クラスの陽キャ女子と付き合っていたが余裕で浮気されていた俺、「入ると永遠に恋人ができなくなる」と噂の展望台に入り込んだらなぜか美少女後輩が待ち構えていた。「復讐とか興味あります?」「ないかな」
俺は人を信用するタイプだったし、全人類は基本そうであるべきだと思っていた。
しかしながらそうではないと気づいたのが先週。
「お、おい……」
俺は呆然と、俺の彼女である美由と背の高いイケメンが歩いているのを見ていた。
いや、一緒に歩いてるだけだったらいいけどさ。
まあ明らかカップルだよね。めっちゃ腕絡ませてるし。
俺は美由と付き合って、そしてそれからとても楽しい時を過ごしてきて、青春とはこれかあ、リア充とはこれかあ、と思いつつ、美由のことがますます好きになっていった。
しかし遊園地にある自由落下系アトラクションの如く、美由への気持ちは落ちていく。というか今落ちすぎて多分地下7階くらいだわ。都心部の地下鉄のホーム的イメージ。
まあでも…怒りはない。
というか人って一番好きな人に一番素敵な雰囲気を見せる気がしていて、悔しくも遠目で見る美由の雰囲気はめちゃくちゃ可愛かった。
で、その後はそこそこスピーディーにことが進んだ。まあ都心部を走ってる地下鉄くらいのイメージ。
まず俺と美由は別れることになった。
ただ…美由に、
「あんた、私とずっと付き合えると思ってたのは、ちょっと調子乗りすぎね」
と言われたのは納得いってない。
初めからキープ要員みたいな感じだったのだろう。
しかし、俺にとっては初めてできた彼女で、色々と思い出を作って、大切な時間を生み出してたんだ。
まあそんなもん。
俺が、残念な目にあっただけだ。
俺以外の世界の誰も困ってない。
つまりは些細な問題だ。
些細な問題は自己解決が一番である。
なので俺は絶対に人に会わないところに行きたかった。
この小さな街で、そんなところはあんまりない。どこかしらに知り合いがいそうなもんだ。
しかし一箇所だけ、誰とも会わないところがある。
この街の端の山の上の展望台。小さな小屋とテラスだけの展望台。
そこには基本人は立ち入らない。
なぜなら噂が流れているから。
その噂は、「入ると永遠にに恋人ができなくなる」
ちなみにその噂の正体は噂レベルではわかっているらしい。噂の正体の噂。二重噂。
意外と景色がよく、デートスポットやSNS映えスポットとして人気になりかけた頃、おそらくあの辺りの地主が流したんだとか。
人がわちゃわちゃ来てうるさくなってゴミとか置いていかれたら嫌だから。
そういうことらしい。そういう意見もある。
まあそれはいい。
とにかく俺はそこで一人になれる。
ていうわけで俺は夜、展望台に向かった。
☆ ◯ ☆
展望台から見る夜景はそこそこ綺麗である。
そして星空はとてつもなく、鮮明だ。
うーん。晴れててよかった。
夜に晴れか曇りかなんてそんなに気にしない。
それを気にしたのは久々で、なんだかすっきりした。
一人で星を眺めれば、まあ精神面の回復などあっという間に完了する見込みですな。
「先輩。やっと来ましたか」
「おお?」
なんと一人ではなかった。まあそれはまだ想定してた。けどそれでも全く見知らぬ人ならお互い黙ってればいいわけで。
しかしなあ、知り合いというか知りまくりな人だから、俺は明らかに一人ではなかった。
「先輩がなんでここに来ると思ったか教えてあげましょうか?」
「いやいい。俺は結構お嬢様部の実力は認めてるからな」
「そうですか。嬉しいですねー」
お嬢様部。活動内容は校内の情報を発信する部活である。名前を新聞部からお嬢様部に変えただけでSNSや記事へのアクセス数が増大し、さらには部員も増えたらしい。
名前って大事なんだね。
まあそんなお嬢様要素のないお嬢様部に入っているお嬢様ではない後輩の名前は、凛という。
「先輩を慰められれば良いのですが……なかなか難しいですね」
「いいよ。慰めなくて」
「ダメです。慰めて見せますっ。じゃあ…クイズでも出しましょうか」
「クイズ?」
「はい。私はなぜ、ここにいるでしょう?」
「ふっ。余裕だな。今日はあの日だろ。月食」
「さすが先輩。でももう一つありますよ。それは、今日先輩がここに来るかなと思ったからです」
「なんで今日ってわかるんだ?」
「それは、今日が先輩の誕生日だからです」
「そっか。今日誕生日だったか俺」
「ふふ、わざとらしい」
凛は笑う。にこにこしてるのが暗い中でもわかる。
そして…
「先輩は寂しくなるとここに来ますもん。だから私とここで出会ったんです」
「そうだな」
俺は振り返る。
俺も凛も、中学の時不登校だった。そしてお互い誰にも見つからないような場所を探していた結果、ここに辿り着いたのだ。
その後高校はちゃんと行くようになってからも、俺と凛は時々ここに来ている。
とはいえ、示し合わせているわけではないので、凛がどのくらいの頻度でここに来ているのかは、俺は知らない。
「先輩、復讐とか興味あります?」
「復讐?」
「はい。だってうわきされたんですよね?」
「いや、別にないかな」
「だろうと思いましたー。先輩優しいですもんね」
「優しくは……ない気がするな」
「ふうん。あっ。月が変な欠け方になってますよ」
「ほんとだな」
月食の本番だ。
しばらく二人で月食を眺めていた。
「先輩は、また恋をしたいと思いますか?」
「したいかもしれないな。でも今日ここに来ちゃったからな」
「もうすでに何回も来てるじゃないですか。もしかしてここに来たから浮気されたとか思ってます?」
「いや。俺は噂とかは気にしないからね」
「そうですか。そこらへん私と似てますね」
「てことは凛も恋愛する気満々と」
「もちろん。って言っても私の恋はここからが本番ですが」
「ここからが本番……」
「はい。だって……」
月はほとんど全て欠けている。でも皆既月食ではなくてギリギリ部分月食なんだっけ。
凛は続ける。
「今先輩は、フリーですもんね」
「俺?」
「そう。人間不信になってたりしますか?」
「なってるかもしれないけど、でも俺は……凛のことは信用してるぞ」
「ほんとですか? なら……今日でもいいのかもしれませんね」
凛はそう言うと……俺に抱きついた。
人生で一番柔らかいと思った。
「私先輩が好きです。そして私は絶対に先輩しか好きにならないです。口だけなら信用ならないですよね。だから今抱きついているんです」
「お、おお」
急に積極的な凛に戸惑っていると、凛は、
「はい、とどめのプレゼント」
そう俺のすぐ目の前で呟いて、キスをした。
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