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XO!i  作者: 恋刀 皆
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第21話「TNT」

 草木も眠る丑三つ時。


あたしは今凛音ちゃんと、


菜楽町の裏通りを歩いている。


………………

…………

……


およそ12時間前、早水家会議。


 凛音ちゃんも同席。



お父さんはあたしに、

一言一句聴かせる様に、

問い掛けてきます。



「では……、捧華は自身の成長の為に、僕らの手を離れて、学園寮へと入りたいんだね? そうする事が捧華の人生に、実りが多いと、よく考えたんだね? 僕は捧華の、青春が謳歌できると信じられる場所なら、迷わずそこへ行きなさいと伝えたい」



 あたしはお父さんもお母さんも裏切りたくない。

持てる限りの真摯さで、

両親の瞳へ、自身を投じる。



 お母さんは、

お父さんと違い始めは優しげな声音、



「私も学園寮行きの話は、反対する気はない。捧華はこの学園に選ばれたとすら感じているから、……ただね?」


ここから声音が凛となる。


「普通学園は男女共学だ。恋をするな、とは言わない。それでも節度は守りなさい。そして、相思相愛なら、その子を家に招きなさい。私の眼鏡に適うか見たいからね。あなたを大切に想えない子なら、私は動くよ? それを承知してくれるなら、捧華、頑張れよ」


 お兄ちゃんとお姉ちゃんは

声音を重ねて、


「ボクとワタシも、

捧華が本当に困った時は、助けに行くからね」


 この時点で、

思っていたよりすんなりと、

あたしの、学園への入寮の目処がたった。




 間合いから、




凛音ちゃんが、



……のぉ早水家よ……

……特に童……

……以前から儂がゆぅておうたろう……

……どうじゃ……陰陽師おんみょうじに……なってくれぬか……



お父さんの表情が、

みるみる曇ってゆく。


「すみません凛音様。お断りいたします」


お父さんが痛いとあたしも痛い。


でも……、


なんで?


「あたしよくわからないのに口出してすみませんが、陰陽師って格好良いので。……凛音ちゃん? そんなに危険な御仕事なのでしょうか?」







と鳴る。



……少なくとも死ぬ覚悟……

……殺される覚悟は持たねばならぬな……



っ!?


論外論外。


「り……凛音ちゃん!? あたしは大反対に回りました。すみません」


お父さんは神妙に、


「捧華? その覚悟は僕はとりあえず在るよ。僕が本当に恐れているのは、君らとはぐれて、……そうだな……、みんなと違う場所に跳ばされてしまって、君らの笑顔が遠い場所に運ばれてしまう可能性を恐れているんだ。人には光が必要なんだよ。だってそうだろう? 君らが照らしてくれなきゃ、僕は僕のカタチさえわからないんだから……」



