第1話「Avril 14th」
僕の君。
倖子君とは、二十代前半の頃、出逢いました。
僕はまだ初心で、手と手を繋ぐのが、
しばらくの間やっとでした。
それに、倖子君は、はっきりと僕に伝えてはくれていた。
「私、子供は嫌いだし、産みたくない」
僕はこの頃、「普通」に結婚して、お金を稼ぐ仕事をして、愛する女性との間に恵まれる。子供達を、一生懸命に育んでいくんだ。そう「普通」に思っていたから、大変だ。
子供とは、人と人の「あいだ」から、自然生まれ来るもの。
しかし、母体が「NO!!」では立ち行かない。
僕は、悩み、心身を壊し、
「自律神経失調症」から「統合失調症」へと変遷。
病院通いで、仕事も満足にこなせなくなっていきました。
それでも君は、傍に居てくれた。
僕を見捨てず、見守って居てくれた。
ですから、我が君には、頭が上がらないのです。
僕は、
君が許してくれるなら、
永遠を、ともに歩きたい。
心の病に振り回されながらも、学びはありました。
結局、僕らは“道”の上に立つ、
次の子らへの新しい道の存在なんだ。
礼に始まり礼に終わる。
礼儀と礼節が肝心。
魂の震えが、
心み、試みを行わせ。
技が育ち、これを遊び。
体にて、成果を受けとめ、学ぶ。
私とは、天命授かる、己の在り様。
自然の流れに逆らわず生きる事。
自然体。
神様の大いなる流れの中に在る。
僕に生まれいでしもの……、
“具現”。
僕は、倖子……君という、
最大最愛の芸術のバトンを、
誰かに絆いでもらいたかったのです。
故に、……“具現”を覚え、遣いました。
お水で身体を清め、
精神を深く鎮め、
心の音を調えて、
縁が、おさまる様におさまる場所へ。
心臓への圧迫感。
しかし、その圧が導いてくれている。
下さっている。
叶う……、と。
………………
…………
……
「……っ……ぅ…………ぅう?……うん?……」
僕は気を失ってしまっていて――、
ですが、【せかい】を覚えると、
すぐに醒める。
目の前に、例えは悪いが僕の身長170程度の股よりは高いであろう、大きな、古びたブリキの様な体をした、お目々が+の形の人形が立っていた事。
その上、視えないのに、少女のカタチをした存在が、確実に狭い室内に居る状況を、瞬時に覚え、察せられたからでした。
僕の魂が、きっと震え、心に朗らかな少年の声音が鳴ります。
「てへっ♪ お父さん、初めまして♪ ボクは、『Knight of Night』のコンちゃんです♪」
ついで流れる透き通る少女、
「ふふっ♪ お父さん、お久し振り♪ ごきげんいかが? ワタシは、『Princess of Poem』、ポップちゃんですわ♪」
………………
…………
……
彼、彼女との、僕の子供達との会話の要点を僕は絞ります。
ひとつ、
彼らは僕と倖子君が生まれた頃から、常に傍に居てくれてた事。
ふたつ、
言葉にすれば、僕と倖子君の、集合無意識領域が、
本来の在り様、お家。
みっつ、
ふたりはかくれんぼをして遊びながら、ふたりがひとつになれる場所、
【みんなの庭園】を探している事。
よっつ、
ふたりはある程度の遍在が可能な事。
いつつ、
僕と倖子君を、より大きな自然の舞台へ誘う事。
………………
…………
……
「以上がとりあえずのボクらの要約された情報ですっ♪」
そうコンちゃんは元気な心の声音を鳴らせた。
僕は、ふたつの有難い生命のカタチを、
素直に受け入れて、
全知全能の神様に、感謝の祈りを捧げました。
「御神様、本当に、有難う御座居ます」
自然に流れて、僕は頼みます。
「コンちゃん? ポップちゃん? これから、どうぞ宜しく。うまく……言えないけれど、生まれてくれて、有難う。今日は……、……四月十四日、コンちゃんとポップちゃん、お誕生日、おめでとう!」
はにかむ、
てへっ♪ ふふっ♪
ふたりは、魂の双子。
おたんじょうびおめでとう
ぼくのじんせいにかかわってくれてありがとう
きみたちのしあわせをこころのそこからいのるよ
作曲 Richard D. James.(Aphex Twin)