第23話「OH MY LITTLE GIRL」
だれかさんには、
ちきゅうじゃないところかも。
まただれかさんには、
がっこうのかたすみでみつけた。
ふるびたいっさつのご本かも。
さらにつづけて、
いとしいいとしいむすめに、
たよりないおとうさんが、
がんばってかいた【せかい】なのかも、
だれにもわかりません。
ですから、
あなたの【せかい】は、
あなたじしんの手でつくってください。
………………
…………
……
ここは、みまもりの塔。
塔というのは、
ながいながいいっぽんのえんぴつを、
たてにまっすぐにたてたようなかたちを、
そうぞうしてください。
人はふしぎと、
そんな塔のなかでせいかつをしているのです。
みんながみんな、
たいせつな命をふるわせて。
みまもりの塔に、魔王あり。
魔王とはこわくてつよい王さまのことです。
人は、人々は魔王をおそれていました。
こわくてつよいものにはみんな、
どうしてもきょうふをいだいてしまうものなのです。
魔王は人々を、
きょうふでしはいしています。
人はみんなじゆうなのに。
鳥さんのようにうたってはばたけるのに。
塔の人々は、それぞれにかんがえて、
塔でせいかつをしていくために、
魔王へのみつぎものをおくることにしました。
ずっとみつぎもの、
きのうもみつぎもの、
あしたもきっとみつぎもの。
そんなきょう。
魔王はけげん、
「この……かおりは……どうした?」
こわくてくらいひくい声
魔王のおおきなおへやには、
ふしぎなお花のかおり。
かおりをたどると、
ささげる手。
お花のもちぬしは、
ちいさなおんなのこでした。
ちいさなおんなのこはいいました。
「まおうさまーいつもおしごとごくろうさま♪」
人々は、
魔王へのれいぎ、
ごあいさつのなっていない、
ちいさなおんなのこに、
きょうふとあわれみ、
さげすみとみはなしのめをやりました。
【このよのはて】にいきたくないために。
魔王は人々を、
きょうふでだまらせてしまいます。
「われに……まかせよ。
このものを……このよのはてへ」
すごくこわくてとってもひくい声。
人々はそれぞれにかんがえても、
だれもちいさなおんなのこをたすけずに、
「かわいそうなこ……」
そんなことばがちいさなおんなのこに、
ぽつんとなげられました。
しかし、
ちいさなおんなのこはまっすぐに、
「それはいちばんだれがかわいそうなの?」
ことばは人々にはとどきませんでした。
………………
…………
……
塔のそとは、
【このよのはて】とよばれていました。
草木もはえない。
大地のめぐみもないじめんを、
ちいさなおんなのこはあるきつかれ、
ちいさなおんなのこはかれ木にもたれます。
ちいさなおんなのこはおなかもへっていました。
それでもちいさなおんなのこはあきらめません。
【このよのはて】においだされるまえに、
やっともちだせたパンのみみをかじります。
「わたしはパンを……命をたべた。だから、がんばってまえにすすむんだ」
そのみみを、
いえ、
ちいさなおんなのこのみみです。
はむはむ
「ひゃっ!?」
おんなのこはふらふらしてから、
しりもちをぺったんことついてしまいました。
まわりをみわたすと、
ちいさなおんなのこのうえに、
さらにちいさなおとこのこがういていました。
「わあ♡」
笑顔はおおきいちいさなおんなのこです。
「あなたはだぁれ? ようせいさん? ……でもね? 知ってるよ?」
ふたりはめをあわせて、
笑顔になります。
「そう……魔王だよ♪」
ちいさなおとこのこのあかるい声。
「やっぱり♪」
ちいさなおんなのこもまけじと声がはずみます。
「どうしてわかったの?」
ちいさな魔王は、
ちいさなおんなのこにたずねます。
ちいさなおんなのこは、
おなかはへっていてもげんきをだして、
「だって、おひさまがあってかげができるの。すごくこわくてくらいだけの人なんて、かわいそうだよ」
魔王はすこしうつむいて、
「やさしいなぁ」といいました。
ちいさなおんなのこは、
えっへんとむねをはり、
「それはあなたをほめてるの?」
ふたつの笑顔が
ふたたびかさなりました。
「とつぜんですが、貴女にふたつききたいことがあります」
まおうにとってはいつものしつもん。
「まってました♪」
ちいさなおんなのこは、
しんじていたことがむくわれて、
なんでもこいとむかえうち。
「や……やるな?」
いっぽんとられた、
みまもりの塔のあるじ。
ここは……、
………………
…………
……
しきりなおしということで、
こほんっ。
「それでは?
うまさん、くじゃくさん、
とらさん、ひつじさんがいて、
ほしのおわるひに、
たすかるためのほしのふねにのっていただく、
たったひとつのおあいてだぁれ?」
………………
…………
……
すべての生命はものがたり。
みんな生きていて、
どれもかなしくあたたかなものがたりです。
あなたはあなたをしんじてください。
だれになにをいわれても、
さいごにあなたをうごかすのは、
きっとあなたなのですから。
おにいちゃんへ
いつもすげぇかんしゃしてる
だからこれからはなるべくおとなしくしとくよ
歌・作詞・作曲 尾崎豊