……よく……わからないので……



「でも……心也君? “義を見てせざるは勇無きなり”だよ? 私は、凛音様のお役に立ちたい」




お母さんの、

その言葉が結局。




………………

…………

……




 そして現在いま




凛音ちゃんの流れはこう、


まず、


重要人物キーパーソンはお父さんとお母さん。


その“久遠之焔くおんのほむら”。


久遠之焔は全方位型の強力な結界。


凛音ちゃん曰く、


……童と娘ならかなりの範囲を結べる……

……しかし……


と、


……久遠之焔は……菜楽町一帯で止めておけ……

……愛は人を最も輝かせるが……闇もまた産む……

……出る杭には……ならんでおくれ……


凛音ちゃんはお父さん達を戒めた。


 ……つ……つまり、


この御仕事の要は久遠之焔。

でもそうするとお父さんとお母さんは、

身動きがとれない。


 お兄ちゃんお姉ちゃんは、


「うん。お父さんお母さん。そして、捧華を見守ってはいるよ。だからといってボクとワタシは、極力手を貸せない様にできているんだ。捧華? 頑張ってね」



そして、あたしに白羽の矢が立った。



 久遠之焔の弱点。

それはその行使される力の強大さにある様子。

簡単に整理すると、

巨大な要塞を作れても、

小さな生き物さん達は、

普通に入ってきちゃうという事。



 そこであたしに御役目。



頼りになる護衛ボディガード、凛音ちゃんと、

菜楽町のふきだまりを巡回して、

小さな昏き子らをあるべき場所へ。


きっと、



さやかな場所へ還って頂くんだ。



 巡回初日。

フルドライヴしながら、

暗闇にも人にも警戒を怠らず歩く。

悪い人が徘徊している可能性だって、

十分に有り得るのですから。



 しかし、凛音ちゃんは、



……その様な心根の者には……

……捧華を……

……どうする事もできぬし……させぬ……



巡回は一時間。

つまりあたしはフルドライヴしていないと

巡回させないという決まり。

最後に、

高架下の暗がりのふきだまりを確認すれば、

初日は、無事に終わりかと思われた……が、




ぞわ




……居る。

感覚が伝わり、

あたしにはわかる。


 あたしは自然と右手で、

日の丸鉢巻に触れる……。


身体は流れて、


左腕を水平に払い、

凛音ちゃんにお願いします。


「凛音ちゃ……」



っ!?



前方から強い光の明滅。



なにっ!? 怖いっ!



命が不安に揺らされる時って、

こんなに心身が生にしがみつこうとするんだ……!


光源はあたしのいる高架下の反対側にあるみたい。

両目が覚え出すと分かってくる。


 人間、長髪、女性……。


今は沈黙は金に思えた。



こちらに歩いてくる人影。



……気が圧されて……、

あたしは強張ってゆく……、


 しかし、







と、


凛音ちゃんが鳴くと、

その女性が深い息を吐き出そうとする感覚。


「はぁ……、今日は新人さんが回るから、嫌な子だったらわちが陰険で陰湿なレクチャーをさせて頂くところじゃったが、とりあえず及第点にしといてあげるち……。申し遅れました。わちは祷、常世とこよの いのりじゃ。あ、あぁ……貴女の事は多少知っとるから、自己紹介は大丈夫じゃち」



 “永之理えいのことわり”から学んだ事、

「先輩には敬意を払いなさい」

背筋を正して、

常世さんへ頭を下げます。


「いいちいいち。早水さん、はよ頭上げて? ごめんな? フラッシュ焚いてしまって。堪忍堪忍じゃ。その代わり、わちのカメラを見せてあげるち。……早水さん、おいで?」


 暗がりでは、

彼女の首に下げている物がなんなのか

よく分かりませんでしたが、

きっとこれは、

「ポラロイドカメラ」という物のはずだ。


「わちはこのカメラで昏い子たちを還すち。

ほら……浮かんできたち」


 写真に、

昏き子らが、写っていて、

彼女は写真に優しく語りかける。


「……辛かったか? お疲れ様じゃ。ごめんな。わちは今は幸せだち。だから、あなたに祈るち。今度あなたが生まれてきた時は、わちより幸せになっても、わち恨まん様にするち。どうかあなたに、新たな仕合わせを」




合掌




 のちに、

常世さんは、

流れる所作で銀のジッポーライターを取り出し、

写真に火をつけ、


昏き子らを還した。


銀のジッポーの刻印は、

亀さんの甲羅の様に見える。

お父さんのジッポーライターは、

確か金でロボットさんが刻まれていたな。


彼女の眼は真摯にあたしを射抜く、



「これから、わちらは共に歩む事になるち。わちとなかよぉしてくれんなら、この言葉は、大事にして欲しい。“一寸の虫にも五分の魂”」



 あたしが力強く頷くと、

彼女は手を差し伸べてくれた。


そして……、あたしは迷わず握った、



途端――、



お月様目掛けて、




一本指をビシィィィッ!




「今宵の月も星も、わちへの最高のスポットまるライトじゃ! わちのカメラは衛星中継からパンツアニメまで視野に入れておるち! わちをたばかるのは難儀じゃぞ。青少年のみんな、健やかに育てっ! うっふん♥」



彼女はペロッと舌を出して、ぱっ★



 そして……、

何処かカメラ目線なふうに、

夜空を見上げています。



 あたしは繋いだ手を、

内心離したくても、



心までの何かの導火線が、



チリ点いてしまい……、



心慌意乱っ!!








ドッカ~んっ!!!!



 みなみはきたにであう

みんないきている

わたしたちはひとりじゃない

Music Tortoise

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