地獄の修行中編の2!!
どうぞ!お楽しみ下さい!
そうして迎えた朝食ミーティング。
空気が重苦しい事は言うまでもないだろう。
長い沈黙の末、最初に口を割ったのは朱里だった。
「私は圭一を責めないわ。事情が事情だし。じゃあ今後、チームとしての対応をどうして行くのかが論点。まずは圭一に病状の説明をしてもらいましょ。」
俯いていた圭一が顔をあげる。
「僕は解離症の中でも解離性同一性障害という、多重人格を持つ病気です。発症原因は父親から受けた暴力。その為、症状が出た場合、人を傷つけてしまう可能性があります。」
「ありがとう、圭一の病気については、みんな触れない事。それがチームのルールにしましょう。いつも通り、今まで通りでいいのよ。」
「けど、また僕が同じ事をしてしまうかもしれない!僕がやめてしまえば全部解決するんじゃないんですか!」
圭一が強い口調で吐き捨てた。
「それは、違う。チームとして今までやってきたじゃないか。一人欠けたらそれはYKAKじゃなくなってしまうんだよ。」
俺は自分の考えているままを伝えた。
「圭一がそうである事はみんな理解したんだから、みんな極力一緒に行動するようにしましょう。少なくとも2人以上。」
「ほんとに、それでいいんですか。」
圭一が震える声で言う。
「いいんだよ!俺たちは今まで通り。みんなで優勝目指そう!」
圭一が、いなくなればYKAKは成り立たないのだから。
「ありがとうございます、、、」
泣き崩れる圭一の背中を優しく擦る。
「よし!そうときまれば特訓再開だ!」
こうして特訓2日目が幕を開けた。
「そういえば佳奈はなんで圭一の事を知ってたんだ?」
テントを片付けている時ふと疑問に思ったことを聞いてみた。
「私と圭一は中学からずっと同じ学校で、家も近くて、幼なじみなんです。だから昔から圭一の事は近くで見てきたんですよね。」
その時、佳奈が圭一と同じ学校だとチーム結成の時言っていたことを思い出した。
特訓2日目、最初のメニューは、、、
「今日からは実践編です!ここにあるはアサルトライフル四丁!」
威勢よく佳奈が差し出してきたのはアサルトライフル。
「こ、これをどうするんだ?」
「これは護身用です!この先の森には猛獣がたっくさん住み着いてるんですけど、この森を縦断してもらいます!」
「このライフルでか!?」
「はい!」
「一応聞いとくけどここって日本だよな?」
「日本です!」
「銃を撃って大丈夫なのか?」
「許可はとってます!」
許可を下ろしたやつは何をしているんだろうか。
先程、佳奈が指さした森をふと見てみるとただならぬ雰囲気が近づいただけで感じられる。
「では行きましょう!」
佳奈に続いてみんなで森の中へ入っていく。
夏とは思えない寒気に、思わず体が震えた。
スタート直後は特に何も起きることなくすいすいと進んで行った。
「なんだ、全然何も起きな、、、!?」
そう言いかけた時、どこからか物音が聞こえた気がした。
みんな身を潜める。
カサカサッ、カサカサッ
その音は間違いなくこちらに近づいてきている。
来るな!来るな!
そう思いながら、通過してくれるのを待つ。
そして、やっと物音が止んだ。
胸をなでおろして起き上がった。
その時、何かと目が合った。
しかも超至近距離で。
相手は、イノシシ。
「イノシシ!!!!!!」
叫んだ瞬間イノシシはあろう事か覆い被さるように襲いかかってきた。
「ぎゃぁぁぁぁあ!!!」
これ死んだわ。
頭の中で走馬灯が流れる。
死に際まで両親には感謝の言葉を伝えられなかったな。
意志を固めてぎゅっと目を瞑る。
時間がすごくスローペースに感じる。
これが人生の最期というものか。
バァァァァン!
ドサッ
しかし、聞こえてきたのは銃声と鈍い音だった。
恐る恐る目を開くと、そこには先程まで襲いかかろうとしてきたイノシシが倒れていた。
そして、そいつを射抜いたのは佳奈のようだった。
「ちょっとちょっと!護身用なんだからしっかり身を守らなきゃダメですよ!」
俺は衝撃と安堵から気が遠くなった。
「さぁ行きますよ!」
佳奈のその声で我を取り戻した。
「ちょっと待って待って!」
この先にはもっと危険な猛獣がいるかもしれない。
一瞬たりとて気が抜けない。
俺達は再び歩みを進めた。
次話もお楽しみに!