ねちょ(三十と一夜の短篇第20回)
「声がねっちょりしている」とわけのわからぬ、妻からの言いがかり。
その概念がいまだにつかめない。「声がねっちょりしている」なんて。
「ちょっとなに言ってるかわからないんですけど」ってなるでしょう。
三次元人に四次元の話を持ってこられても、あらためようがないんで。
妻は私を「ねちょ」と呼ぶ。「ねっちょりをやめてほしいから」って。
そんなこと言われましてもですね、概念がわからないから治せません。
感性が独特すぎる、羨ましい。その独特な感性が、私にはありません。
自分で自分のことを「ねちょ」というと、妻はめちゃくちゃ怒ります。
だって、ねちょって呼ぶじゃん。けれど、道理はとおらないのですよ。
ねっちょりした声の治療法がわからないから、私はひらきなおります。
ねっちょりしてたっていいじゃない。人間だもの。ひらきなおりズム。
ねちょは個性ってことで、いいんじゃないでしょうか。よかないよね。
声なき声を文字に起こしたところで、意味なんかない。ストレスレス。
この字数あわせも意味がない。内容なんてなんにもない。空疎な駄文。
たらたらたらと、書きつらねていても致しかたない。やめたやめよう。