第0話「森神」
「くっ! 魔力が……」
力が抜け、足から崩れ落ちた。
地に倒れ込んだ私を見下すように、相手は私に声をかける。
「残念だよ、森神……かつての仲間を封印するなんて」
倒れ込んだ私に近づいて腰を曲げて残念そうに私にそう言った。
「陽一……! お前絶対許さないからな!」
唇をかみ締め地面に着いた顔を震えながらあげて彼を睨みつける。
「許さない? どの口が言ってるんだい? 黒霧紗代を殺した君が何を言ってんだか!」
「闇の力を取り込んだあの子はもう人間じゃないのよ! あの子を殺したのは仕方なかった! 私にはあれしか方法がなかったの!」
「うるさい……! なんとしても、お前は俺が封印しなければならないんだ!」
私が本当のことを伝えても、彼は聞く耳を持たない。
怒りの感情に体を支配されてしまっている。
「……もうあんたに何言っても無駄か」
悲しい顔を見せて私は彼に問いかけることをやめた。
「さらばだ、森神この大地で永遠の眠りつくがいい」
地面にぺたりと座り込む私に向かって彼は呪文を唱える。
「この罪人をこの地に縛り付け給え! 封印の鎖よ!」
彼が手を私に向けて振ると洞窟の至る所から鎖が飛び出てきた。
私はそれを避けることも出来ず、鎖は私に絡みつく。
縛り上げられた体は、鎖に引きづられ地面へと引き込まれていく。
あぁ私はここで終わるのか。
とても悔しい、悔しい!
なんでこんな最後になるんだ! 私は何を間違ったのか!
そんな後悔が次々と湧いてくる。
辛いよ、酷いよ、あんまりだ。
私は負の感情に支配された、でもこのまま終わるのは嫌だった。
だから────
「さようなら! 闇に染った英雄よ! ……諦めて封印されてあげる!でも、後悔することね! 私の最後の魔力を使って貴方と貴方の血を受け継ぐ者達に呪いをかける!」
私は地面に完全に埋まる前に、最後の力を振り絞って魔法をかける。
手を前かざし、辛い顔で笑ってこう叫ぶ。
「この私が封印されている間、貴方の血を引く子供は一生魔力がないまま育つ! そして私が封印から解かれた時この呪いは解かれる! それがお前にあげる私の置き土産だ!」
「お前! 最後までなんてやつだ!」
「別にあんたになんて思われようがどうでもいいわ……じゃあね、白銀陽一あんたのこと永遠に恨んでこの世に縛り付けられるとするわ」
そして、私は地面に完全に埋まってしまった。
……この出来事が、ある一人の少女が最強の魔道士になる話に関係することをまだ知らない。