第5話「春夏秋冬」
2014年04月14日月曜日大安、
コンちゃんとポップちゃん誕生。
季節がわかりづらい町中と、
僕自身の暑さ寒さへの強めの耐性を考えても、
まだ夜は少し肌寒い春の事。
間も無く、鉢植えをもらう。
僕は時間をつくり、
アニメや映画をよく観るように努めました。
僕は、
以前も“第四の壁”でお話した通り、涙もろいです。
アニメにしても、映画にしても、
大体どんな作品を観ても、泣けてきてしまいます。
魂の琴線が、どうにも震えてしまうんです。
アマチュア作家として、
プロの脚本家の豊富な知識や語彙。
様々なクリエイター様方の、熱意の結晶。
ひとつの作品に、何百、何千、何万の人々の、
動きを感じ、
それをまとめていらっしゃる監督に想い馳せると、
すぅっと、溢れてしまうんです。
僕は、倖子君とは逆に、
変な言い方ですが、涙を流す事を好みます。
一長は、心がクリアになるからです。
魂や、心の、おさめるべき場所が、
そこへ導かれる気持ちに、しばらく想えるから……。
ですが、すぐに迷子になってしまいます。
まだまだ弱くて齢アラフォー手前。
僕が居れば、鉢植えのお食事は、
欠かない状態ではありました。
君からも時折、あくびの雫を頂きつつ。
春、桜花を仰ぎ、
夏、夜の草いきれを嗅いで、
秋、紅葉は舞い、
冬、鮮少の雪。
起承転結、出会いと別れ。
季節はくるりと円り、
また、春が訪れる。
本日は、
2015年03月03日火曜日先勝、午前三時をまわっていました。
早水家にも、春の……、そう確か、
佐保姫様の息吹が、今届かんとしています。
待ちに待った。
鉢植えの萌芽が……、
………………
…………
……
僕はPCさんの脇に鉢植えを置き、
家作りをしこしこと続けていました。
倖子君は、襖一枚隔てて寝ています。
憩いのアイスコーヒーをストローで、
ちゅぅと飲る。
何気に、鉢植えに目をやり、
ほのかに……、
わぁ、
となる。
芽吹いた、……ようやく。
………………
…………
……
「長かった……、しかし生命の育みとは、すべからく根気の要るものなんだな。うん。起きたら倖子君にも報告です」
瞬刻、魂の双子が降りる。
もう随分と慣れた。
「コンちゃんポップちゃん、おかえり。見に来てくれたんだ」
ふたりは、
僕への柔らかな制止の動作をひとつする。
そして、
神妙に、ふたりは鉢植えに手をかざします。
コンちゃんは身体が視認できるから良いけれど、
透き通るポップちゃんの動きまで、
十分感じられるのは、今でも不思議で、
面白いと思う。
けれども場の雰囲気は、
軽々しい言葉を紡げないものがあります。
僕は、ふたりの言葉を待つ。
静謐なる言辞、想い重ねて放つ子供達、
「言祝ぎ。“桃李不言下自成蹊”生まれ出よ。汝の姓、遣わす言の葉は、「早水」と立て」
途端に、
芽はすくすくと室内にしげる、
瞬く間に、多重弁の花々が咲き、
夏でもないのに、球形の果実が、ひとつ生った。
ふたりからの僕への促し、
すぐにすべき事が伝わってくる。
僕は実を丁寧にもいで、
両手で実を包んだ……、
そうしたら、自然と実は割れて、
中には、驚く程小さな、
女の子の赤ちゃんが居たんです。
それが、
僕ら早水家三人目の子供の、
誕生の瞬間で御座居ました。
誕生時刻、およそ午前三時三十九分の事。
きせつはそうしゅん
ももからうまれたもものひめ
あなたのおなまえなぁんだ?
歌・作詞・作曲 泉谷しげる