黒魔術、ひとつください
「黒魔術、ひとつください」
静かな店内で一人の少女の声が響いた。
ーーー
とある10月の週末。
通りがかりに見つけた珈琲店にふらっと立ち寄った。
心落ち着く雰囲気。
レトロな内装。
店内には店主の静かなおじいさんが一人。
僕はコーヒーを注文し、窓際にある2人用テーブルに座った。
届いたコーヒーを飲みながら窓の外を眺めていると、一人の少女が歩いていた。
つばの広いトンガリ帽に、黒いローブ。
まるで魔女だ。
魔女っ子の様子をしばらく見ていると、ローブの中から地図を両手で広げて何かを確認しているようだ。
キョロキョロと周りを見渡し、この店を見つけると目を大きく見開いた。
目的地はここなのか、でもこの珈琲店になんの目的で来るのだろうか。
そう考えていると、
カランコロンッ
と、入り口の扉が開く。
「黒魔術、ひとつください」
静かな店内で一人の少女の声が響いた。
……ん?黒魔術?
この店って珈琲店だよな…違ったのか…?
あれ、よく見るとこの店、謎の草が吊り下げられているな…
いま飲んでるコーヒーも、なんかいつもと違う味がするような…
ここって……