This Means War!
依頼用紙を片手に、ウェイドはメルレアンのダウンタウンで、ルリ=ルンベックを捜しまわっていた。
(ルンベックってどっかで聞いたことがあるんだよな)
ウェイドは何とかして、ルンベック姓の人間を思い出そうとするも、思い浮かぶことはなかった。結局、喉の奥に何かが詰まったような、もどかしい不快感が残っただけであった。
気を取り直して、ダウンタウンを行きかう子供たちを見ていくが、そこにルリ=ルンベックの姿はない。赤茶色の服、違う。黄銅色、しかし男だ。薄い青色の布着、違う。
ウェイドは、並行して聞き込み調査も行うが、だれもそれに答えようとはしない。みんな素通りだ。すると、ちょうどダウンタウンの公園の噴水の前で、3人の――少し失礼だが――まさしく、「おばちゃん」といった感じの女性たちが井戸端会議をしていた。ウェイドは、彼女らならと思い、その噴水に近づく。
「あの、ちょっといいですか?」
「はいはい!どうしたの?」
おばちゃん達は、見た目と同じく大きな声でウェイドを迎え入れた。ウェイドは、持っていた依頼用紙を見せて事情を説明する。
「この用紙に書いてあるような子を、この辺で見ませんでしたか?」
おばちゃん達は互いに顔を見合わせる。すると、そのうちの一人が、今朝、見たことあると言い出した。
「本当ですか?!」
「ほんとよ、ほんとー。いや、今朝ね。住宅地区の周りを散歩してたのよー。そしたらね、こんな小さな女の子とガラの悪そうな奴らが一緒に歩いているのを見たわけ。様子からして、身内で散歩って感じじゃなかったねー」
そのおばちゃんの発言に、残りの二人がえー!と声を上げる。
「ねえ、ソルベさん。それ誘拐ってやつじゃないの?」
「かもしれないねー。おおこわっ」
ソルベと言われたおばちゃんは、口をへの字に曲げて身震いした。
「それで、どちらの方向に行ったか、わかりますか?」
「うーん、たぶん方向的には、下層じゃないかしら」
「下層ですね。わかりました、ありがとうございます」
「いいのよいいのよ!がんばってねー!」
ウェイドは、おばちゃん達に頭を下げ、下層へと向かった。南西住宅地区から下層に向かうとなれば、行く先は倉庫街だ。ウェイドは、一度来た道を引き返し、倉庫街へと降りる。
メルレアンの穴の外側にある倉庫街は、メルレアンの輸出入の根幹を担う地区だ。無論そこで働く人も多い。しかし、横領防止で、定期的に配置換えが行われたり、わざと空き倉庫を作ったりしていたり、また、貨物に紛れて入ってくる犯罪者の確保や、魔物の討伐などで、冒険者も出入りしているため、全体的に誰が、どのように働いているかを把握するのは難しい。木を隠すなら森の中。それと同じく、誘拐にはちょうどいい。
そこに降りたウェイドは、かたっぱしから、倉庫街で働いている従業員に話を聞く。基本的には仕事の邪魔だと煙たがられたが、何人かは快く協力してくれた。その人たちの話を聞いていくと、どうやらルリを連れたガラの悪い連中はは、中央東の空き倉庫に入っていったらしい。
ウェイドは、まっしぐらにその倉庫へと向かった。
倉庫横の従業員入り口の扉を開け、中の様子を確認する。すると、倉庫の中から、聞き覚えのある声がした。
「なあ、ウルレル。そろそろいいんじゃねーの?」
「いや、待て、コニランジ。あと一時間だ。」
コニランジと言われた大男は、ウルレルの指示に従って、地面に座る。その二人のほかには、槍を持った男と弓を携えた女がいた。しかし、例の小うるさいグバポカの姿は見当たらない。
そう、すべての窓が閉じられた薄暗く煙くさい空気の中。そこにいたのは、眠らされた小さい女の子と、ゲラゲラと笑うエフェミネートのメンバーだった。
(こいつら……!)
