彼女も出来たことのない俺がツンデレ彼女相手にどうしろと?
風が桜の花を揺らして窓から見る世界は綺麗な薄桃色に染まった。春夏秋冬と順に手で数えていけばまだ季節は春だがその春もあと少しで終わりだ。
今年から高校(万江川高校)2年生になった俺、(東野 明久)は、あまりの嬉しさに、にやけを顔に出してしまっていることを隠せないでいる。理由は1つ、席替えをしたことにより最高のポジション、窓際後ろから二番目の席を獲得したということだ。
「最高だな………」
そう独り言を口にした時、頭にコツンと小さな衝撃を受けた。別に対して痛いわけでもないが授業中にこんな事をしてくる奴は一人しかいないわけで、友達が少ない俺からしたら犯人など探さなくてもすぐに見つかる。
心の中で窓から見える桜たちに一旦お別れをして
顔を右に向けると「気持ち悪いなぁ……」という目でこっちを見てくる美少女がいた。名前は、西川 美月 俺の数少ない友達であり、このクラスの中では最初にできた友達だ。
「明久‥‥あんた今どれだけ気持ち悪い顔してるか分かってるの?」
はぁ?そんな顔したことないんだけど!ちょっとこの子失礼じゃない!?人が幸せを感じている時に!
「あの〜‥‥美月さん? もう少し言葉をオブラートに包んで言って欲しいんだけど‥‥」
俺は少し涙目になりながらも美月に自分の想いを伝える
「まぁ、明久が気持ち悪いのは最初あった時からだったから変わんないか」
美月は、俺に投げたであろう小さな消しゴムの固まりを、机の上でまた作成しながらそう言った。
ん〜やっぱりこの子さ一回説教とかした方が良いのかもしれないね!?いや、しないとダメだよね!
「でも消しゴムの固まりを俺に当ててくるってことは美月さんもしかして、お暇なの?」
「そうよ。」
「そうでしたか‥‥まさか美月お嬢様が俺のことをそこまで気に入ってくれてたなんて!嬉しい限りですよ」
すると美月は、まるで今にも破裂しそうな真っ赤な顔で
「バッ!バッカじゃないの!?あんたの事なんて別にこれっぽっちも全然気に入ってなんてないんですけど!?むしろゴミムシ程度にしか思ってないんですけど!」
ほんと美月って、アニメに出てくる◯スカみたいなツンデレな台詞言うよな〜、まぁ流石にそんな事言ったら俺の体がいくらあっても足りないのでここは‥
「マジか‥‥俺、美月の友達でもなんでもないんだな‥‥ゴメンな‥‥‥」
「え?」
美月は焦ったような顔して俺に話しかける
「べ 別に!あんたの事、友達じゃないとかそんな風には思ってないわよ!‥‥‥(むしろ‥す‥すき‥だし)
」
「そっかぁ〜なら良かった!これからも友達でいてくれよ!美月!」
最後の言葉はボソボソ言ってて聞き取れなかったけどアニメのツンデレキャラみたいだからほんとうに見てて面白いなぁ〜
そんな事を思っていると、美月が大声を出してしまったからか、自然と教室のクラスメイトの視線はこちらに集まっていた。もちろん先生も‥‥
あ、これ完全に怒られるパターンじゃね?
絶対そうだよね!?
「あなた達、仲が良いのはわかるけど今は授業中よ?しっかり勉強に集中しない」
案の定俺の予想は的中し、クラスメイト達にはクスクスと笑われた。右側で、立ちながら大声を出していた美月は恥ずかしそうに静かに自分の席に腰を下ろし俺の方を見て「あんたあとで絶対覚えておきなさいよ!?」と、小声で言ったあと美月は自分のノートに黒板に書いてある数式を写していった。
俺?俺はもちろん眠りについたよ。――――――――
「キーン コーン カーン コーン」
なにやら授業の終わるチャイムらしき音がする。
これはまさか、昼食タイムか!?
バサッと顔を上げるとそこには、見慣れた男が一人俺の前で立っていた。
この男の名前は、元馬 啓太と言いこいつも俺の数少ない友達の一人であり、
いつも俺が一人で過ごしたい時に限って話しかけてくる若干ウザい男でもある。
「おい‥‥紛らわしい事するな、昼のチャイムかと思っちゃっただろ?」
「まぁまぁ〜そんな怒らないでよ、一応昼だしいつもどおり3人一緒に食べようぜ!?」
確かに腕時計を見れば昼の時間だ、啓太が言ってることは嘘じゃないらしいな。
仕方なく俺はカバンの中から弁当箱を取り出す
まぁ、昼だし結局弁当は食べるつもりだけどさ
「よし!そんじゃあ食べようぜ〜!西川も机繋げるぞ〜!」
「はぁ?なんでまいどまいどこのメンツで食べなきゃいけないのよ」
「いや、だって西川も一緒に食べるやついないだろ?だったら俺と明久と3人で一緒に食べようぜ!」
二人が話している間に俺は啓太の席と美月の席を俺の席と合体させて3人向かい合わせで食べれるように作っていく。
しかし!誘われた側の俺が、なぜ机やら椅子やらを動かさなきゃならんのだ!!
