第144話~おめでとうとありがとう~「Song for My Father」
實お父さんへ、
天国や地獄がもしあるなら、
天国にいてほしいです。
それともまだまだ僕が心配で、成仏できていないかしら。
僕は、お天道様の照らす道を、今だに踏み外し気味ですから。
それでも、いずれにせよ、
“一人殺せば殺人者だが、何百万人殺せば征服者になれる、全滅させれば神だ”
と思います。
僕は神様の存在を信じているけれど、実際にお会いした事はありません。
ですから、とは変かもしれませんが、神様の本当の御心は分かりません。
まだこの世の中は、宗教対立も御座居ますし……。
いっそひとつだけ、神様は何も禁止などされていないとも思います。
例え限られた中の、『絶対の正解』が存在しても、
千年後万年後もそれが正解だなんて、誰も保証できないでしょう。
愛の対義語は無関心かもしれませんが、
僕は無関心をほんの少しだけ擁護します。
関わる心をごくわずかにし、覚悟する事で、
より、あるがままに生きられると信じているからです。
人生に、意味が有ろうと無かろうと、
そんな事は議論の価値もない、自分で自由に決めればいい。
孤独な殺人者か、何百万人を従える征服者か、孤高の神かを。
僕の一番大きな夢は、この創作を納得のゆく形で、完結させる事です。
それが僕の君への仕事です。
お父さんは、満足して逝けましたか?
僕はお父さんを、もっと理解したかったです。
それでも、僕は立派な父親に育ててもらえたと、
現在は想っています。
その貴方の姓が、きっともう絶えてしまう事は、
哀しい現実です。
そして、お父さんが何れ程僕に愛想を尽かしていても、
僕は、お父さんが好きです。
ですから、
心を込めて、
おめでとうとありがとう
産まれてくれて、育ててくれて。
歌謡曲も良いけど、ジャズも良いものです。
僕の――、
僕達、姉兄の――、
偉大な意志と誇りある、父親へ。
しばしばめいわくをかけてすみません
いずれまたであってください
とうさん おしあわせに
Music Horace Silver