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XO!i  作者: 恋刀 皆
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第140話~空気の“幻装者”~「you made me realise」

「よし、それじゃー今日最後の授業な?」


 ずいぶん濃密な時間を過ごした気がして、

先生ちゃんのその言葉に、

ついバリアジャケット内蔵の、

過去ここの時刻に合わせた時計を確認してしまったけれど、

思っていたよりも、それ程の時間は経っていなかった。


「おまえ達の幻装者の御名から、

オイラなりにその力への大体の推測はするが、

肝心のおまえ達が、

幻装者をまだ覚醒リアライズさせてねーから、

今日はその覚醒まで行えたら上首尾だ」


 覚醒リアライズ

……空気ドリットには、

まだこの先があるのか……?

それが僕の考えている事まで行えるとしたら……?

そんな力が、果たして人間に必要なのだろうか……と、

僕は、自分自身に恐れを抱いてしまう。


おんなのこちゃんの幻装者は、

同一化が上手くいってねーのか。それとも条件が必要なのか。

オイラにもわかんねーから、先にふぅちんの方から、覚醒段階を上げる」


 いつまでたっても「おんなのこちゃん」と、

先生ちゃんが呼ぶからか、

りぃからはもう非常に辟易とした空気を感じていた。


「じゃー風ちん、オイラは不死身だ。どんな技を使ってもいーぞ」


………………

…………

……


 先生ちゃんから、近接戦闘にはなりえない間合いを取り、

先ず護身に最も有効と現時点で判断する能力ちからを、行使してみる事にする。

今までの先生ちゃんとのふれあいで、注意を促すのは、逆に失礼かと思い、

「NSFD」を立ち上げ、空気ドリットに要請した。


……対象の周りから空気を取り除いて……


 その直後に先生ちゃんは少しだけ身動ぎすると、

霧散して真空に近付けた場所から移動していた。

それは十分予想できていたし、

その要請が受理してもらえるという事実だけで、

ぼくには十分な実入りだ。


「うん。まー風ちんもそーだろうけど、

オイラにも想定内だったよ。

外敵にも、最悪気絶させれば空気を戻してやればいーしな。

だけんど、空気を失って悶え苦しむ人間を見て、

風ちんの心が耐えられるかは、かなり心配だな。

くれぐれも逆手に取らせるなよ?」


 優位に立っても油断大敵、そう覚えて、

理に交代を促そうとした――、


「待て」


その時、先生ちゃんの制止の一声が掛かる。


「風ちん、オイラの言う覚醒は、

一度最大限まで幻装者の力を借りて、

おまえも幻装者も、もう一段階上のステージまで上げる事だ。

おまえは賢い、本当におまえが試しておきたい技が、まだあるだろう?」


 まるで見透かされている感覚。

……でも、何故先生ちゃんにはそんな事まで分かってしまうのだろう?


「おまえがもしもまだその幻装者ちからに気付いていないか、

もしくは、オイラを人として扱ってくれているからこそなら、

ひとつヒントを見せてやる」


 そう言って間もなく、先生ちゃんの身体から煙が……、

いや――蒸気が発生し、

瞬く間に先生ちゃんの身体は透過してゆき、


大きな青い炎そのものになる。


その状態が十秒程続いて、また元の先生ちゃんの身体に戻った。


「まーこんなとこだ。温度を上げ過ぎちまうと、

この豊かな森に迷惑だからな、物質量を変えておいた。

じゃー風ちん、オイラにおまえの答えをくれ」


「…………、プラズマ……ですね?」


「おう。正解。幻装者パートナーとオイラちゃんを信じて、試しておきな?」


「どうしてですか!? 先生ちゃんはともかくかもしれませんが、

こんな危ない技、覚える必要なんてありませんよ……?」


「うんまーその言葉で気付いてるって事は分かったよ。

だけんどオイラからしたら、その危険を放置させたまま、

星間を旅して行かす事の方がもっと恐ろしい。

だから、試せる相手がいる内に、早めに覚えておいてほしい。

その技が何れ程危険で、また有用なのかを、

そこまで幻装者を使いこなせば、また次のステージへ行けるはずだよ」


………………

…………

……


 本当に行えるかどうかは、まだ分からない。

だけど、先生ちゃんの様な存在と、空気かのじょを信じて、

僕も覚悟を決めた。


 先生ちゃんと束の間話し合い、

一番威力を抑えられそうな近接での打撃を選んだ。


 思わず力が抜けてしまいそうな、

先生ちゃんのお面も、今は間近にある。


 僕は先ず呼吸を意識し空気かのじょ空気ちからを送る。

その時わずかに、「……貴方ならできる……」、

そんな励ましの言葉をもらえた気がした。


よしっ!


……右腕……“急速硬化”……


 以前、絶望学校デスペラードで彩雪と月花草には、

極めて豊富な鉄分も含まれている事を習った。

「NSFD」にて人の体内中にある内部磁界と貯蔵鉄を運用、

増幅させて、肉体表面を覆うのが“急速硬化”。


 今、さらに応用させようとしているのが大気中にあるプラズマを、

風に巡っている磁界と空気ドリットとの協力で閉じ込めて、絞り込み撃ち込む、


それが、現時点で思いつく限りの――、




……全力打撃っ!!……




 打ち込んで直ぐ様、耳をつんざく音がして、

眩い閃光の中先生ちゃんの身体は、

信じられないくらいキレイに蒸発してしまい、

支えを失って、風の身体はつんのめる――、

いや! それよりも先生ちゃんは無事なのか!?

しかし、何もない様に見える空間から平板な声音が、


「そんなに慌てたみっともねー顔すんなよ?

物質がどんな状態になろうとも、生きていけんのがオイラなんよ」


 全く……なんて人なんだろう……。

あっという間に、気体から固体へ。


「風ちんの瞳を覗いていたけんど、

力に溺れる狂気はなかった。安心したよ」


「はい。この技が極力使用されない人生を望んでいます」


またひとつ先生ちゃんとの信頼関係を構築していた矢先、

体内の空気ドリットから知らせが入る。








「……貴方は空気を覚醒させた……」



 げんじつにいるとねむたくなる

しかし

ねむっているときこそげんじつなのかも

Song My Bloody Valentine

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