街中を猛ダッシュは目立つだろうか? 飛んでも目立つし……ああ、穴を掘ればいいのか! いやあえて匍匐前進でいくか?
色々悩んだ俺だったが、匍匐前進はないなと思い、普通に歩くことにした。ぶらぶら異世界を歩くというのも悪くないだろう。
なんにも起こらない散歩をしながら、先程までの記憶を頼りに二十分ほど歩き、この街に入ってきた時の城門までなんとか辿り着くことができた。まぁ途中気になった店とかはあったけどな。お面の店とか? お金が溜まったら入ってみようかな。お面を付けた謎の戦士としてデビューするんだ。
「あれ? 君はさっきの、えーっとピースくんだっけ?」
城門の関所的なところで、さっきのおっさんに再会する。
「ああ、はい。そうです。えーと確かゴジット……さん」
「ユイセちゃんとは別れたのかい?」
「そうですね、ついさっき喧嘩別れで」
「そうか、でもそれだと困ったね。退場税が払えないんじゃないかな」
退場税なんてのもあるのかよ。税金まみれだな世の中。どの世界も同じか。
「これがあるんですけど」
俺は冒険者カードを手渡した。
「ええ、ピースくん冒険者だったのかい!?」
「実はさっきなったばかりなんですよ」
「そうなんだ、仕事が早いね。確かにこれなら税はいらないな」
「ありがたいですねぇ」
「でも今から出ていくのかい? もしかして依頼を受けに行くのか?」
「そうですね、ユイセにお金も返さないといけないですし」
「この時間から出たら帰りは暗くなっちゃうよ。おじさんあと少しで退勤だし、一緒に付いていってあげようか?」
「え、いや、結構です」
俺は逃げるように門を後にした。
城門から完全に見えないところまでやってきた。
「よし、この辺までくれば飛んでもいいだろう。よいしょ」
風魔法を発動させた。
ふわりと宙を浮く。
「ふぅ、やっぱり外の空気は最高だな。さくっと目的地まで向かいますか」
目的は牛乳牛の討伐、よーいどん!
ギュオオオおおおおン!!
体感戦闘機くらいのスピードで宙を突っ切った。
結構地面との距離が近かったので、なんだか地面がえげつない感じでめくれ上がってる気もするが、まぁ気の所為だろう。まぁ仮にアレだったとしても、人なんて偶然通らないだろうし大丈夫だ。
「確か林があって、その中に湖があるんだよな」
空を飛べば本当に一瞬だった。
牛乳牛がいると言われる付近まで瞬く間に到着した。
「高度をあげれば分かるかな」
俺は高度を高く取った。
すると林の中に小さな湖があるのがわかった。
いや、かなり上から見下ろしてるから小さく見えるだけで、実際は結構な広さかもしれない。
「あれがビューティフル湖かな、よっと」
俺は急降下した。
湖の畔にすたりと着地する。
風魔法の調整も慣れたもんだ。俺以上に使いこなせるやつはこの世にいるのだろうか。
「さーて、探しますかねー、来たのはいいけど見つけられないと話にならないと思うし」
時間もないし探知魔法を使いますか。俺にやろうとして出来ないことはないのだ。
「ん?」
いざ使おうと思っていたところで、湖から何か這い上がってきているのに気づいた。
えぇー何アレ……生き物? いや絶対そうだ、動いてる。しかもかなりでかい、え、何? ナマズ? ヌメヌメしてるしなんか気持ち悪い。
湖から這い出てきたのは体長三メートルはありそうなナマズのような生物だった。




