蒼き目の鬼神
キング・オブ・ゼロ9話「蒼き目の鬼神」
◼️北西にある洞窟
「へぇ、なかなかいい女捕まえたじゃん」
「俺が捕まえたんだから、順番は俺からな」
洞窟の中でカルナは四肢を縛られている。
「ゲスが!」
カルナは兵士たちを睨み付ける。
「へへ、そう強がるのも今のうちだぜ」
「おいおいwお前、テンプレ過ぎんだろ」
「それなwまあ実際そうなんだけどさ」
兵士たちの汚い笑い洞窟内に響く。
しかし、別の兵士が駆け込んでくる。
「やばい、やばいぞ!」
「おいおい、どうしたんだよ?」
「どうしたもこうしたもねぇよ! 外に、洞窟の外によぉ、いるんだよ!」
「何が?」
「あ、あ、蒼き目の鬼神がいるんだよ!」
「はっ⁉ う、嘘だろ、おい! あいつは死んだんじゃぁなかったってぇのかよ!!」
「わかんねぇ、けど、いる、いるんだよぉぉぉ!!」
洞窟内にいた兵士たちは皆、外へ出る。
そこには蒼く二つのものが光る、血濡れた何かが立っていた。
「どこだ? カルナはどこだぁぁ!!」
咆哮が如き怒りの叫びが辺りに轟く。
「や、奴だ。う、うわぁぁぁ!!」
錯乱した兵士たちは武器を手に取り、襲い掛かる。
「よ、よせ!」
しかし、その全ての攻撃はまるで未来が見えているかのように躱され、すれ違いざまに持つ槍で身体を裂かれる。
「ダメだ、俺たちみたいな雑兵ではあいつを止められない」
「逃げろ、逃げろぉぉ!!」
残った兵士たちはその場から逃げ去ろうとする。
しかし、真っ先に逃げた兵士の胴体へ一本の槍が飛んでいき、串刺しにする。
その光景を見た兵士たちは恐怖でその場に立ち尽くしてしまう。
「おい、お前ら、仮にも兵士だろうが、戦えよ。それとも何か? 武器を持つ相手は、自分より弱い人間だけか? ああ?」
「ひ、ひぃ⁉」
恐怖の声を上げた兵士の一人の首を掴み持ち上げる。
「何いっちょ前に怯えてんだよ? お前たちもそうやって、自分より弱い奴を怯えさせて楽しんでたんだろ? 全部見えてんだよ。今、それが返って来たって、おかしくはないよなぁ? まあ、最もお前たちを怯えさせてもこれっぽちも楽しかぁねえがなぁ!!!」
そう言って掴んだ、兵士をぶん投げる。
「うわぁぁぁあぁああ!!」
飛んで行った兵士は別の兵士に激突し、一瞬で両方肉塊と化す。
そして、さっき投げた槍を死体から引き抜き、血だらけの槍を兵士たちに向ける。
「さぁ、来いよ、もしかしたら、この俺を殺せるかもしれないぞ?」
「ど、どうする?」
「やるしかないだろ、どのみちこいつからは逃げられない」
兵士たちは逃げることを諦め、武器を取り、血に濡れた蒼き目の鬼神ロックと戦うことを選ぶ。
「く、くたばれ!」
「うぉぉぉぉおお!」
兵士たちは次々と襲い来る。
「右、次は左、そして後ろ」
ロックはそう呟き、実際その通りに兵士たちは動き、攻撃を仕掛けてくる。
しかし、その全てを避け、返しの槍で一突き、一撃で沈めていく。
実力の差は歴然、ここまでくるともはや別の生き物と言っても差し支えない。
「この程度の数、認識は余裕だ」
一度、ロックが死した戦場と違い、多勢に無勢と言っても桁が違う。
一人で一軍団を相手にする男にとって、この場はウォーミングアップにすらなりえない。
ロックは一瞬で迫りくる敵の全てを切り伏せた。
周辺の町を恐怖のどん底に落としていた兵士たちはそれ以上の恐怖によって鎮圧された。
「はぁはぁ」
余裕の相手とは言え、さすがに息切れをしているロック、そしていつの間にかその横にローキットが立っている。
「凄いな、人間のレベルは超えていると思うぞ」
「ロ、ローキット、か」
「ところでロック、その目はなんだ?」
「あっ、こ、これは……」
ロックは自分の目を隠す。
その時、辺りが再び騒がしくなる。
