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ひとりごと

作者: yuki

外は霧に包まれている。

街の合間にそびえ立つ寂れたビル群がもやもやした天井に頭を突っ込んで、罠にかかったバカなネズミみたいにもがいているのがわかる。

いいざまだわ、なんて思って見上げた空は底の浅い白色で、喉のべたついた私は薄め過ぎたカルピスを連想した。

小さい頃、初めて買った原液のカルピス。

薄めたら薄めるだけたくさん飲める、などととてつもない勘違いをした私は、キャップに一杯くらいしか入れていない麦茶用のボトルに水をなみなみ注いで、薄まり過ぎた雑巾の絞り汁みたいなそれを泣き泣き飲んだ。

バカバカしい記憶。ビンタしてやりたくなる。

頭の悪いガキは大嫌い。泣いてぐずればどうにかなると思ってるから。

なんでも自分の思い通りになるほど、世の中良くできちゃいねぇよー。

私はその事を、小学校も半ばの頃には気づいてた。

どうでもいいささいなこと。好きだったアニメのおもちゃが動かなくなったり。

家族で遊園地に行く日に限って土砂降りだったり。

息の臭い男の子の隣の席になったり。

そのとき、私は思うのだ。ああ、神さまっていないんだなー。当たり前のこと。


私の脳みそは目まぐるしく回る。ゼンマイ仕掛け、歯車仕掛け。思考は溢れまくって、鼻や口からドボドボ垂れ流しになる。

私はそれを必死に集めて自分の中だけで消費しようとする。

周りのポンコツどもがそれを見たら、頭がパンクして火花が散るかもしれない。

私はいわば、宇宙人の持ってきたオーパーツだ。あまりにも特異的過ぎて、私のオーバーテクノロジーっぷりを量産型の不良品は受け入れられず、ショートを起こすのだ。


こんなふうに、ブクブクに太った妄想をちょっとつつくとそいつらはすぐにしぼんでしまう。

直前までどんちゃん騒ぎをしていた頭を空っぽにしてしまえば、静かでいやーな現実だけが残るのだ。

消化不良のきのこみたいにね。

私が気持ちだけシャーペンをつまんでみたりすると、今日もまたノートをサボった分だけ指に重みを感じる。

直線にして2メートル分ってところ。

随分と安っぽい重みだ。


私はふと、真っさらなノートに向かい合っていびつな星型を三つ、描いてみる。

出来上がった星は線が醜く歪んでいて、とてもじゃないが星には見えなかった。

へたくそ、これじゃあヒトデじゃない。

トゲトゲしたつのをグニャグニャ歪めて三匹のヒトデたちはノートの中を彷徨う。

行き場のない三匹たちは、どうしようもなくゆらゆらしている。

あんたらも閉じ込められてんのよ。

私はそう呟いて奴らを消しゴムで擦った。



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