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声を掛けてきた男は、凄く金のかかってそうな装備に身を包んでいる。
腰には豪華な衣装の剣を差してるな。
しかも金髪でイケメン。俺なんかとは雲泥の差じゃないか。
「じ、ジーザス……」
「何をしているんだ? また何か企んでいるのか?」
凄い剣幕でイケメンは迫ってくる。
「べ、別にちょっと話していただけだよ」
「こいつが生意気言ってたから、教育してやろうと」
「君たちの言動は目に余るとこの前言ったばかりだろう。そういった浅はかな行いが、この冒険者ギルドナナカラ支部のイメージを下げる要因になるかもしれない。それを自覚しているのか?」
「ち、ちっ、くせぇ正義感振りかざしやがって。おいお前らいくぞ」
「へ、へい!」
「覚えてろよ!」
男たちはギルドの出入り口からいずこかへ去っていった。
「ふぅ、全く、ろくでもない者たちだ」
「すみません、ありがとうございます」
「うん? ああ、気にすることはない。それよりすまないね。僕らのギルドの者が迷惑を掛けてしまって。君は見ない顔だから恐らく無関係の者なのだろう?」
別に話したくもないけど、助けて貰う形となった手前無視するわけにもいかず話す。イケメン腹立つわー。
「いえ、実はさっき冒険者になったばかりなんです」
「ああ、なるほど、そうだったんだね。冒険者になれたということは君もそこそこの実力を持っているということだよね。これは余計なことをしてしまったかな。はっはっはっ!」
イケメンは何がおかしいのか笑っていた。
ホントに何がおかしいんだ。
「ああ申し遅れたね。僕はこの街で冒険者をやっている『燃え盛る太陽』のリーダー、ジーザスだ。本当は名字があるんだが、登録名は名前だけにしてあるからジーザスと呼んでもらって構わない。一応Cランク冒険者をしている。よろしく頼むよ」
握手を求めてきたので、流石に握り返す。
「ぼ、僕はFランク冒険者のピースです。右も左も分かりませんが、冒険者の名に恥じぬよう頑張ろうと思ってます。よろしくお願いします」
「うむ、分からないことがあったらなんでも聞いてくれよ。いつでも、僕に頼ってもらっていいからね」
イケメンが至近距離で笑顔を向けてくる。うぅ、たしかに眩しいっ! 俺が女なら惚れていたのか?
「それでは僕はこれで失礼するよ。受付に用があるからね。改めて、よろしくね、ピースくん」
そうしてイケメンはイケメンのまま歩き去っていった。
あー、これが人間の理想ってやつなのかな。俺って何のために生きてるんだっけ。俺もあんな主人公みたいな人間になりてーなー。
適当なことを思いながら、とりあえず疲れたのでその辺の酒場の椅子に腰掛ける。
この時間帯は冒険者の数も少ないのかほぼ貸し切り状態だ。
ふぅ、やっぱり椅子は落ち着くな。で、俺って何をしようとしてたんだっけ。ああ、依頼受けるんだったか。
落ち着いたところで本来の目的を思い出し、今度こそ依頼ボードの前へと移動する。
「よーし、変な奴らのせいで余計な時間を食われたが今度こそ選ぶぞー。えーっと、俺はFランクだからそれ以下のランクの依頼しか受けられないんだよな。つまりFランクの依頼しか無理ってことだ」
よく見てみると、Fランクの依頼でまとめられてるコーナーがある。
この中から選ぶんだな。
えーっと、どれどれ……牛乳牛2匹の討伐……人面銀蛾4匹の捕獲……いや牛乳牛ってなんだよ、たしかにそう書いてあるんだが、翻訳のされかた合ってるのか? 牛から取れる乳が牛乳なわけで、それをごっちゃにする必要性とかって……ああもう分からん。いろいろ見るけど結局どの魔物がなんなのか分かんないから選ぼうにも選べない。生息地とかも検討もつかないし。
「もう適当に何個か引きちぎって持っていくか」
依頼の受け方は、ボードに貼られた依頼を剥がして受付に持っていくことで成立する。
それにて受注扱いになり、後は指定された期限以内に討伐の証明を終えれば晴れてクリア扱いとなる……らしい。
「ふむふむ」
見てみれば、Fランクの依頼は他のEランクやDランクの依頼よりも期限が長く設定されているものが多い。大体が7日とかだ。まぁしょぼい依頼だから緊急性も少ないのだろう。初心者用に良心的になっている部分もあるのかもしれない。
「これはあれじゃないか? 適当にいくつも依頼を受けて、そのうち何個かでもクリアできればオーケーじゃないか?」
完璧な作戦を思いついてしまったかもしれなかった……。
俺の考えた作戦はこうだ。
まず期限が長いことを活かして、適当に依頼を受けまくる。
そして次にその辺に出てくる魔物を適当に狩りまくる。
こうすることで高確率でどれかの依頼を達成できてしまうのではないか。
「違約金がだるいか……?」
ただこの作戦のデメリットとして、違約金の発生にある。
依頼の期限を過ぎてしまえば、クエストは失敗扱いとなり違約金が発生してしまうらしい。たしか成功報酬の二割とかだったかな。しかし期限は長いのでそもそも過ぎる可能性が低いのと、二割なのであれば他の依頼を成功させて全然帳消しにしてしまえるだろう。
「これはきたな、これが俺の考えた最強の作戦! 一瞬で思いつくとは、天才だな俺」
これで知識がなくても関係ない! 適当に魔物を狩りまくればいいんだから。これマジで最強なんじゃないか?
そう思った俺だったが、魔物を適当に殺した後で、それに該当する依頼を後出しで選べばいいというシンプルな抜け道に気づき、この作戦は断念した。




