表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
XO!i  作者: 恋刀 皆
63/164

第61話~前夜~「みだれ髪」

 屋台の居酒屋で、

面接は行われようとしている。

私立普通学園、

やはり笑わしてくれる。


………………

…………

……


 腐れ縁の彼、

「…… …です。本日はよろしくお願いいたします」と、

わたし、

「…… ……です。どうぞよろしくお願いいたします」。


面接内容は、


「我々にあなた方の世界を教えてください」


ですって。


 面接官はタブレットの中。

表向きは、

「腹割って話し合いましょう」

と来た。


面接が開始される。


………

……


 ……わたしの、……世界か……。

まず、

「“色即是空空即是色”ではないでしょうか? 全てはくうの演者」


「なるほど。ですがそれではあまりに空虚ではないですか? 我々には塵芥ほどの望みも残す事は許されないのでしょうか? 人生の解がからになってしまう」


「ですが、ぼくらが知る限り、ぼくらはどうあっても、意思や意志をもって空にも虚無にもなれないでしょう。こうやって想いを、文字を連ねて、触れ合い、身を温め合うしかないのですから、その間をともに過ごせれば、それで良いのではないでしょうか?」


 ……そう、……かも……ね?


「はい。どて煮とウーロン茶割」と、屋台の親父さん。


彼はどて煮。

わたしは温かくして飲む。

寒風吹き荒ぶ街中故に。


「……ちゃん? 飲むだけでは身体によくない。これお食べ?」

どてよこす彼。

いつもこう、わたしばっかり、

「はい。有難う………ちゃん。いたただくわ」


「ごちそうさま」と面接官。


「どういう意味ですか?」とわたし達は声を重ねるが、


「特に何も?」と、


いなされる。


 それでも飲酒を咎める雰囲気さえない。

無礼千万はお互いの暗黙の了解か。


「お二人は、勘違いして生きておられる。そういう事ですかな?」


「ええ。それは面接官様も同じ。正答は無い。あるいは、」


わたしが、

間を置いたところを、

詰めよる面接官。


「あるいは?」


「まだまだずっと先にあるのではないでしょうか?」


………………

…………

……


 おそらく……、

わたし達に最後の質問、


「あなた方は知っていますか?」


「知っていますとも」


「なにをあなた方は知っていますか?」


「知っているんです」


「“無知の知”を?」


「極めて全知」


「では全く知らないのではないですか?」


「ええ。でも知っているんです」


「なにを?」


「それはみんなが教えてくれます」


面接官が、

タブレットの中、

優しげに揺れる。


「そうですね、ふふ」


………………

…………

……


 あなたに教えて下さった肩の後ろに優しく手を置く事。

あなたが教えた肩、その手に後ろ優しく導かれる事。



「知っている」に「知っている」を重ねて。



ともに高みへ。



 ふたりの声音、




凛として、








「本日は、御時間どうも有難う御座居ました!!」



あたえたいからあたえたい

歌 美空ひばり 作詞 星野哲郎 作曲 船村徹

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