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 何も依頼を受けず壁の外に出るのは確定として、地図かなんかないかと受付を尋ねてみる。


「というわけでさ――」


 受付のカウンターでは誰かが和気あいあいと何か喋っていた。

 仕方ないので、後ろに並んで待つことにする。

 こういう時に『後ろの方こちらにどーぞー』とか言って隣の受付に案内するとかないのかよ。まぁアイドリングタイムっぽいし人員も少ないのかな。


「ああ、すまない。話し込んでしまっていたようだ。どうぞお先に」


 誰が喋っていたのかと思えば、金髪の男だった。

 はぁ、そういやさっき向かってたな。


「あれ? 君はさっきの」


「あ、どうも」


「……なんだピースさんじゃないですか。何なんですか、せっかくノッてきてたとこだったのに」


 イケメンと喋っていたのはヴィヴィだった。

 随分楽しそうに喋ってたよな? やっぱりイケメンがいいのか? えぇ?


「お楽しみ中悪かったな。このギルドって地図かなんかおいてないか? 周辺の地理に疎いからあれば便利かと思いまして」


「地図ぅ? まぁあるけど多分冒険者への貸し出しはしてないんじゃない?」


「その通りだよ。緊急時以外は基本貸し出されることはない。そもそも地図は貴重だからね。自費調達するのが基本だ」


 そうなのか。まぁ本自体が貴重とかされる世界観だからな大抵のファンタジーは。そういうものなのかもしれない。


「そう言えば依頼受けるとか言ってたけどどうなったの?」


「ああ、それなら――」


 俺は先程考えた依頼後出し作戦を披露した。

 別に禁止されるいわれもないはずだと思ってのことだ。


 因みに後出し作戦とは、魔物を適当に狩った後でそれに該当する依頼を後から受注することで、その辺で適当に魔物を狩ってきたとしてもお金がもらえてしまうという恐ろしい作戦のことだ。

 俺が新しい風を吹かせてやる。



「いやいや、無理に決まってるでしょそんなの」


 だが速攻否定された。


「なんでだ? わざわざ律儀に受けるよりよっぽど効率が良いと思うんだが」


「理論上はそうかもしれないけど、魔物の対策だって個体によって全然異なるし、どれか一つに絞ったほうが作戦も立てやすくないですか?」


「そうだね、それにその作戦は下位ランク帯だからこそ成立するものだ。レベルが上がるにつれ、依頼内容はより複雑化するし、場合によっては何日も掛かったりする。例えばだけど、その間に他の冒険者に依頼を受けられ、先を越されてしまったりすれば、数日分の努力はまるっきり無駄になってしまう可能性もあるわけだ。寧ろこの制度は冒険者が依頼を受けやすくするために必要な良い制度なんだよ」


「まぁでもFランクくらいの冒険者だったらアリな作戦なのかな?」


「ある程度の実力があれば合理的な面もあるんだろうけど、それで足元を救われては元も子もないからね。冒険者は帰ってくるまでが仕事だ。やはり堅実に一つ一つ依頼をこなしていくというのをおすすめするよ。初心者のうちは特にね」


 くそっ、なんだよ二人して俺をけちょんけちょんにしてきやがって……っ!

 論破したつもりかよ! うえーん。

 てか思ったよりもめちゃくちゃアドバイスくれるし、なんなのこの人たち? 親切なの?


「それにそもそも駆け出しのピースさんがそんな大掛かりなことできるわけないじゃないですか。現実を見ましょうよ」


「ははは、それは言い過ぎだよヴィヴィ。駆け出し冒険者には優しくしとかないと、すぐに辞めちゃうだろ?」


「そ、そうでしたね! 私が浅はかでした、ジーザスさん!」


 前言撤回。

 ゲスの極みだこいつら。

 まぁいいよ、勝手に二人だけの世界に入り浸ってな。俺は俺の人生を生きるから。




「わかった。じゃあもう適当に牛乳牛の討伐でも受けるわ。これで文句ないだろ?」


「牛乳牛か……ピースくんの職業はなにかな?」


「え、職業? 冒険者、ですけど」


「違うよ。なんと言えばいいのかな、戦闘のスタイルのことだ。ロング剣士だとか斥候だとかタンクだとか


 そっちかよっ、恥かいた。


「特に何というものは」


「牛乳牛はかなりの耐久力だからね……高火力の技で一気に仕留めるのがいいんだが」


「あー、やっぱりそうなんですね。牛乳牛ってあれですよね、Fランクにはなってますけど、その中ではかなり上位にくる魔物ですよね? 草食の魔物で気性も穏やかなのでEランクにこそなってませんが、怒らせてしまった時はDランク冒険者ですら足元を掬われると聞いたことがあります」


「その通りだよ。流石はヴィヴィだね」


「へへへー」


 褒められて嬉しそうだった。


「……そいつはどこにいるんですかね」


「えーと確かその辺にいるんじゃなかったでしたっけ?」


「そうだね、すぐ近くのビッグ平原にいると思うよ。ビューティフル湖の畔とかで見かけたことがあるかな」


 ビッグ平原て……え、そのままの意味と捉えていいの? しかもビューティフル湖て流石にマジかよ。どうなってるこの世界。


「でもはっきり言って初心者にはオススメしない魔物だよ。それに君はまだパーティーも組めていないのだろう? 君は面白いし僕も結構気に入ってるからまだ死んで欲しくはないな」


「大丈夫ですよジーザスさん、こんな人すぐに忘れますって」


「うーん、そうだとしてもみすみす死なすというのは」


 ……流石に俺の扱い適当すぎませんかね? 人物も適当、世界も適当。ほんとこの世界どうなってんだ。



「もうその依頼受けます。持ってくるんで、大まかな場所だけ教えて貰ってもいいですか?」


「え? 今から受けるんですか? どうせ明日出立するなら、明日の朝受けたほうがお得ですよ。期限のカウントは深夜0時に行われますんで」


「いや、今から行くつもりなんで関係ないです」


「ええ!? もう15時前ですけど」


「ピースくん、この時間から行く人はいないよ。せめて余裕を持って明日からにした方がいい」


「そうですよ、今から行って帰ってくるとなれば距離的にも確実に夜中になりますよ?」


「いや、そう言われてもお金ないんですよね……」


「あー、駄目だ。この人絶対早死する。1万ドリア賭けてもいいよ」


「貧乏なのなら、教会に行ってみたらどうだい? 君と同じような境遇で保護されてる子も沢山いるらしい」


 散々な言われようだったが、もういい。

 なんとしてもお金を稼いで普通の宿に泊まるんだ。


 俺はこの世界で異世界ライフを堪能したいんだ。


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