そうこうしているうちに席も全部作り終わったので3人一緒に弁当を食べ始める。
あ、啓太は弁当じゃなくコンビニで買ってきたおにぎりを3つ コロッケパン屋 カツサンドなどを机の上に置いていた。
こいつやっぱり相変わらずたくさん食うな‥‥…
こんだけくってよくもまぁ、太らないもんだ。
「いや〜やっぱりこの3人で食う飯は美味いな!」
「何言ってるのよ急に気持ち悪いわね、あんたも明久と同じような種類の変態だから仕方がないかもしれないけど」
「ひっど!西川ひっど!俺普通の事言っただけなんだけど!?」
おぉ‥‥可哀想に啓太‥お前も俺と同じ変態なのか。
ん?いや、待て待てなぜ俺まで変態扱いされてるんだ?
「美月、その言い方だと俺まで変態ってことになってるんだけど?」
「は?当たり前じゃないそんなの、私と最初友達になりたいって急に手を握ってきて、そのあと泣きながら抱きついてきたじゃない」
た、確かにあの時は友達欲しさに本当に真剣になってたから友達ができたことが嬉しくてつい抱きついてしまった。
「二人が教室で急に抱きついてるのを見て、俺もこんな奴らと友達になってみたい!って思って二人に声かけたんだぞ〜」
啓太は、言い終わるとムシャムシャとパンを食べ始めた。
「まぁ、あんたら二人とも変態だから今更何言っても仕方がないけどね」
そう言うと美月も自分の弁当に入っている卵焼きを食べ始めた
「そういえばそろそろ中間試験があるけど二人とも大丈夫なのか?」
二人は俺の質問に対して「よくわからないんだけど?」のような顔をして答える。
「テストなんて別に勉強しなくてもそこそこできるって〜!」
「勉強は毎日の積み重ねよ?しっかりやれば努力した分、点数も付いてくるはずだと思うけど」
俺はなんでこの二人にテスト勉強の事を聞いたんだ!?
よく考えたらこの二人、この万江川高校2年のなかで1位2位の成績じゃん!!
そりゃこんな平凡な俺とは違いますよね!
あー恥ずかしい!穴があるなら入って一生出てきたくないよ!
すると啓太が
「まさか今回のテストやばかったりとか〜?」
こいつ俺を馬鹿にしてるのか!?
ちょっと成績が良いくらいで!(ちょっとじゃないけど)
「テストが不安なら西川の家で勉強教えてもらったらいいんじゃない?」
「…………………」
10秒ほどしっかり間を取ってから
二人して
「「は?」」
と言ってしまった。
だって年頃の男女が二人で部屋の中!
何があってもおかしくないよ!
いや、別に俺は何もしないけどね!!?
「あれ〜??西川は明久に勉強教えたくないのかにゃ〜??」
啓太はニヤニヤしながらコンビニで買ってきたパンの最後の一口を食べる。
「俺はテストの点数が上がるならもちろん教えて欲しいんだけど」
「ほらほら〜!?明久もこう言ってる事だし!」
返事が遅いから不思議に思い美月の方を見ると何やら、下を向きながら一人でブツブツ呪文を唱える。
仕方がなく肩を軽く叩いてやると美月は
「はっ!」顔を上げて
「まぁ、明久がどうしてもって言うなら良いわよ!」
少し顔を赤くしながら美月は残った弁当のおかずを食べて 言った。
「じゃあ決まりだな!!今週の土曜日に西川の家で勉強会だ!」
啓太はニヤニヤしながら自分の席を元の位置に戻すと、「それじゃ!」と言って教室から出て行った。
美月も食べ終わったのか机を元の位置に戻すと
俺の耳元まで顔を近づけて
「絶対約束だからね」
と言って、何事もなかったかのように自分の席につき勉強を開始した。
俺はというと、急な美月の行動に少しびっくりして5分ほどぼーっとしたまま
昼の時間は終わりを告げた。
もちろん弁当は全部食べきることはできなかった。