第75話~皇 承の場合~「朧月夜」
「雁野さん、見つけました」
………………
…………
……
「すげーなー。このかくれんぼの挨拶始めて以来、最短の鬼だよ」
「……驚かないの、ですね……雁野さん」
「そーゆーヤツらと遊んで学ぶのが、オイラの仕事だからな。あとな……」
小生は、安い……挑発をする。
「わかっていますよ? 雁野さん?」
……それでは?
「小生に、示して下さい」
………………
…………
……
場が、張り詰めてゆき、
小生は、森羅万象にその身を委ねる。
自然に、
気が巡り、
気に臨む、
微細に息を吸い込み、
“言の葉廻し”、
「“鬼 て……、っ!? っ……くっ……」
まず身体が動かず……そして、声も発せず……、
これでは……、
言の葉が……廻せず…………。
………………
…………
……
「雁野先生も、御苦労をしていらっしゃるのですね」
「上からかよwww まー確かに、皇程ではねぇだろうな。意味わかんなすぎるぞ? その能力」
「森羅万象という大樹の剪定を、させて頂いております」
「うん信じるわ。神気が極大に過ぎてオイラの外套も部分的に修復に入ってしまってるよ」
「よく……わかりませんが、すみません」
「いーよ。でもな? もちろん個人差はあるが、オイラの近から中距離で、なおかつ皇が言葉に出さねぇと能力を使えないならまだ負けねぇだろぅよ」
「この能力は、より善い世界を創り出すものと信じております。自然の中に在れば勝敗もまた、自然に導かれ必然です」
「うんいー事ゆーな♪」
ならなー?
と、
雁野先生は…………、
………………
…………
……
小生に、風景が……、
広がっている。
小生は菜の花畑に、
いつの間にやら立っていて、
春の夜に、ほのかに霞む、
遥かに美しい、
月の……情景。
………………
…………
……
「この国に来た時に、理解を深める為、響く原風景を漁ってみたんだ」
「……“幻術”……でしょうか?」
「うんにゃ科学だよ。プラネタリウムで夜空はあるからな。うーんとそーだな「糊付け」が近いかな? 落第先生のオイラちゃんでもできるレベル」
「……雁野先生……、感謝いたします」
「にゃはは♪ おう、有難う、皇」
「それでは……、お先に失礼いたします」
小生は、プラネタリウムを後にした。
………………
…………
……
……ふー、
オイラちゃんは、ビビっていたしました。
「……あれでまだ……選ばれたとはいえ……、十歳か……、やれやれ」
ただいま
おかえりなさい
それがぼくのげんふうけい
作詞 高野辰之 作曲 岡野貞一