しかし、ここで彼らと戦っても勝てる見込みはない。ウェイドは、あと一時間という言葉を頼りに、一旦その場を離れ騎士団に通報しようとした。しかし、ウェイドが振り返ったとき、そこにはウェイドの首に短剣を這わす、グバポカの姿があった。
「あんたさぁ~? ここで何やってんの」
ウェイドは、とっさにグバポカの手を払いのけ逃げようとするものの、それすら軽くあしらわれ、腕を後ろ手に締め上げられた。その物音を聞いて、ほかのフェミネートのメンバーもウェイドを見つける。
ウェイドは、倉庫の中に押し込まれ、コニランジに後ろから羽交い絞めにされた。ウェイドは、もがき、エフェミネートをののしる。
「お前ら、やって良いことと悪いこともわかんねーのか!」
ウェイドの怒号が、空き倉庫にこだまする。ウルレルは、そんなウェイドを小ばかにするように応えた。
「悪いこと?何言ってんだお前、冒険者が依頼をこなしちゃいけないってのか」
「依頼だぁ?この誘拐のどこが依頼だ!」
「依頼だとも、俺たちは迷子捜索の依頼を遂行してるだけ。その過程で、『偶然』依頼対象が俺たちについてきて、この空き倉庫で眠ってるだけさ」
「マッチポンプか。このくず野郎が……!」
「好きに言えよ。あとな――」
ウルレルは、突如怒りの表情で、ウェイドを殴りつけた。一瞬、視界に稲妻が走り、殴られた左のこめかみが鈍痛を発する。
「テメェらのせいで、俺の剣が壊れちまったんだよ」
「知ったことかよ……お前の自業自得じゃねぇか」
未だ朦朧としているウェイドを、ウルレルはもう一度殴りつけた。ウェイドも負けじと、ウルレルの腹に蹴りを叩きこむ。
「ぐっ……い、いつか復讐してやろうと思ったが、ちょうどいい。おい、お前ら!後の一時間、こいつをリンチだ!いいなッ!」
空き倉庫に、けたたましい奇声が響く。顔を起こしたウェイドの目に飛び込んできたのは、狂気の笑みを浮かべたエフェミネートのメンバーであった。
§
健司は、シズレ達と一緒にルリ=ルンベックの捜索に戻った。彼の担当は、『』自宅周辺の南西住宅地区である。しかし、どこをどう探しても、ルリの姿は見当たらない。
「いないな……」
健司は、人目につかない下層への入り『――』口に向かう。基本的に住民の生活ゴミ収集所となっているため、あまり人が来るようなところではない『――ウェイドは』のだが。
「…………?」
健司は、一瞬思考に交じったノイズのような何かに気づく。今さっき、何か重要なことが『――ウェイドは、エフェ』見えたような気がする。だが、思い返そうと思っても、健司は思い出せな――
『――ウェイドは、エフェミネートによって、惨殺される』
「え?」
今度は、はっきりと、健司の脳内に文字列が現れた。
(ウェイドが……殺される?)
