表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

外に出たのはほんのきまぐれ。

作者: まつした なおい

外に出たのはほんのきまぐれ。

その日は初雪だった。白い雪がひらひらと舞う。かじかんだ手にほぅっと息を吐くと凍った息がたちまち黒い闇へと溶け込んだ。少女の小さな小さな足跡がまっさらな雪の上につけられてゆく。まるで少女をずっと待っていたかのように、今宵は雪の妖精は楽しく踊る。

ふと、今日の夕食はなんだろうと思った。

だけど、そんな考えも新しい玩具を見つけてしまってはもうおしまい。少女は見事に目の前の宝物に心を奪われてしまった。

まだ生まれたばかりの雪が、赤い液体で溶けていた。もう機能しない人形は行儀よく正座している。

顔はかわいいけど赤い血がベットリついていて、このお人形は好きじゃないな。そんなことを考えながら、少女は屈みこんで死体ににっこりと実に愛らしく微笑みかけた。

当たり前だが、死体は微笑み返してこない。少女はやつあたりとしてトンっと死体を足で蹴る。するとコロンと意図も簡単に頭がとれてしまった。

もともと壊れていたのだろう。大人でさえ普通は不可能なのだ。こんな幼い少女に大人の頭などもぎ取ることは出来るはずがない。

「あぁーもうっ。」

玩具が手に入らなかった子供のように少女は駄々をこねた。

好きじゃなくても可愛かったから、コレクションにでもしようと思ったのに。

「もう、かえっちゃおっかなー。」

誰に言うでもなく少女は頬を膨らます。

そしてもう一度、トンっと死体を蹴ると、高級な毛皮のコートから覗くたっぷりとしたフリルスカートを翻しながら、もと来た道を帰って行った。

少女に倒された頭は空をみていた。

雪だけが死者を静かに埋葬しているようだ。

外に出たのはほんのきまぐれ。

明日は本格的に積もりそうな雪空だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