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 紙を渡されたので、それに必要事項を書いていく。

 名前や特技等、簡単な内容だった。


「こちらが冒険者カードですー」


 少し待たされ金属製のカードを渡される。

 見てみればFランクと書かれているだけだった。


「因みにランクが上がるごとにプレートの種類も更新されていきますので」


「……俺の名前とかは?」


「金属の間に隙間があるでしょう? その中に紙が入ってますよ」


 引っ張り出してみれば、確かに入っていた。

 そこには俺のピースという名前に、ナナカラ支部所属といった内容が書かれていた。


「てっきり金属に刻まれてるのかと思ってた」


「いやいやー、そんな予算のかかること低ランク冒険者にするわけ……ってこれは言っちゃ駄目なんだっけ? まぁとにかくCランク以上からはかっこいい感じの冒険者カードが用意されるのでそこまで乞うご期待って感じですね」


 なるほど。まぁなんだっていいけど。


「とにかくこれで依頼が受けれるようになったということだよな?」


「はい、これにて一連の流れは全て終了ですねっ。ピースさんのご健闘をお祈りしております、はぁ疲れた」


 それがあんたの仕事なんだろ、素の感じ出すのやめろよ。

 まぁこれで俺も冒険者の仲間入りだ。

 冒険者冒険者冒険者…………悪い響きじゃないな。俺も立派な社会人。


「よし、じゃあユイセ、早速依頼を受けようと思うんだが……ってあれ?」


 とりあえず金を稼げる条件が整ったので、適当に依頼でも受けようと思ったところで横を見たが、誰もいなかった。


「ああ、ユイセさんならとっくの前にどっか行きましたよ」


「いつの間に!?」


 全く気づかなかったんですけど……いつから?


「依頼から帰ってきて疲れてたんでしょう、半日とはいえ」


「今って何時?」


「14時半前ですね」


 地球とおんなじ単位と考えればもうおやつ前か。

 転生した時間って昼くらいだったんだな。


「仕方ない、適当にちゃちゃっと簡単な依頼でも受けて宿代でも稼ぎますか。なぁヴィヴィ、すぐ終わりそうないい感じの依頼教えてほしいんだけど」


「えぇ、なんで私がそんなことしないといけないんですか。しかもピースさんなんかの為に。仕事の範囲外です。いきなりそんなんでどうするんですか? 自分の命を掛ける仕事くらい自分で選んでくださいよ。こりゃ早死かなー」


 ヴィヴィはどっかにはけていった。

 むかー。ああ、そうですか。まぁ別にもとからそんな期待してなかったんでいいですけど。


「仕方ない、俺一人で探してみるか。この世界の地理全くわかんないからムズそうなんだよなぁ」


 ちゃんと選べるか不安になりながらも依頼ボードの方に向かう。



「――おい、あんちゃん、ちょっといいか?」


 としていたところで声を掛けられた。

 見てみれば柄の悪そうな雰囲気の男三人組だった。


「なんでしょう?」


「お前さん、冒険者になったんだって?」


 男の一人がニヤニヤしながら尋ねてくる。

 いや、他の二人もニヤニヤしていた。


「ぷぷ、なんでわかんのお? みたいな顔してるっ」


「話を聞かれてたの、知らないんだ」


「ああ、悪い悪い、お前らの話を節々で聞いててな。それで把握してんだよ」


 何がそんなにおかしいのか笑っていた。

 なんか気持ち悪いな……不良って感じだよな……こんな風に絡まれたの初めてかも。


「……それで何の用なんですか?」


「さっきユイセと仲良さそうに話してたよなぁ?」


「どういう関係なんだ?」


「え? まぁ話してたのは事実ですけど、特に深いつながりとかは」


「それにヴィヴィちゃんとまで雰囲気良く喋ってたじゃねぇか」


「お前みたいな地味なやつがどんな汚い手を使ったんだぁ? んん?」


「はぁ、結局何が言いたいんですか」


「つまる所はよう、――新人教育ってやつだよ」


 さらにニマニマしながら男の一人が言う。こいつモヒカン似合ってないな。


「冒険者になりたてで右も左もわかんねぇだろ? 俺達が自主的に、ボランティアで、タダで教育してやろうってんだ」


「ありがてぇだろ? んんぅ?」


「こう見えても俺達はEランク冒険者なんだ。お前さんよりランクは一つ上だ。格というものが違うんだよ」


「まぁ全てはランクだけで判断できねぇけどな。実質の戦闘能力自体はすでにDランククラスとまで言われてるし?」


「って、ことで。ありがたくちょっと表に出な」


 俺は男の一人にがっちり肩を組まれる。

 問答無用と言った感じだ。



 ……うへー、最悪だ。これって俗に言う新人つぶしってやつだろ? 何がこいつらの癪に障ったのかイマイチ分からないが、女の子と喋ってたのがいけなかったのか? あんなの仕事上の付き合いってやつで別に好き好んで仲良くしてる訳じゃないのに……俺だって仕方ないから話しかけてるだけで……。まぁ確かにちょっとは仲良く慣れたらなとか思わなくもないけどさぁ。俺も男だしなぁ……あれ? これが理由?



「へへ、あんまり手間かけさせんなよ」


 どうしようかなぁ、正直あんまり目立ちたくないんだよな。

 俺が本気を出せばギルドどころか街ごと吹き飛ばすことなんて造作もないんだろうけど、そんなことしてしまったら俺の異世界ライフがめちゃくちゃになっちゃうし……せっかく転生したんだから、異世界ライフっぽい異世界ライフを送りたいんだよ。それが俺の前世からの夢だったんだし。


「まぁやりようはあるか」


「ああ?」


 まぁ適当に眠らせて、何だこの人たち、寝不足ー!? みたいなパッション出せば乗り切れるだろ。たぶん。


 俺がいざ魔法を行使しようとした瞬間。


「そこっ、やめないか!」


 俺達にかかる声があった。

 というかギルド中に響き渡っていた。


「ぎくっ」


 男たちの誰かが声を発した。

 ぎくっ、てそんな馬鹿な……。


「何をしているんだ君たちは! その子は誰なんだ?」


 ギルドの出入り口の方から歩み寄ってきたのは、優雅な服を着こなした一人の男だった。

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