窓は燃える、誰にも消されずに
私には思い人がいる。
もう一年は思い続けているであろう。
まだ彼には悟られていないし
他の友人にさえ言っていない。
私は好きになったらすぐ行動するタチではないのだ。
胸に思いを秘め、秘め、秘め
彼への手紙が溜まれば溜まるほど
火に捧ぐ紙のように
燃えてゆくのである。
時々、引火してしまわぬよう
彼の欠点を見つけ冷ますのである。
好きな人を目で追うのが
私の癖である。
彼は見られてることなど到底知りもしない。
友人は私に何を見ているのかと問うが
私はただ見てるだけと濁す。
友人は不思議そうに私を見るが
それでいいのである。
それで。
彼は私にいつも通り接してくれる。
その日常を幸福に感じているが為に
彼と恋愛関係になろうと行動することが
出来ないのだと自らも理解している。
しかし、幸いなことに
彼は所謂、「陰キャ」なのだ。
陰キャとは目立たない
ヒエラルキーの低い人のことを言う言葉である。
勿論、私は1mmもそんな事は思っていない。
私自身も、人と接するのが得意ではない。
そういう人達を陰キャと纏められるのは
私も好きではない。
凝り固まった人間関係の中で
波風を立てないよう細心の注意を払いながら
生きているのである。
彼も、私と同じ生き方なのだろうと思っていた。
しかし、彼は言いたいことは言うのである。
私はヒエラルキーが低いにも関わらず
ズバッと言う彼に惹かれたのである。
それはまるで、太閤秀吉に対し
農民が口答えするようなものだと私は
思っていたからである。
人間は自分に無いものを持っている人に
惹かれると、どこかで聞いたことがある。
まさに彼なのである。
それだけで惚れるなんてと
皆は言うだろうが
それだけなのである。
私はそういう人である。
簡単に人に惚れ
長らく思い続ける
そういう人なのである。
そういう人でいいのだ。
いろんな人が居てもいいのだ。
この世界は個性に満ち満ちているのだ。
たとえ、私が彼に惚れていても。
私はただ彼を思い続ける
そして、いつか彼を諦める。
そして、また誰かに惚れる。
そして、私は窓を燃やし続ける
誰にも消されないように...