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XO!i  作者: 恋刀 皆
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第4話「わらべ唄」

 君が帰って来てくれて、


僕は、コンちゃんからもらった、


人の、涙で咲くお花の鉢植えを、

倖子君に見せる事ができました。


萌芽ほうがはまだありません。


君は言うね?



「よしわかった。心也君引き続き涙をよろしく」



ですよねー。



 え、えぇっと、……ですね……。

そ、そう……何も隠す事はないのですが……。

彼女、倖子君は、涙を流す事が嫌い、あるいは大の苦手。

特に人前では、『鋼鉄の乙女』なのです。


 君が居ない間は別の意味で、

僕の心身が、ちょうどそんな状態にあったけれどね。


……く、暗い話はよそう……、そうだ。


……でも……、僕も今回は、容易にイエスマンになれない。


「……う、ん、わかってたけどさ。僕、できるなら、君とふたりで、協力して咲かせたいんですよね?」


なにか挙動がオカシイ、君。


「ぅわかってるわよ、で、でも泣けないのっ。私だって一緒に咲かせたねって、ひとしおの達成感は得たいのよ? 貴方と」


 僕は彼女の警戒網を慎重にかいくぐり、

両手を、彼女の両肩に置く事に成功した。

僕えくせれんとっ。



「倖子君、挑戦あるのみですっ!」



 実は僕も、

彼女が泣いているところを見た事がない為、

大切な種子の萌芽と、

君が泣いた顔と言うある種特殊な萌えを、

追求したくなりました、



とさ。



 まず手近で、効果の高い映画鑑賞から、推して参ります。

うちはある意味自由業、時間は捻出できます。




米、仏、独と、三本大体六時間鑑賞いたしました。




………………

…………

……




「うん無理無理。自然にね。働いちゃうの私の心理が、「泣くな」ってね。私はね? 涙を流すとしたら、それはもう流し終えてるの。わかるかな?」




 ひとしきり沈思黙考、




「……つまりキーワードは、やはり「自然」、ですか」


わずか姿勢も語調も前のめりになる君。


「そうそう、心也君憶えてるじゃん」


ひっそりと尋ねてみます……、


「最近は、いつ頃隠した涙を流しましたか姫君?」


 危ない橋を丁寧口調でそろそろり、


「あぁ私だんな様に理解されてないんだわっ。なんて哀しい質問なの? これこそ言わぬが花よっ。減点減点大減点っ」


得た教訓、“君子危うきに近寄らず”……。


戦を挑んでわずか七時間足らずで一時停戦。




 ……いや、




「自然」は倖子君と居る為のキーワードです。



ですから、停戦でもなく終戦。



 自然とは、ひとつ。

人為が加わっていない、

あるがままの状態や現象を指すのですから。


 僕をほぐす様に、

やんわりとした君の声音、


「ま、アメリカンだけでなく、フランス映画とドイツ映画をチョイスしてくれた労苦には、素直に感謝するよ。お疲れ、だんな様。ふぅぁーぁ……」




自然にキラリ、君はあくび。

「お涙頂戴っ!」

僕は、くしゃみでもしようか。




 僕が起こしたアクションに、

なんだか君の顔色は難しい。


「い……いや、そういった涙は、お花さんは求めてないと私でもわかるんだけど……」


僕は、取り繕いと本音、半々に、


「でも、涙は涙さ。僕嫌なんだ。このお花を倖子君無しで咲かすのが」


君はなんとなくにやにや。

チェシャ猫さんを連想させる。


「……いやーお姉さん感心しちゃったよ。あの無関心ラヴレス、心也君がねー。私が貴方の心情に、少しでも影響をもたらしてるなら、私は、……ちょっとだけ、誇らしいかな♪」



 彼女は、

ぇへっとお鼻の下に左人差し指をやり、

すりすりさせる。



「僕が、人間っぽくなれてるとしたら、一番は倖子君、君のお陰だよ。有難う」




君は、微笑んで一言。




「心也君は私が居て上げないとダメだからなー♪」




彼女のあくびが伝わせた、

頬までの涙の線が、








とても印象的でした。



 なみだはかざりじゃないわ

てんもうかいかいそにしてもらさず

わたしはわたしをいきる

歌 二階堂和美 作詞 高畑勲、坂口理子 作曲 高畑勲

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