「再会」
頭の中で蘇る、あの日々。
共に青春を過ごした1年間。
初めて話した日。
くだらないことで笑う笑顔。
一緒にたむろったファミレス。
相談を受けた夏の放課後。
そして。
―――――――あの日、最後に交わした言葉の数々。
「七……海…………?」
いやいや。
待てよ。
そんなわけないだろ。
次々に頭に浮かぶ映像、言葉、瞬間。
『最近女拉致って遊んでいる、らしい』
金髪が言っていたこと。
『七海ちゃんがいなくなったらしいの』
ファミレスで聞いた雅の言葉。
繋がって欲しくない点と点が線で繋がる。
そんなことは有り得ないと、どこか心の中で決めつけていた。
この一件と彼女が関わることがないと。
関わりなんてあるはずがないと。
なのに。
「さ…さ……きく…」
「……………!」
手首を縛っていた縄が切れた。
同時に倒れ込んでくるのを、両手で抱きとめた。
「たす……け……」
ーーーーーーー七海。
七海、なのか。
本当に。
「七海………」
すると、閉じ気味だった目がゆっくりと見開かれた。
「佐々木……くん」
「七海っ、大丈夫……!?」
大丈夫でないのは明白だ。
でも、それでもーーーーー。
「…………!」
動転している。
頭が回らない。
正常な思考ができない。
「スマ……ホ…」
なんだ……?
……スマホ?
「スマホが、どうした?」
ポケットに手を突っ込む。
しかし、普段はあるべき所にスマホがない。
……なんで?
しばしの間ガサゴソと制服をまさぐり、ようやく気付いた。
何やってんだ、俺。
ココじゃん。
ーーーーーー首筋。
今日のために制服を改造し、首筋のカラーから撮影ができるようにした。
正当防衛の証拠。
反撃する以上、どうしてもそれが必要だった。
重ねて、監禁されている状況をカメラに収めることが出来れば、裁判で有利に働くーーーーーー。
「七海、スマホ……! ……ココにある…!」
急いで制服を脱ぎ、首筋に括りつけたスマホを無理やり外し、七海の前にかざした。
「あり……がと」
「…………何に使うんだ……?」
「佐々木……君」
「ごめんね」
言うが早く。
七海は俺のスマホを掴み。
「え………」
ドアの向こう側に向かって、投げた。
重ねて言う。
動転していた。
それ故に、正常な思考ができなかった。
俺は考えが及ばなかった。
七海が俺の味方だと、なんで言いきれるんだ。
ーーーーー無意識の内に可能性を1つ消してしまっていた。
ドアの向こう側。
そこにはつまり、さっき騙し討ちした颯汰と。
塚原陽菜がいるわけで。
「……なん…で?」
カラカラと音を立てて、陽菜の前に俺のスマホが転がった。
「ありがと、七海」
無意識の内に消してしまった可能性、それは。
ーーーーーーー七海が、陽菜側の人間であるということ。
陽菜は俺のスマホを拾い上げ、見たことないほど醜悪な笑みを浮かべた。