次第に、耳鳴りのようなノイズが健司の脳内で響く。健司の全身から汗が吹き出し、体中に、熱を持った何かが流れるような苦しさを感じる。心臓は、そのノイズが大きくなるにつれ強く高鳴り、そしてついに――
『――南西地区下層、倉庫街、中央東空き倉庫にて、ウェイド=ジョー=ウー。エフェミネートメンバー、ウルレルによって撲殺される』
完璧な形で浮かんだ文字列と共に、左腕の線は紅い光を発した。
「南西地区下層、倉庫街……中央東空き倉庫」
健司は文字列を復唱する。考えるよりも先に、健司は走り出していた。下層へのドアを開け、まるで落ちるように階段を下っていく。階段を降り切り、倉庫街へ出ると、そこには、南西とか書かれたプレートが壁に埋め込まれていた。健司は、必死になって、近くを通りかかった作業員に声をかける。
「おい!中央東の空き倉庫はどこだ!?」
「あ、年上に向かってなんだその口調――」
「――早く!」
健司の勢いに押され、作業員は黙って中央右の方向を指さす。健司は、駆け出しざまに「ありがとう」と言って、再び走り出した。つま先は地面を蹴り、倉庫街の硬いコンクリートの上を、飛ぶように駆け抜ける。次第に、足は熱を帯び、痛みさえ発し始めた。零れ落ちる汗をぬぐい、肺から息を吐き出す。健司は、満身の力を込めて、悲鳴を上げる両足を動かした。目指す空き倉庫はもうすぐだ。
§
ウェイドは、コニランジの足を潰す勢いで踏み抜き、ようやく羽交い絞めを脱した。しかし、もうすでに顔面ははれ上がり、右目はふさがって良く見えない。肩で息をするたびに、殴られて内出血を起こした箇所からの、耐えがたい鈍痛がウェイドを苦しめる。
ウェイドは、立ち上がろうとするも、眩暈を起こして膝をついた。直後、激昂したコニランジが、ウェイドの後頭部を蹴りつける。その衝撃で、ウェイドは硬いコンクリートの床にたたきつけられた。
「おい、くそゴミ。許してほしいか?」
倒れ伏すウェイドの上から、ウルレルの声がする。ウェイドは、再び立ち上がろうと手をつくが、その手はウルレルによって踏みつけられた。あまりの苦痛に、ウェイドの口から声が漏れる。痛みで、心が折れそうになったとき、突然、暴力の手がやんだ。
「そうだな……そうだ!」
ウルレルは、踏みつけた手から足を離すと、ウェイドの髪を引っ張り上げ、無理やり視線を合わせた。今、ウルレルは、胸がすくような気持ちだった。普段自分が背負っている理不尽を、自分より弱いものに強要する。こんなに気分がいいものがあるだろうか。
「お前、月に一度俺たちに金を渡せ。そしたら今日は見逃してやるよ」
ウェイドの前に突き付けられた二択は、あのゴブリン討伐のことを思い起こさせた。惨めに生きるか、それとも死ぬか。強者により強いられる、究極の選択だった。
「なあ、くそゴミ。お前は物分かりがいい方だったよな。じゃあ、次に自分が何をすればいいかなんてわかるだろ?死にたくねえもんなぁ?」
ウルレルの口が歪む。目の前に突き付けられた死への恐怖がウェイドを誘惑する。その場限りの幸せを得るための選択肢が、ウェイドには用意されているのだ。それを選ぶのは、確かに嫌だ。しかし、それでも……
ふと、ウェイドの目尻から一筋の涙が流れた。その涙は、コンクリートの床に落ちて、小さい涙跡を作る。
その涙跡をみた瞬間、ウェイドの心に火が付いた。
「――がたがた……うるせぇんだよ!」
ウェイドは、勝ち誇るウルレルの顔面に唾を吐きつけた。面食らうウルレルをしり目に、ウェイドは気合で、力任せに立ち上がる。
ここで屈したら、自分はゴブリン討伐の時と全く同じになってしまう。ただ死なないためだけに、這いずりまわるのはもう嫌だった。初めてウルレルたちに屈した、あの日の決意が、ウェイドの心の中で再燃した。
「お前らの靴をなめながら生きるのなんざ……死んだってごめんだ」
