第128話~白いひと~「13 Jours en France~白い恋人たち~」
「倖子君、これヴァレンタインのお返しです」
「ぅん、有り難う。開けていい?」
「どうぞ」
よいそもそもそ
そいそてきぱき
「おー今年もマカロンか。いやーどーもどーも」
「僕はぶきっちょですから、お店のものですが……」
「いーよいーよ。軽過ぎず重過ぎず。
こういうのは気持ちが大事ですよ」
「優しい奥様の労わり、心に染み入ります」
「この音楽も何かホワイトデイと関係して流してあるの?」
「いえ……、直接にはないのですが、
マカロン……フランス……ホワイトデイ……、
そうやって連想していたら、
いつの間にか流していました」
「とても素敵な曲だけれど、「私達」がって意識すると、
ほんのちょっと照れ臭い曲ね……?」
「そ……そうですね。
さすがフランスを思わせる何か秘められた美が込められた作品です」
「ぅんそう、
ねぇ心也君?
これからも私の事想ってくれる?
三十年後も四十年後も五十年後も?」
「いつも考えている事のひとつですが、
その答えは、「その時」にしか答えが出せません。
ですが、そうだといいなって想っていますし……、
僕らが変わらず求め合っていれば、
その時その時のより良い答えが、
僕らを待ってくれているでしょう」
「そう……かもね……私、……重くない?」
「君の重さを感じていない僕は、生きていないんだよ」
「ぅん? ……どうゆう事?」
「僕には君しかいないけれど、
君だけしかいないせかいは、
まず有り得ないという事…………哀しく、有難くもね……」
「……私を独り占めしたいって事?
それとも心也君が何処かで浮気してるって事?」
「そのどちらも最終的な答えは、君になる」
「――くっ、うまくまとめて逃げたわね?
結論までの公式を要求する」
「簡単な論理積というものですね……。
命題1、倖子君を独り占めし続けられる能力を獲得すれば、
僕は常に君で満たされて倖せになれるが、
その能力自体がいまだない。
命題2、僕が他の女性にうつつを抜かし、
君を想う事すらできなくなれば、
僕は君を失い、何もなくなる。
つまり僕はいつも君の傍に居る事ができない。
なおかつ、浮気をすれば、
自身が破滅する程の強力な存在が君になる訳だよ。
与えられた複数の命題のいずれもが例外なく真。
ここから導き出されるのは、「僕には君しかいない」って事」
「ぁ…………あのー、な……なんか……ごめん」
「君は今まで、ずっと僕が生きる為に必要なものをくれた。
謝るなんて可笑しいよ?」
「そ……そかな?」
「そうだよ」
「……あーぁ、丸め込まれちゃった……♪」
「ぁ、の倖子君?」
「……知ってるけど、何? 言えば?」
「愛しています」
「……そう、勝手にすれば?」
「はい、勝手にします」
「私の永久……、」
「僕の永遠……、」
さぁ、どちらがどちらやら。
せかいでいちばんうつくしいむすめも
じぶんのもっているものしかあたえられない
ひとりよりもふたりでかんがえたほうがよい
Music Francis Lai