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XO!i  作者: 恋刀 皆
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第8話「2+2=5」

 因果律の固定化。


そのものをどうやって行い、


コンちゃんとポップちゃんへ、

どれほどの労苦がかかるものなのか。


 人間でいて、

かつ個を保つのが精一杯の僕には、

全く判然としない事です。


 今わかっている事、

とりかからねばならない事へと、

思考をシフトさせなくちゃ。


 一番不安を抱えているのは、

魂の双子でも、僕ら夫婦でもない。

末の娘、捧華です。


 小中の義務教育をうけられないなら、

代わりは僕ら夫婦がやるしかない。


まずは算数と数学。

選択の理由は、

僕は苦手なものを先に、

美味しいものは最後にの、性質たちなものでして。



 しかし、不安は杞憂。

彼女は、真綿に水でした。



 小学校の算数。

六年間、六年生までの、

式と計算。

量と測定。

図形。

数量関係、他様々を、始めて一ヶ月足らずで、

修了させてしまう程。


 現在は中学数学。

このままだと、来年の春までの中学数学修了。

数学に関しては、

高校進学も夢ではないでしょう。


 このままだと、僕は、

真綿で首を絞めつけられて行く事になるでしょう……。

こちらが、着いて行くのがやっとなんです……。


 それでも、人生の先輩として、

教えたい事はまだ残っていました。


………………

…………

……


 僕はもちかけます、


「捧華? 算数の基本へ戻ろう。はい、1+1=? 2+1=? 2+2=? できるかい?」


「あいっ。簡単です。おとぅさん? ささぇをバカにしてはいけませんよ?」


 彼女は弁もたつ様になってきました。

なにやら親心と呼ばれるものも、

潤う気が致します。


「2、3、4なのでっ。ふふん♪」


笑い声が倖子君に似てきた。



……だが今は心を鬼にする。



「第一問正解。第二問正解。……残念捧華? 第三問、不正解。2+2=5が正解なんだ」


 捧華は狼狽え、のちに、憤慨ふんがい


「え!? おとぅさん? なに言ってるので!? 2+2=……、っ!?」


彼女は気付く。

僕がゆったりと威圧している事に。

声音を低くし、


「ねぇ捧華? 2+2=5、だよね?」


彼女は沈黙し、少し僕に怯えをみせる。

それでも僕は構わず、


「言ってごらん。2+2=5、だと」


彼女は明らかな動揺、

僕をためつすがめつし……、


「にたす……、には……、」


彼女は怯えながら式を口にし、

自分を殺して、

最後の数字を……、


………………

…………

……


言い終える前に……、



「……おっ、おとぅさん!? ささぇは言いたくないのでっ。だって2+2=4が、絶対に正解なのでっ、おとぅさんに嫌われても、ささぇは自分の正しさを通すのでっ」



善しっ。



 ゆっくり威圧をほどき、

僕は空気を変えていく様に努める。


「うん、それでいい。2+2=4だ。捧華が正しい。僕が間違っていた。すまん」


「っ!? ぉ……おとぅさん? なにがしたかったので?」


捧華はあっけにとられながらそう口にする。

そうだね……、

締めて緩めて緩めて締める事……かな。


「……捧華は円周率はどこまで言える?」


まだわずかにおっかなびっくりな愛娘。


「え? ……ぇと、π=3.14なので……」


「そう、僕にとって円周率とは、わかりやすい人生の縮図です。ぁ、縮図は難しいか。円周率は人生そのものと言うよ。あくまでも、僕の人生ではね?」


 頼りない父親にも傾聴してくれる優しい娘。

有難う。


「人生は果てしない物語と僕は考えてる。数学で例えると、円周率の小数点以下をひたすら数え続ける様なものだ。それでも有限にも在る僕らは、どこかで線を引いて、割り切らなければならないんです。だから、π=3.14でとりあえず切り捨てる。……捧華にはまだわからない事だけれど、2+2=5がまかり通る場所は在る。それはディストピアだ。逆はユートピア。地獄と天国、そう考えてくれて、今は良いです。これから捧華の出て行く社会には、それらがゴロゴロと横たわっている」


「そっ、そんなっ!? ささぇは絶対正しい解をだして、生きてみせるのでっ!」


彼女はふたたび気骨をみせる。


でも……、


それが悲しくて哀しい、



「捧華? 「絶対」なんて、容易に言っては良くないよ? 難しいことわざだけれど、“人間は万事塞翁が馬”なのです。2+2=5が、先々の為に役に立つ事だって、可能性は、決してゼロにはならないはずだから。……社会で生きていく為に、固定化された数字と呼ばれる概念があるだけなんです」


愛娘の反応は迅速、


「それなら数学なんて要らないので。算数の知識があれば生きていけるので」


伝えたい事は、あともう少しだけ。


「捧華? 僕は数学は苦手です。でもね? きっと全ての学問は、大きな絶望を、より大きな希望に、くるっとまわす為にある。ディストピア2+2=5が最上なら、こう公式を作ってごらん。2+2=5は地獄。2+2=4は現世ここ。2+2=3は天国」


「天国が地獄になってしまったので!? こんな公式、ささぇはぜった……、……ささぇは認めないので」


「絶対」を飲み込んでくれて有難う。


「一般的な考え方なら、多分大抵の人は天国に行きたくて、地獄は嫌だろうね?しかし、僕はちょっと考えが違うかも知れません」


 ハテナ顔な捧華、

うん素敵に可愛い少女だ。

僕に似てくれなくて良かった。


「単純に地獄は、痛みや苦しみを味わう場所。また単純に天国とはそれらが無く。喜びで満たされた平安な場所。僕はね? 天国を信じられない。なぜなら、痛みや苦しみを乗り越えた先の、喜びを知っているからです。だから今は異常な以上の公式を僕は受け入れちゃうんだ。理想郷より地獄郷ってね」


「さ……ささぇは天国行きたいので。で、……でもおとぅさんが地獄の方が良いよって言うなら、迷っても、おとぅさんと居たいので」


多情多感な愛娘はそう言う。


もうこんなに有難い親孝行をしてくれたね?


「本当に、有難う捧華。もし良かったら僕と君達で、地獄巡りと洒落込もう。そうしてね? 地獄が絶望しかなくて、天国には希望があるって解ったら、公式をまわせば良いだけなんです」


 複雑多岐な面持ちから、

しばしの思惟をする捧華、


そして、



ニコぱっ☆



と表情が明るく際立つ。


そうくるっとね?


ことわりを証明へと導く為に、



一度、



理に背いてみる事も、


時には有益なので、








御座居ます。



2+2=3

2+2=4

2+2=5 あなたにとってつごうのいいほうでね

Lyrics/Music Radiohead

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