ウェイドは、震える足に檄を入れ、走る勢いそのままにウルレルを殴りつけた。思いっきり、目を殴られたウルレルは、右目を抑えながら叫ぶ。
「くそゴミがっ。ぶっ殺されてぇのか!」
「命が……惜しいもんかよ!」
ウェイドは、血走った眼の焦点を合わせ、激痛を訴える両手を拳に変えた。決して、死にたいのではない。むしろ、生きるために、戦いを臨むのだ。そのためならば、自分のかけがえのない命さえ、惜しいとは思わなかった。
ゴブリン討伐のあの日から、理由をつけては、死の恐怖から逃れ続けてきたウェイドは、今、それを打ち倒すために、自分の意志で戦う覚悟を決めたのだ。
そして、その覚悟を決めた男が、もう一人――
「――ウルレルッ!」
突然、倉庫のドアが蹴り飛ばされた。蝶番が外れる音と共に、ドア本体も床に倒れる。
そのドアを踏み越えて、尾張健司が倉庫に入ってきた。まさに怒髪天を衝く形相で、エフェミネート達に殴りこんできたのだ。
ドアの近くにいた男は、焦って槍を構えようとするも、その前に健司に接近を許してしまった。槍の柄をつかんだ頃には、その男の鼻頭に健司の拳が叩き込まれていた。男も、健司の服をつかみ頭突きを食らわせるが、健司はひるむことなく、その男の顔面にかみついた。口内に、血と汗のにおいが充満する。いつしか嗅いだ、戦いの臭いだ。健司は、もがく男の頭を抱え、肉の切れる音と共に、口を開ける。男は、自分の顔面に着いた獣のような歯型に触れ、そのまま昏倒した。健司は、血の混じった唾を床に吐き捨て、ウルレルたちを睨み付ける。
ほかのメンバーの4人は、突然の健司の乱入に驚くものの、すぐに我に返り、各々の得物を構える。
だが、健司に気を取られていたその瞬間、ウェイドは弓を持った女の矢を奪い取り、彼女の右肩に突き刺した。そのまま強引に矢を引き抜き、コニランジの腕にも矢を突き立てる。女は悲痛な濁った悲鳴を上げてうずくまり、コニランジもまた涙を流しながら、左腕に刺さった矢の傷を抑えていた。
健司はウェイドのそばに駆け寄り、彼と背中を合わせる。そこから先は、乱闘であった。健司もウェイドも、丸腰のまま、喰らい付く様に、彼らと戦う覚悟を決めた。虚勢などではない、己の意志で、この世界で生き残るために、彼らは拳を握ったのだ。
二人に、真っ先にウルレルに突貫した。ウルレルは、鍛えられた太い腕を振り回し、健司を殴りつける。予想は出来ていたため、何とか腕で受けたものの、その瞬間、左腕に本物の鈍器で殴りつけられたような衝撃が走った。あまりの痛みに、健司は後ずさる。そこへ、間髪入れずにウルレルが健司を蹴りあげようとした。しかし、ウェイドが逆にその隙をついて、横からウルレルを蹴りつける。バランスを崩したウルレルは、そのまま横に転がった。
もっとも、息を整える時間はない。ウルレルが倒れた時にはもうすでに、グバポカが短剣を構えて二人に襲い掛かってきていた。すんでのところで、短剣をかわしたと思ったウェイドだったが、その時、つうっと血が頬を流れるのを感じた。しかし、ウェイドは興奮のあまり痛みを感じることはなく、もう一度ナイフを振り上げたグバポカを、体ごと押す勢いで蹴り飛ばした。グバポカは文字通り吹き飛ばされるものの、ウェイドもその反動を受けて、床に倒れた。
そこに、体勢を立て直したウルレルが拳を振り下ろした。ウェイドは床を転がり、何とか拳をよける。すると、健司が、ウルレルの折れた銀色の剣を盗み取り、レザー鎧のつなぎ目をめがけて突き刺した。ウルレルの鎧からは、ドクドクと赤い血が流れ出る。
「健司!奴らが逃げた!」
気づいたときには、コニランジがグバポカとウルレルを捨てて、ほかのメンバーと一緒にドアの方へと走っていた。二人は、しばらく立ち上がらないであろうウルレルを放って、コニランジを追いかける。
