某ファミレスにて、ドリンクバーでティータイム
「ってなことがあったんですよ、太一さん」
「へぇ…………そりゃまた大変でしたね、佐々木さん」
放課後、おれと太一は学校から離れたファミレスで昼間の一軒について情報を共有していた。
「いよいよ平塚陽菜という女が分からなくなった」
学園のマドンナの裏の顔、なんてよく聞くが、大体女なんてほとんど猫かぶっているもんだ。
もちろん俺も、付き合う前から陽菜にも裏があるとは全然思っていた。
高圧的な陽菜の態度には別に驚きはしない。
しかし。
「なんかさ、行動がよく分からないんだよな」
「行動?」
「うん。急に俺のLINE晒したり、急に校舎裏よび出して脅迫したり。何のためにそんなことしてるんだろ」
「それは……佐々木をおもちゃにしたいんじゃないの?」
「多分、そうなんだけどさ。……なんかそれだけじゃないと思うんだよなぁ…………」
胸の中心に引っかかる違和感。
その正体はまだ靄がかかったようにぼんやりとしている。
そもそも俺の考えすぎという可能性も捨てきれないけど。
「……やっぱり、俺をおもちゃにしたいだけか」
と、不意に。
ポキポキ、という音が鳴る。
なんてことない。ただのスマホの通知音だ。
「LINE……?」
「クラスで味方のいない佐々木に誰がLINEしてくんだよ。母ちゃん?」
「いや、違うな」
アイコンで家族からのLINEでないことははっきりしている。
誰だ…………?
ポキポキ、ポキポキ、ポキポキ。
何度も何度も同じ通知音が鳴る。
スマホのロックを解除し、トーク履歴を見てみると。
***
阿部亮
『死ねよ、もうくんな』
酒井葵
『童貞に居場所なんてありませーん、あと死ね』
吉井健太
『LINE晒されて何で学校来れるんだよ、キモいわ』
菊池芽伊
『………』
……………。
***
友達登録されていない友達から大量のLINEが来ていた。
というか名前的にクラスの奴らだな、これ。
スクロールすればするほど悪意のあるLINEが下まで続いてた。
「…………」
「佐々木? どした??」
何も言わない俺に対し不思議に思ったのか、太一は俺のスマホの画面を覗き込んだ。
「おお~~………、こりゃまた凄いね」
「はぁ…………」
精神的にダメージを負っている訳ではない。
もはや呆れていた。
もう、救いがない。
「太一」
「あいよ」
「今回も、手伝ってくれ」
「最初からそのつもりよ~」
差しあたっては、このクラスの馬鹿どもからだ。