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黒い蝶

作者: かねこふみよ

 黒い蝶が私の周りを飛び回るようになった。


 ウォーキングの途中にある公園を横切る時に、蝶が無作為に飛んでいることはよくあった。買い物へは普段なら車で行くところだったのだが、健康診断でドクターから嫌味っぽく言われたこともあって、少々ならとスーパーへの20分の徒歩もウォーキングに加算しようと前向きになって歩いている時だった。蝶がいるな、その程度の関心だった。白くなかった。黒い蝶とは珍しかった。ふわふらと上下に揺れながら、花を探しているのだろうかと、徒歩の気を紛らわせるのには十分なネタを考えていると、どうやら私の周りを回っているのではと、目を動かしてしまった。それを意識した蝶は恥ずかしさか人間の浅はかさを毛嫌いしたのか、速度が落ちた。私は進む。蝶はずっと後方へ飛んで行ってしまった。スーパーへの残り五分はこのネタを続けた。

 翌朝だったか、その次の朝だったか。郵便受けに朝刊を取りに出た。蝶が飛んでいた。黒い蝶が。蝶は私に気づくと予想外でびっくりしたのか、ちょっとひきつったように羽をばたつかせて、いやいやちょっと用事が、とでも言いたげにその場から私に近づこうとはばたかせて、やっぱやめたみたいな感じで空へ飛んで行ってしまった。

 茶目っ気のある黒い蝶がそればかりなのか、他の黒い蝶がすべてそうなのかは知れないが、しばらくの間黒い蝶は私に近づこうとしたり遠ざかったり、そんなことを頻繁に行った。私をかまっているのか、おちょくっているのか。それでも私は気味悪いとは思わなかった。じゃれてるのは黒い蝶ばかりではない。相変わらず私のネタになってくれたのだ。

 ある日を境に黒い蝶がいなくなった。私はさみしくなった。言ってくれればいいのにとすねてみたりした。それもネタになった。


 この話をしてあった甥から先ほど電話があった。

 お盆の迎え火を焚こうと玄関を開けると目の高さに黒い蝶が飛んでいた、そうだ。


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