しかし、追いかけようと足に力を入れた健司だったが、不思議と力が入らない。それに気づくと、次第に目の焦点が定まらなくなり、周囲が急にスローモーションになった。ふと見ると、ウェイドが自分をみて、蒼白になっていた。次第に、胸から何かが流れ出る感触を覚える。
目線を下すと、胸にはグバポカの投げた短剣が、深々と突き刺さっていた。健司は、突然視界が真っ暗になり、その場に倒れた。
『――尾張健司は、短剣が心臓に刺さり死亡した』
§
真っ暗になった視界に、元の世界で自殺した、あの時の情景が、さも目の前で起きているかのように浮かんできた。左腕から流れ出した血は、既に血だまりを作って、自宅のフローリングに広がっていた。次第に体温が下がっていく様子が、ありありと感じられる。この冷たさが、自分が今から死ぬのだということを否応なしに示していた。
健司は、顔を上げて長らく見ていなかった自宅の天井を見る。今まで意識してみたこともないのに、いざ帰ってくると懐かしいと思えた。あと、1秒後に自分は死ぬのだろう。時が異常にゆっくりと流れる中、健司は直感した。3月22日。あの時願った、本当の死が、終わりが、健司に与えられようとしていた。そして健司は――
――そして健司は、それを拒んだ。
真っ暗だった視界が元に戻る。それと同時に、健司は心臓に突き刺さった短剣が抜けていくのを目の当たりにした。いや、それだけではない。流れ出た血が、飛び散った血が、逆再生のように自分の心臓へと戻っていく。やがて、完全に抜けきった短剣は、元の軌道と逆の軌道を描いて、グバポカの手の中へと戻った。そして、スローモーションは終わる。
「――ネクロ・テクトリア……!」
健司が、再びその言葉を発した時、左腕の線から鮮血が噴き出した。その鮮血は、左腕を離れ、紅黒い霧を生み出す。
「……え?」
「な、なにが起きてるんだ?」
グバポカもウルレルも、ウェイドですら、目の前の出来事を認識できず戸惑う。だが、死んだはずの尾張健司が生き返ったということ。これだけは、紛れもない事実だ。
「ば、化け物めっ!」
グバポカは、再び短剣を投げようとする。しかし、振り上げようとしたその腕が動くことはなかった。健司の霧が、その短剣をつかんでいたのだ。
「こ、これは、この霧は、この霧は一体何なの!?」
グバポカは叫ぶ。目の前には、霧を従える尾張健司の姿があった。その姿は、禍々しく、おどろおどろしく、そして神々しくもあった。
「さあな、俺にだってよくわからねぇよ。だけどな――」
健司は、霧をまといながら、ゆらりゆらりとグバポカに詰め寄る。
「――少なくとも、俺はまだ戦えるぞ……!」
グバポカが、ただ一つ分かることは、目の前の男に絶対に勝てないということだった。彼女は、短剣を棄てて、ウルレルと一緒に空き倉庫を出ていった。
追いかけたい気持ちもやまやまだが、今の身体の状態では、追いかけることは出来そうにない。気が付くと、健司の周りにあった霧もすっかり消えていた。
戦いは終わった。
健司とウェイドは、力尽きて、床に座り込んだ。ウェイドの顔は腫れ上がり、健司も胸に大きな血痕が残っている。二人は、お互いのボロボロになった姿を見ると、不思議と笑いが込み上げてきた。笑うたびに、体中の傷が鋭く痛む。しかし今は、そんなことを気にするまでもなく、腹の底から笑いあった。自分たちは、勝ったのだから。
「ウェイド……借りを返しに来たぜ」
「ああ……ナイスタイミング。ほんとに死ぬと思ったぜ、命の恩人だよほんと」
ウェイドは、ふらつきながらも立ち上がり、健司に手を伸ばした。
「あと、ナイスファイト」
健司は、にっこりと笑った。この世界に来て、こんなに気持ちよく笑ったのは初めてだった。
「それは、お互いさまだ」
健司もウェイドの手を借りて立ち上がる。そして二人は、固く握手を交わした。




