第74話~常世 祷の場合~「Suite『Miroirs』~Noctuelles~」
……わちは…………迷っていた……。
………………
…………
……
「さすが皇様じゃ。わちの能力でも捉えきれん。精進精進」
……嘘……じゃち?
……そこまで……遠いのか……皇とは……?
……わちが……走り始めた……時点で……すでに到達……。
……これが……授業……かくれんぼで……なければ……、
……大丈夫……まだ……平気で……いられた……ち……。
………………
…………
……
……わちは……迷い……の……最中……、
……じゃが、
捧華が、居る。
深淵を覗けば、深淵にもまた覗かれる。
その覚悟がなければ、喰われる。
皇との、圧倒的な距離感。
わちの得意分野での挫き。
そして、
捧華が、わちを見ている。
……それでも……、
……わちは……迷い続ける……が……、
……が……じゃ……?
「どんな能力を使ってもいい」
……まことじゃな?
……信じていいのじゃな?
…………わちは……ゆくぞ……?
……腹を……決めた……ち……。
………………
…………
……
わらわには、
“禁じ手”のひとつに数えられるもの。
雁野先生
どうか……、
わらわの為にも……、
……がっかりさせないで……下さい……。
………………
…………
……
……ゆく……
……“仏語り”……
……“鏡”……
……わらわは……
……“蛾”……
……です……
………………
…………
……
わらわの視界は、
一旦暗くなるが、
雁野先生が、
上空を見上げると、
星が瞬いていた。
瞬きの間、
自身の居場所が、不明になる。
しかしじゃ――、
わらわには学園内の知識が多少ある。
………………
…………
……
「……プラネタリウムですか雁野先生?」
「おぉ常世か?
てめーしんどいだろこれ?
色んな意味で、もう止めとけ?」
――っ、
「……分かった様な事を……仰るのですね?」
「うんまぁじゃあ行くよ」
雁野先生がそう仰ると、
プラネタリウムの視界を背景にして、
とても小さな雁野先生が、
自身の眼に、
今はわらわの眼でもある眼に、ちょこんといらっしゃった。
「……どっ!? ……どういう事……でしょうか?」
「オイラはわかれて、オイラがオイラの中に入れるんさ。アプローチは多岐にわたるが、常世にどううつっているかまでの正確さには、多少欠ける。でも、これやる時は、大抵しんどい時だからな。常世もしんどいだろうなってな?」
……これが……普通学園……か……
……じゃが……、
……ぷっ、
なんだか吹き出すわち♪
「……心配ご無用ち♪ これはわちの奥の手だち♫」
「ならいい。許可を出したのはオイラだからな」
「雁野先生もほとほと命懸けだちっ」
「先生方は皆様命懸けだろうよ?」
「そうでしょう……か?」
「続けていらっしゃるお方々はな?」
「わちの様な蛾でも、導いて下さいますでしょうか?」
「あたりめぇだろ? それがオイラの仕事なんだからよ? オイラも、間違った時は、よろしく頼む」
――――っ!?
先生の言葉に
気を取られ過ぎていたち……、
……突……然の……強い……光……、
……まぶ……し……い……。
「……「雁野先生」……なにを?」
「まー見てみろよ?」
雁野先生の両目で、わちは見る。
……澄清な……青空を……。
「てめーちゃんの入学からみてるけどな?」
……青い空が……あんまり美しかったから……、
最後の台詞は、
「てめーはけっこう蝶だぜっ♪」
聴こえなかったち★
わちはがだろうか
わちはちょうだろうか
せいいっぱいいきてみよう
Composition Joseph-Maurice Ravel