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XO!i  作者: 恋刀 皆
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第87話「Movin' on Up」

「凄ぇな早水……確かに、わからねぇ……」


「三尾氏も褒めて下さいましたが……、それ程凄い事なのでしょうか……?」


「…………早水は、……そうだろうな。早水にとっては、当たり前の事なんだからよ」


………………

…………

……



 2016年四月十三日水曜日先負。



普通学園、三時間目。


運動場、


ウォームアップ、ストレッチ、

様々なボールタッチ、それぞれのキック、

30分程度のミニゲームを終えてからの、



恵喜烏帽子氏とあたし。



 サッカー、ポジション適正選考での


一コマで、




御座居ました。




………………

…………

……




 四時間目が十分程過ぎて、




いつものお部屋へ向かいます。


 しかし、


お世話になっているお部屋の名称が、

未だに不確かでは、

敬意も十分とは言えません。

普通学園にちらほらと設置されている、

校内地図へと頼らせていただき、



自習室である事が、


分かったので御座居ます。



………………

…………

……



 自習室へ、



昨日と同じ皆様方で御座居ます。


 昨日の主導が三尾氏でしたら、

本日は恵喜烏帽子氏で御座居ます。


「僭越、恵喜烏帽子です。これより皆様の暫定的なポジションを発表させて頂きます。サッカーは野球とは違い、明確な攻守がわけにくいスポーツです。男女混合と怪我を極力減らすという問題。その為の選考に、俺も悩みました。言い訳ではありますが、どうか、ご理解下さい」


 丁寧に頭を下げられ恵喜烏帽子氏。


ゆっくりと戻されてから、


「野球での三尾にならいまして、敬称は省かせて頂きます。疑問やご意見は、発表後に挙手をお願いいたします。それでは……、」


 恵喜烏帽子氏はわずかに逡巡。


のちに意を決され、

御発表されました。


GKゴールキーパー、神守森。DFディフェンダー、リベロ、恵喜烏帽子、左サイド早水、センター三尾、誠悟、右サイド常世。MFミッドフィルダー、左サイド歌坂、センター皇、右サイド七ト聖。FWフォワード、流天、一途尾。控え、天休、神咲、星野。戦術は、1-4-3-2のカテナッチョ今はそれしか思いつきませんでした。以上です」


 あ……あたし、出られるのですね。

……しかし、恵喜烏帽子氏がディフェンダー?

……そして……閂って……?


 学園フルハウスでひとつ刻んだ事。



“聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥”。



恐れずに、挙手の一手で御座居ます。


「はい。早水、どうぞ?」


 恵喜烏帽子氏の促しから、

声音に落ち着きをつとめて、


「はい。恵喜烏帽子氏がDFの理由と、……閂は、守備が堅いという意味だけではないのでしょうか?」


 少し意外そうな声音で恵喜烏帽子氏、


「早水? 閂知ってるのか? ……サッカーやった事あったんだな」


「いえ、あたしはないのですが、うちの父が昔サッカーでゴールキーパーをやっていたらしいので。ほんの少しだけの知識です」


「そう……か、キーパーの感想は貴重だ。早水に聴いておきたい。早水のお父上はキーパーやディフェンス全般について、なにか仰っていたか? 憶えていたら教えてほしい」


 ぇ……と、どうしてその様なお話に?

逆に答える立場になってしまいました。


お父さんとの記憶を掘り起こします。


「……おぼろげですが……、……う、うちの父はこんな事を言っていたと思います。……僕は下手っぴなゴールキーパーだったからね…………スイーパーの存在はとにかく有難かった…………熟達していないキーパーにとってオフサイドトラップは…………かなりこわいよ……と、あとは、……基礎は当然の事ですから…………キーパーにとって最も必要な事は…………精神強靭さだと想います…………それがなににしても…………チームの士気を下げてしまっては…………勝てるものも勝てません……」


 皆様の静粛さが心身に堪えます。

あたしに身に付いた知識を、

披露させて頂けている訳では御座居ませんから……。


「有難う早水。良いお父上だな。俺も出した戦術に、少し自信を持てるよ。じゃあ早水の質問へも答える」


 恵喜烏帽子氏としっかり視線を合わせてから、

失礼にならない程度にわずかずらします。


「カテナチオは現在、守備が堅いチーム、という意味で浸透している。意味自体は正しい。ただ元々はイタリアで流行したサッカーの戦術だってだけだ。そして、俺がディフェンダーの理由は、キーパーはしたくないからできない。その上で、俺の身体を活かし、全体を見渡せて、攻守の指示がし易いとなると、リベロしか、今は無い気がしてるんだ」


