第155話~いつもあなたのお陰~「You Are My Religion」
これはごくありふれた男女の、
まだまだ新婚夫婦生活の中での、
とある一日の朝の食卓での一コマ。
「それでは倖子君、
いつも美味しいお食事、有難う御座居ます。
頂きます!」
「はい、心也君、今日もよく言えました。私も頂きます」
………………
…………
……
「で? 心也君。進んでるの? 創作?」
「うん、少しずつね。
今はようやく風さんと理さんが万華鏡で再会して、
風さんの住む炎家に泊まって、
翌日の白夜の内に、空蝉さんがレンタカーで合流。
風さんと理さんが身支度を済ませたら、
空蝉さんのレンタカーで、
今後の皆の行き先への話し合いの為に、
今の僕らみたいに朝食を含めて、
カフェジーニョってお店に向かう所ですよ?」
「あのさ心也君?
空蝉さんはともかく、他のふたりは未成年なんでしょう?
「さん」付けにはやや抵抗感あるんだけど?」
「はは、この万華鏡惑星では、
成人と認められるのが僕らの地球より、
二十年以上遅いんですよ。
ここら辺は、また編集しますけどね。
ですから、風さんも理さんも、
このお話の時点では、倖子君や僕よりも年齢としては上なんです」
「あ、そういう事になってるんだ……」
「そう、それに僕らと違って、
この惑星には「自然科学融合装置」という、
身体を循環する、とても優れた装置があるから、
街の人々の平均寿命は、
僕らの時代の地球より、三倍以上も長いんですよ」
「それは良いわねぇ……、
私ももっと時間が欲しいわ。
……でも、そうなると、
未成年の……少年犯罪なんかが深刻化しちゃってるんじゃないの?」
「ヴィレスでは、成人していない人達に対する法整備も、
僕らの日本よりはずっと厳しいよ?
高度な管理システム、
特権階級にあたる「Mother」と「Daddy」が、
J-D-Vを通じて、万華鏡惑星全てに渡り、
その眼を常に光らせています。
犯罪そのものを未然に防ぐ事がもちろん主目的ですが、
J-D-Vを、
ただの便利な空間としてしか認識していない未成年には、
手痛いしっぺ返しが待ち構えています。
もちろん「Mother」にしろ「Daddy」にしろ、
全知全能ではないですが」
「うわぁ……、なんだか息苦しい話ね。
私そんな街に住みたくないわ……」
「現代日本の進む先を、
僕なりに未来予想してみた感じですね。
今の日本だって、
真綿で首を絞めつけられてる様なものですし……」
「小さな親切大きなお世話、かしら」
「まぁ、世間一般の、
ご自分を「まとも」だと思っていらっしゃるお方々に、
お任せする話ですね……。
僕なんかは所詮マイノリティですから」
「そういう発言は好きくない。
でも……確かに心也君の今の生き方はマイノリティでしょうね。
……それにしても話し戻るけれど、
今打ち込んでいるお話のあらすじからの推察では、
転句と結句がインパクト弱すぎやしないかしら?」
「う~ん、転句では風さんが理さんに宛てて、
レンタカーの中で薔薇を弾いて、
理さんの為に作った歌を、
歌う事にしようと思っているんですが……」
「まぁ心也君の創作に、
音楽はとても重要なものだから……、そうなるか。
とはいえ前から思ってたけど、
なんで心也君は「起承転結」にこだわっているの?
現代なら「序破急」や「三幕構成」が主流なんじゃない?」
「別になにもこだわりはないですよ?
強いて言えば僕の教育過程で、一番慣れ親しんだ言葉ってだけです。
ただ僕は、「論理の飛躍」を好んで使いますから、
転句が好きだからかもしれません。
それに僕は、僕の事を「信じる者」を増やして、
「儲け」る為の商売をしている訳ではありません。
単に倖子君への恋文なのに、お金を儲ける事を考えていたら、
それこそ神仏からの天罰にあたります」
「またこの男、
聞いてるこっちが恥ずかしくなる様な事サラッと言うわねぇ……」
「倖子君? それはもちろんです。なぜなら、」
「……なぜなら、……なによ?」
「風さんが理さんを想う気持ちに負けないくらい、
倖子君は、僕の信仰そのものだからです」
「はいはい、心也君にゃいつもご馳走様だよ」
しあわせはじぶんでみつけるもの
ぼくのかたわらにはめがみがいてくれる
きみはぼくのしゅうきょうです
Song Firehouse Lyrics/Music C.J.Snare/B.Leverty