第62話~前夜~「逆さまの蝶」
「それがし、そなたの佇まいに惚れましたっ! それがしを、どうか姫君の下に。誓いに、この“鼎”は姫君の為にっ!」
うん?
それがし……いまなにを……?
………………
…………
……
「おいおい……これ程とは……?」
【夢降る森】でいつもの御役目。
怪火現象「狐火」が数百。
【和歌市】の有志の者達と、
いつもすまなそうに見ている「……」と「……」。
二人のその顔が、
それがしに充実を練らせてくれる。
そなたらの力は強力だが、諸刃だからな……。
そなたらに、まわしてたまるものかっ!
それがしも、成長しているのだ。
………………
…………
……
「狐火」自体は強力な妖とはならぬ。
しかし……、
増えていくこと自体が障りを招く。
「牛鬼」など複数障ったら、
もう、それがしだけではお手上げだ。
だからこそ小火で食い止める。
「“鼎”! 覚えたてだが降ろすぞっ」
………………
…………
……
間合いさえとれば、狐火に害は無い。
……気合いを伝え鼎に充分。
それぞれの者達が、
それぞれの能力を行使し始める。
………………
…………
……
「同胞よ。『饕餮』の名のもと、希う」
言の葉降ろし、
「吼えろっ! …………“蒲牢”」
ゆらぎはゆらぎで相殺せん。
鼎は打突の能力もあるが、
本来は、
薙ぎ、祓う、為に在り。
………………
…………
……
……恋……という奴なんだろう……か?
それがしが?
柄にもなく。
「……」も「……」も喜んでくれていた。
「頑張って」……、
そう言ってくれた。
違う……とも言えぬし……心が……揺らぐ。
……それがしは、まだ……こんなに、弱い。
運ばれた命……より、
あらかじめ宿っていた命。
宿命なんだ。
「…… ………」
姫君との出逢いは……。
定まりを、定まりで、終えた事。
それがしに確かに在るもの。
「このお方を護る」
澄み切った空に、
憎しみの火が灯り始めている。
蒼き心に紅き情熱。
白き雲に赤き鮮血。
なぜだか、
とても、
美しいじゃないか。
しかし仕える者として、
こちらも小火で食い止めねばな。
もう一度、
「姫君は、それがしが、護るっ!」
孤独の風が凪いでいく。
心地が良い……。
狐火が教えてくれる。
明日はきっと、“狐の嫁入り”
………………
…………
……
「姫君、そこが地獄の底だとて、この…… ……は、お供させて頂きます」
いつまでも、
逆さまにとぶ、蝶とともに。
それがしはひめぎみをまもる
歌 SNoW 作詞 SNoW 山野英明 作曲 SNoW 進藤安三津 編曲 進藤安三津 藤田謙一