王宮魔術師神官じゃなく、ふつ~の令嬢で良かったのに…
辺境の地
アーデイル王国ゴーイル辺境と隣国である リア国との間に、魔物・巨人・アンデット・未知の生物が集うロキトリックサーの森がある。
近頃この辺境の地ゴーイル領に、小魔物の侵入が多く村の家畜や作物が荒らされていた。
ゴーイル領の屈強魔法兵団(魔法が使える兵士)達が村を魔物から阻止していたが、近頃は中級魔族も横行し、幼女・女性達を犯した。
魔物を一掃する為に、王宮からの魔法兵団も加勢し警備を強化していたが、つい5時間程前に、ロキトリックサーの森から巨人族がゴーイルの村に侵入し、村の人々に危害を加えた。
巨人族は、男・女・子供関係なく襲いかかり兵士までもが、捕まえられては手足をもぎ取り食いちぎられていた。
地獄のような光景が続くなか、ゴーイル領辺境伯の屈強魔法兵団と王宮魔法兵団で巨人族を足止めし、応戦していた。
「巨人共めどんどん増えやがる、殺っても殺ってもきりがねぇ。兵達も頑張っているが、これ以上は持ちそうもねぇな、王宮魔術神官はまだこねぇのか!」
辺境伯であり、部隊魔法兵団団長、マルス・ニッコールは怒りながら巨人族に
攻撃魔法を打ち付けていた。
「はっ、王宮の方には連絡を入れています、もう暫くお待ち下さい。」
近くにいた第一小隊長ユージアン・アシュが答えた。
兵士達も強化し攻撃魔法で挑んでいるが、長い時間の戦いのせいで、バタバタと力尽きて倒れていく。
「…っきしょう、糞野郎の巨人に負けてたまるか…」
その時
澄んだ美しい歌声が聞こえてきた。
それと同時に身体が白く輝き力が充ちてくる。
癒しの回復魔法の歌が、兵士達の傷付いた身体が癒されていく。
魔族達も動きが止まりだした。
「うぉぉぉぉーーー、身力が蘇ってくるぞーーーー。」
兵士達が奮い立つ。
「マルス団長、後ろに……」
振り返ると、小高い丘に一人佇んでいた。
「女魔術師か? あんな細っこい身体で大丈夫なのか?」
その魔術師は濃紺のフード付きローブを頭から深く被り、仮面で顔を隠しロングのローブは女の身体をすっぽりと隠していた。
ローブの袖口から出た白く細い手指がとても目立つ。
白い手には先端に三日月と満月を表した細い長い装飾の綺麗な魔術ステッキを握っていた。
マルスの所からでは、女が何を唱えて居るかは分からないが、唱えながら自身の胸から白い宝石が現れ、ステッキの先端の満月の中に入り込んだ。
女はステッキを高く掲げ、巨人族に向かって先程より大きな声で「インセンディオ」呪文を連続で唱えた。
呪文と共に赤い球が巨人に目掛けた、何発も巨人にヒットし、沢山いた巨人達は燃えながら倒れていった。
「こいつはすげぇ~、女魔術師一人で巨人族を倒しやがった。」
マルスはそう言いながら振り返った時には、女魔術師の姿は無かった。