第17話「花咲く乙女」
やっとお許しが出ました。
お父さんお母さんから。
正確には、お兄ちゃんとお姉ちゃんから伝わった。
あたしの因果が、早水家の血に定着した事が。
お父さんは言いました。
「今までは、捧華の心身をみながら、他所様と折り合いをつけてやってきた。でも捧華? もうおまえにかけた、鳥籠のひとつを外せる時が来た。捧華? 存分に舞い、踊り、謳え。せかいはみんなのもんだ。だからこそ、捧華のものでもある。捧華自身の信じる神仏におまえのフルドライヴを、全身全霊で捧げてください」
お父さんの音声、
正にその時、
あたしの心は駆けた!
何もしないなんてできない程に、
全速力でっ!
お母さんに頼んで
創作用の白布を頂き。
自身の頭周りを測ってから、
大体長めに晒しを切り、
全体にしっかりとアイロン掛け。
適当に紅い布用マーカーで丸印をしてから、
少し時間を置いて、
両端を少し折りさらにアイロン。
そこから二つ折りにしてまたアイロン。
二つ折りの合わせを中に入るようにして
三つ折りから最後のアイロン掛けをします。
そうして、
あたしは、
日の本を、額に掲げる。
この日の丸鉢巻が、
これからのあたしの生きる証。
深く息を吸い込んで、申し上げ奉り候っ!
つなぎ、
………………
…………
……
あたしは、花も恥じらう乙女だからして、
お淑やかに、自己紹介です。
氏名 早水 捧華。
好きな事 お父さんの御本を読む事。
嫌いな事 お父さんとお母さんの視線会話。
好きな食べ物 主に瑞々しいお野菜をもそもそ。
嫌いな食べ物 御馳走様が素直に言えない御料理。
長所 目指せ御天道様。
短所 まだまだ気が短いらしい……。
趣味 大切な、凛とした言の葉の震えを憶える事。
特技 フルドライヴ。
ふー、あとはおいおい。
あたしの家族の人となりについて。
心也お父さん。
頭は丸坊主。伸びたらまた刈る。
主な服装は、ロングガウンや外套を羽織っています。
それ社会に生きる人としてどうなの?
って聞きましたら、
「まぁ、真っ当な人間じゃありませんよ」
それが伝われば良し。
……らしい……です。
あたしには優しいお父さんです。
次に倖子お母さん。
あたしと同じくらい短髪。
でも、黒髪のあたしと違って赤茶色に染めています。
身長は成人女性としては低いと思います。
お母さんの身長の話しは、家族内で禁忌のひとつです。
特筆は、とても純粋で感受性の高い女性。
ですが、お父さんの事に関しては、何故か腹黒いです。
あたしに対しては、優しさより、厳しさが目立ちますが、
大体それが何故か解ると、やっぱり優しいお母さんです。
いつも元気なコンお兄ちゃん。
どうみてもブリキのでっかいお人形さんなのですが、
その命の輝き、
清浄なるものの如し。
銀河規模でマクロミクロな御仕事をされているとの事。
「Knight of Night」と「昏の忘却」から、
コンの体在りとの事です。
いつも格好良いポップお姉ちゃん。
どうみてもその空間は透けているのですが、
居る……という感覚が、
お父さんやお母さん、
コンお兄ちゃんすら超えて在るのです。
御仕事の合間のかくれんぼは、
いつもコンお兄ちゃんを凌駕しているらしい。
「Princess of Poem」と「星の御記し」が、
ポップお姉ちゃんの在り様。
そんな五人の家族です♪
そして、
お父さんは、言ってくれたんです。
「今日からは、捧華が座頭だ」って。
…………………
…………
……
青空いっぱいに、
全身を広げる様に、
捧げる様に、
心に、
降りて言の葉、
胸にゴンドラしっかと仕舞い、
熱き血潮を滾らせる。
例え明日で果てようとも、
あたしは今を生きて謳う!
あたしは捧華、
早水 捧華ですっ!
どうかよしなに、
いざ尋常に、
参りますっ!!!!
かたりべこうたい
いまぼくのこころのなか
きみはさきはじめた
歌 帝国歌劇団 作詞 広井王子 作曲・編曲 田中公平