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カフェモカ

作者: むぞの

夏真っ盛り8月の昼下がりの街。

梅雨明けしたばかりとは思えない気温の高さに誰もがやられている。

狭い道に並んで歩くカップルを避けながら適当にその辺にあるチェーン店のカフェに入る。


社会人になってから平日休みを理由に友達を遊びに誘わなくなったが、今ではひとりの方が心地いいと気が付いたので基本おひとりさま。

ときどき世間の目が気になるけどまあ別に気にしなきゃいい話。


レジのいわゆる今どきイケメンな店員さんにどぎまぎしながら、メニュー表もろくに見ず頼んだカフェモカを持って椅子に腰を下ろす。


小洒落た洋楽が流れる店内に感じの良いインテリア。

洋服のセンスすら皆無の私はこの洒落ている空間にむずむずとしてしまうが、この感覚がじつは嫌いでなかったりする。


少し騒がしい店内と精神を切り離すためにイヤホンを耳に突っ込んで意味もなくスマートフォンを弄りながらぼうっとする。

そうするとだんだんこのハイセンスな空間と一体になったような気がするのだ。

あくまで気の所為ではあるが多少の自意識過剰は自己肯定感を高めるのには必要だ。


少し経ってからようやくカフェモカを口に含む。

ココアやダークチョコレートのような深みのある甘さとコーヒーのすっきりとした後味がなんとも絶妙なバランス。

グラスの上に可愛く飾り付けられているホイップクリームが甘くちゃちな華やかさを演出している。


普段の生活では全く口にしない、カロリーを溶かしこんだ飲み物は私の気持ちを少し明るくしてくれた。


気がついたらいつもチェックしている動画も見尽くしてしまっていて、カフェモカが入ったグラスもみずびだしに。

可愛らしいホイップクリームは跡形もなく溶けていた。


ゆっくりと店内のガヤガヤとした音が気になり始める。

精神が自分の中に戻ってくるのを感じながら、残っているカフェモカを急いで飲んだ。

さっきまでは程よい甘さを感じていたが、今は苦味しか感じない。

こんなに苦かったっけ、と思いながらも最後の一滴まで飲み干す。


完全に現実世界へ戻ってきたのを確認してから席を立つ。

トレーに水気を含みすぎている紙ナプキンとプラスチックのストローを分けて乗せてゴミ箱へ詰め込む。

そしてクーラーに当たりすぎて冷えた腕を擦りながら、イケメン店員さんに

ごちそうさまでした

と軽く会釈してカフェを出る。


さっきまで溶けそうなくらい暑かった外気の気温が丁度良く感じるのはきっと気の所為だな、と思った夕暮れ前の午後。




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