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XO!i  作者: 恋刀 皆
96/164

第93話「Poupee de cire, Poupee de son~夢見るシャンソン人形~」

 2016年四月十七日日曜日先勝。


………………

…………

……


=============================


四コマ文字文字恋愛相談「絶望たやす希望のぞみ


「……のぞみ、想ったんです……」


バタバタ バタバタ


「                     」


=============================


「たやすちゃんさえいなければ、

人々は絶望を知らずに済むのですよね……」


バタバタ バタバタ


「                     」


============================


「……でも……だったら、

のぞみのぜつぼうせはどうなってしまうの?

……のぞみは、そんなの絶対にイヤ! だから、えーい!」


バタバタ バタバタ


「                     」


ピカッ☆


============================


「だから頼むから中途半端に存在させないでくれ!

無いなら無くて善し。のぞみちゃんは大体ねぇ……」


チュッ♡


「(♡♡♡)」「たやすちゃん大好き♡」

「(///)」「あー……、……はぁ……君には敵わないよ……」


============================


 今日も、


朝の憩いの、

普通新聞・不定期連載「絶望と希望」。




 ……いえ、




それにしても……、

絶望は無いなら無いで、

世界は一層の歓びに満ちるものなのでは?


 つまりは現世に生きる人々は、

死んだら必ず天国へ逝ける。

そう希望が持てる訳ですし……、


 お父さん……あたし間違ってる?


希望と絶望とは、

どちらが矛で盾なのでしょうか……?



希望は絆ぐ事。

絶望は絶つ事。



 世界には初めから

「矛盾」が織り込み済み。



 それはなんだか、

天文学的数値の目的地に、

とりあえず足場創らないと、

満足に人は歩けないから、

答えは全然違っても、

この物差し、

今はとりあえず使っておこう……。



 そんな、



そこはかとない、


虚無感を覚えます。


 それでも……、


希望へとまわすなら、



存在あたしたちは、

全てが“道”だって事かしら?



 脳裏に、

ドイツ生まれの、

理論物理学者様のあかんべえが、

ぎりました……。



………………

…………

……



 今日は、

杏莉子主催の「読書会」の日です。



その会場は、

一途尾氏がアルバイトでお世話になっていると言う。



ライヴ喫茶【解輪かいわ】様へと、

相成りました。



 そうしないと一途尾氏が、

「読書会」にご参加できませんから。



 あたしはまだ行った事が無い為、

わずかな情報量ですが、

昼間は喫茶店で夕方から居酒屋へと変わるそうです。

「ライヴ」の意味は、

ある程度店の方に認められた演奏家は、

解輪で奏でる事を許していただけるそうです。

あたしPA機器には全く疎いですから、

拝見できるだけでも、

今から凄く楽しみなんです♪



 もしもウッドベースが置かれていたとしたら悶絶しそう☆




……相棒マニごめんなさい。




………………

…………

……




 清らなる明けの末候。




ふたつの目的地を目指して、歩きながら、


あたしはお家の皆さんと、虹を見ました。



 それも……、



「うわぁ皆さん見てください!?

お空に虹が二本も架かっていますよ?」


「一人称は申します。

今朝の雨上がりからのものでしょう。

虹は空の水滴が反射してできる現象故に」


 流石は杏莉子。

あたしはまだまだ、

世界の事をいっぱい知りたいのです。


「でも杏莉子? 二本もできてるのは、

あたし、生まれて初めて見ましたよ?」


「光が二回反射した為です。

内側は主虹。外側は副虹。

また白虹。月虹。

そう呼ばれる現象もあります」


 あ……杏莉子?

勉強にもなりますが、

あたしに勉強が足らない事も思い知らされてしまいました……。


「教えてくれて有難う、杏莉子」


 そんな杏莉子の本日の装いは、

トータルでは「水兵さん」かしら。

上は青ラインが爽やかなセーラー。

下は白のパンツに、


 特に……、


左足側に青の昇龍の刺繍。

カンカン帽にヘビートート。

大切な足元はローファーで、

あたしはなんだか、

そこに杏莉子らしさを覚えて、


くすっ♪ 


となります。



 後は……、



「杏莉子? 両腕のブレスレット素敵ね?」


ないものねだりではないんです。

あたしの後学の為なのです。

……ちょ、ちょっぴり嘘吐きました。

神様ごめんなさい。


「一人称は申します。

こちらはパワーを持つストーンです。

本日は、「空色縞瑪瑙ブルーレースアゲート」、

瑠璃ラピスラズリ」をしています」


 あたしには、

杏莉子の機知に富んだ返事が嬉しくもあり、

……ちょっとへこみもしたり……。

……そう言えばお母さんの持ってた漫画に、

「瑠璃」は出て来ていたっけ……。


「杏莉子よ? それが強さの秘訣のひとつか?