「ん? 何だ?」
「ま、まさか……」
ロックの国が敵対していた軍、つまりはさっき殺した兵士たちの元の軍の連中がこちらにやって来ていた。
「まさかまさかだ。再び目にすることがあろうとは、蒼き目の鬼神」
軍内の指揮官らしき人物がこちらに向かって話しかけて来る。
「仇討ちか?」
「勘違いするなよ、軍から離れて蛮行を働く輩が出たと聞き粛清しに来ただけのこと」
「そんな話、そう簡単に信じると……うっ、ぐ!?」
ロックは頭を押さえてふらつき、膝をつく。
「ほほう、理由は分からないが、満身創痍な模様。我が軍の不始末を代わりにやってくれたことに感謝はするし、見逃したい気持ちもある。が、相手が蒼き目の鬼神とあっては話は別だ。生きていたのなら、ここで始末しておきたい」
「ローキット、逃げろ。奴らは俺が目的だ」
ロックはローキットに逃げるように指示する。
「そうだ、我々はあのはぐれとは違い蛮族ではない。蒼き目の鬼神以外の少女をどうこうしようとは思わん。無論、我々に危害を加えようとしないのならだが」
「……」
「逃げてくれ、俺が死んだら助けを読んで洞窟内のカルナを救出してくれ」
「……」
「ローキット?」
「拒否する」
「な!?」
「少女よ、君が蒼き目の鬼神とどういう関係かはさておき、このまま残れば命は保証しない。無駄に命を散らすことはなかろう?」
「否定、我はお前たち人間ごときに敗北することはない。それにロックは我のものだ。我が今最も知りたい生命体である。故にそれを消失させようとする貴様ら全てが殲滅対象である」
「はぁ、このような場面でなければ笑い話で済ませてやるところだが……仕方ない。殺せ!」
兵士たちはキレイに隊列を成し、ロックとローキットに迫る。
「ドラゴンパッケージ解除、真体を展開する」
するとローキットの背中からその小さな身体に収まらないほどの質量が現れ、ローキットの身体を包み込む。
そして、一瞬の間にローキットは機械で造られたような白い竜の姿へと変わる。
「な、なぁ⁉」
指揮官や兵士たちは目の前で突然巨大な存在へと変貌する光景に口を開いたまま驚愕している。
「「さぁ、人間、我の興味対象を殺傷しようとしたこと、万死に価する、今ここでその全てを消し去る!」」
竜となったローキットは口を開き、そこから強力なエネルギーを溜める。
「て、撤退、撤退だぁ!!」
兵士たちは隊列を組む余裕もなく、逃げ始める。
「逃がさん、この一帯もろとも消し炭にしてくれる」
「ダメだ! ローキット! 俺を生かすために戦わないでくれ!」
「拒否、ここで殺らなせれば連鎖は止まらない」
「それでもダメだ! ここで君が人を直接殺せば、君自身が!」
「理解不能、問題はない」
そう言うと、ローキットは口からエネルギーを発射する。
「うわぁぁあ⁉」
「ひぃぃ!」
兵士たちは自分の死を覚悟する。
その時。
「アイギス!」
ローキットがエネルギーを発射した瞬間、どこからか現れた何者かがエネルギーの中に飛び込む。
そして、その何者かを中心にエネルギーによって形成した強固な盾を生まれ、ローキットの攻撃を受け止める。
盾はローキットのエネルギーを全て受けきる。
「⁉ 想定外、事態を解析集中」
すると、盾の中から、赤を基調とした服の赤髪の青年が現れる。
「つったく、なーにやってんだ、これだから生まれたばかりの奴はなにも知らねえから嫌いなんだ、狂いてえのか」
「危険、危険、速やかに対処を!」
ローキットは再びエネルギーを口に溜める。
「一旦落ちつけ、ばか野郎」
そう言うと赤髪の青年はローキットの顔まで一回のジャンプで飛び上がり、エネルギーを溜めるその口の頬に蹴りを入れる。
「ぐがっ!?」
ローキットは衝撃でその場に倒れた。