第26話「君と歩きたい」
みまもりの塔の魔王に、
ちいさな夢ができました。
君に出逢うまえには、
みることさえゆるされなかった夢が。
ずっとあきらめつづけた夢が。
人々をまとめるにはルール。
ちつじょがひつようなんです。
魔王はそのために、
きょうふのすべをおぼえていました。
まおうはそんな愛しかしめせませんでした。
塔で生きることをえらぶものには、
きょうふでのしはいを。
魔王をおそれぬ勇気と、
自由をもつ人たちは、
あれち【このよのはて】へとおくりました。
魔王は、魔王のイスが、
とてもきゅうくつでした。
魔王と神様のはじまりのやくそく。
それは人々みんなにとぶちからを、
もってもらうことでした。
【このよのはて】にお花をとりもどすために。
【このよのはて】でくらす人たちには、
魔王のほんとうのすがたでそれをつたえて、
生きていくいしのある人には、
塔のみつぎものを、
くばってまわっていました。
それでも【このよのはて】にお花はさきません。
魔王もまた、むりょくでした。
夢や幸福すら、
しついのなか、
ふみつけにして。
おろかな塔のばんにんの魔王。
そのおやくめ、
【このよのはて】にお花がさく日。
それが魔王の、
神様とのやくそくを、
まっとうする日となっているのです。
そのおやくめのなかで、
ちいさな夢を、
ちいさな魔王は、
ほんとうにちいさくこぼしました。
「……君と……歩きたい」
そして――、
………………
…………
……
ちいさなおんなのこは、
まおうの手をとり、
こう告げたのです。
「これよりはわたしめが、君のおそばにおります」
魔王は、
ずっとかくし、たえつづけてきたしずくを、
君の手に、
おもわずおとしてしまいました。
そうしたら、
ふしぎなきせきが……、
おねえちゃんへ
いつもすげぇかんしゃしてる
あなたのしあわせがえいえんにつづきますように
歌 楠瀬誠志郎 作詞 並河祥太 作曲 楠瀬誠志郎