「リベロとはなんでしょうか?」


「早水のお父上の、頼りになったスイーパーの別称だ。元はイタリア語で自由という意味だ」


「そうでしたか……。

恵喜烏帽子氏、お答え、有難う御座居ました」


「こっちもな」


 会話の結びから、次の起へ。

清夜花さんの挙手で御座居ます。


「はい。星野さん」


清夜花さんは短く仰る。


「控えの役割を教えてください」


恵喜烏帽子氏は清夜花さんへお辞儀。


「星野さん。話が早くてとても助かります。はい。俺も三尾の様に右サイドに常世さんか貴女か、ほんの少し迷いました。しかし常世さんには最低限のサッカーの知識がある事を、俺は知っていましたし、なにより、常世さんが野球もサッカーも、ユーティリティープレイヤーでは、明らかにハードワークです。星野さんたち控えの選手には、ディフェンス専門の、ユーティリティープレイヤーをお願いさせて下さい」


「わかりました」


 そう仰ってから清夜花さんは、

天休さん、神咲さんの方へと視線を向け、

ご両名は、確かに「了解」と、

頷かれたので御座居ます。


「恵喜烏帽子よ。てめーが一番ハードワークだろーが?」


 雁野先生がほんの少し強い語調でお入りに。


「先生ちゃん……サッカーわかるんですか……?」


「そりゃー仕事として、生徒のやるスポーツの多少の戦術くらいはもう頭に入れてあるよ。だから忠告する。おまえの大きな身体の下半身への影響と相談してから攻撃には参加しろ。例えば、一試合のオーバーラップ回数を決めておくとかな? おまえは大分おさまってくれたが、突っ込み過ぎるなよ。夢中になり過ぎるなよ。おまえ達のやりたい事を全て成し遂げたいなら、プロフェッショナルなぐらいに自己管理しろ。力点はゆっくり、だが急げ。これができなきゃ遠くまで走るのは難しいぞ」


「……ご忠告、しっかり……受け止めます。先生ちゃん」


「善し。無理すんなよ? まだ話しておく事はあるだろーから、続きを恵喜烏帽子、よろしく頼む」


 畏まり、

恵喜烏帽子氏の暫定的な戦術の要点が、

絞られたので御座居ます。


「四時間目がもうすぐ終わりますので、一番大切に思う事を。女性選手は先ずワンタッチプレーを覚えてください。前方にパスコースが無い場合は、すぐに後方へ返してください。ゴールキーパーしか居なくても、神守森さんへ。言わずもがなですが男性選手はそのプレーが失点に繋がったとしてもまずは絶対に責めないでください。基本は守備。しかし、攻める気持ちがなければ、守備は試合中に必ず破綻するものです。攻守のバランスというものは、サッカーでは、とても大切な言葉のひとつです」


 疑問質問を丁寧に答えて下さる師が居る事は、

とても仕合わせな事で御座居ます。

今の内に、恥ずかしがらず、

恵喜烏帽子氏へ挙手。


「早水どうぞ」


「はい。ボールを……、ワンタッチプレーつなは理解できていると思うのですが、あたしがフリーだった場合、攻守のバランスの為に、ドリブルで進まなければいけない時はどうしら……、なにが一番大切な事なのでしょう?」


 恵喜烏帽子氏の表情が、

少し綻び、

こう仰ったので御座居ます。




「早水、嬉しいぜ。フリーやドリブルがわかるんだな。それに好い質問だ。点取らなきゃ勝てねぇんだからな。ドリブルで、前に進む時。俺が最も大切にしている事はな……?」




………………

…………

……




 あなた様の大切は、何で御座居ますでしょうか?




給食をいただいてから、


また五時間目に、








仕合わせ仕合わせ♪



 たまはおれをこうせいするパーツのひとつ

そんで

ブチあがれ

Song Primal Scream

Lyrics/Music GILLESPIE ROBERT INNES ANDREW COLIN YOUNG ROBERT CLEARIE

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