時間を創るから、わちにも教えてほしいち」


 そういう祷は、

淡色で薄手のロングコートがすぐに目を引く。

黒のパンツとショートブーツの間からの、

ちらりと覗く足首が、

スラッとしたスタイルの良さの要かしら?

背中に鞄、

こちらも黒。

祷の基調は、とにかく黒なのでしょうね。


「石とは「意志」を宿すもの。

麻も見識を深めてゆきたいです」


 七ト聖氏のお洋服は

あたしのリトルワールドでは、わかりません。



「こちらはフランスのアルザスのものですよ?」



…………、

……な……なんで伝わってしまうのでしょう……?

七ト聖氏には、

疾走回路フルドライヴさえ凌駕するお能力ちからが有るのでしょう……。

……謎の多い女性ひとです。



 そうして、

春の町角を、

軽妙に歩く内に、

ひとつめの目的地。



弥那町のケーキ屋さん。



Merciメルシー bienビヤン】へと、




到着致しました。




………………

…………

……




 きっとオーブンから漂う甘い香りと、

店員さんの、

「いらっしゃいませ」

それと背景にシャンソンがお出迎えです。




 店内は素朴に洒落ていて、

それほど広くはなく、

あたし達が入店するだけで、

自分の動こうとするスペースに、

気を付けないといけません。


接客の方はお一人。


 ショーケースの、

可愛いケーキたちを拝見するだけで、

食欲を、著しく刺激されてしまいます。


店員さんとの応対は、

やはり杏莉子。



 すでに必要な事柄は流れていた様子で、

解輪へのケーキのお届けは、

テキパキと終わらせてくれましたが、

あたしの目の保養には物足りなかったのです……。



………………

…………

……



「予定通りの「運命」。

早水 捧華さん、

あなたはまるで「夢見るシャンソン人形」の様ね」



 店外から開口一番の七ト聖氏。

あたしは感情が複雑に揺れてしまい、

七ト聖氏との、

これからの会話の筋道が見えません。


「羨ましい時期でもありますが、

麻は褒めてはいませんよ?」


 お言葉の理解が追いつきません……。

悔しいけれど……、


「すみません。

七ト聖氏の仰っている意味がわかりません」


「貴女が余りにも砂糖菓子に惹かれている様でしたから、

麻は、良薬を差し上げたつもりです」


 良薬?

……“良薬は口に苦し”?


「本当の「害」というものは、

大抵入口だけは甘美である事が多いという、

麻からの忠言と受け取ってくださいな。

楽しめる内は構いません。

ですが、

甘い物を食べ過ぎて、

抜け出られない程まで、

苦い想いをしてはいけませんよ」


 そして、


ここからは柔らかく、

思いやりの確かな声音で、



「境界を越える事で、

得られる強さ、与えられる弱さがあります。

闇雲に人から向けられた言葉を、

ただ信じてしまう事も、

また恐怖ですが、

ここより先に、

絶対に踏み込んではいけないという、

体感と経験と見極め。

全宇宙、太陽系、地球、日本、弥那町、

普通学園一生徒であるという、

小さなじぶんの内側にまで、

隅々に愛して差し上げてください」



………………

…………

……



 お父さんお母さん。

お兄ちゃんお姉ちゃん。



 あたし学園ここに来れて、



本当に善かったと、



今を謳い始めましたよ?




 お次は「読書会」。

本命の場所、




ライヴ喫茶解輪での――、








お話で御座居ます。



たまごをぬすむものはうしをもぬすむ

たまごはぶんさんしていれましょう

それがじんせいさ

歌 France Gall

作詞・作曲 Serge Gainsbourg

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