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テンプレを壊して僕はモブ子に恋をする。  作者: 戸塚 秦
テンプレ世界へようこそ
7/37

西宮薫は敗北する。

僕は家に帰って自室で毎日やっているルーティンを行った。


いわゆる今日起こった事を整理するのだ。

そこで冷静になってわかったこと。




僕は人殺しをした。




あの場面ではクラスの皆に害をもたらしてしまうとはいえ、この手で、偽物の力で人を殺した。


虫をつぶすかのように、握りつぶすかのように、

簡単に殺した。


僕の体は殺し合いの場に臆することなく、自然な動きで、躊躇がまるでなかった。


「ムーさんは守る力と言っていたけど、やっていることは人殺しと変わらないからな…」


僕は心の中で葛藤していた。





気がついたら寝ていた。朝になっていたのだ。

時計を見る。


7時56分


僕が家から学校へ通学するのにかかる時間。


約20分


登校時間。


8時



完全に寝坊した。

妹が起こしに来てくれるはずでは…

そういえば昨日気まずくなったんだった…

今日のうちに仲直りしておくか…


と、急いで支度をして学校へ向かった。

でもどれだけ急いでも遅刻は遅刻なんだから、走る必要があるのかな?っと思ったので、通学中はのんびりしていた。


その時である。曲がり角を曲がろうとしたら誰かとぶつかったのだ。


ここでもテンプレかよ。

しかも随分古いテンプレだなぁ…

けどこいつ…眩しく光っているから…魔法使いか?

そんなにゴロゴロ魔法使いっているものなのか?

しかし、こいつの光り方はなんか…違和感を持つ。


「いやはや。この世界にくると、全ての行動がテンプレ化してしまうのかねぇ。困ったものだ」


僕はとっさに身構えた。

ぶつかった男(美少女ではなく、中年の男だった)はこの世界の住民らしからぬ発言をしたからだ。



「お前は…こっちの人じゃないのか?」


「ん?そういう君も、そうじゃないのかい?西宮薫君」


!?

なんで僕の名前を知っている!?

考えろ僕…

現実世界で会ったことはないし、第一中年の知り合いなんてあんまりいない。いるとすれば、ムーさんだ。

あ、それか師匠繋がりで知っているということもありうる。


「そう驚いて構えるなよ。僕は君のお父さんの知り合いさ。西宮義人のお友達さ」


……お父さんの知り合いだったか…。

僕の父は…いや、この話はしたくないな。


「……あまり父の話はして欲しくないな…」


「おやそうかい?君のお父さんはいっつも君の話ばかりしていたよ。能力持ちじゃなくて良かっただとか。あとはー…」


「やめろ!!!…父の話はするな…」


僕はこの男の言葉を遮るように怒鳴る。


「おおっと失敬失敬。私は少々お喋りなものでね。

気分を害したなら悪いと、謝罪の言葉を述べるしかないけれどもね。あぁ、自己紹介が遅れたよ。私は水蓮寺要。蓮寺家の水蓮に当たるものだ。そして知っているかもしれないが、見えているかもしれないが、私は魔法使いだ。よろしく」


男、水蓮寺要が言う『蓮寺家』というのは魔法使いや、超能力者の中で優秀な能力を持ち、能力者の世界での権力者である。

蓮寺家は、


木蓮寺、水蓮寺、火蓮寺、黒蓮寺、煌蓮寺


の5つで構成されている。

そう、あの師匠、木蓮寺希も蓮寺家の1人なのだ。


「その…水蓮寺家の人が何か僕にようでもあるのか…?」


「…!そうだそうだ!私は君に用があってきたのだ。

寝坊してしまったので、もう登校して会えないかと思っていたが、……君も寝坊かな?」


「うぐ…それは今は関係ない…」


時計をチラ見すると8時17分だった。

完全にアウトだから、もういいかな?っていう気持ちだ。


「君は…エンド・ザ・ワールド・グラディエーターを救おうとしているんだよね?ん?そうだよね?」


「え…どうしてそのことを…!!」


「私は全てを知っているよ。この世界ではね。この世界での攻略本とも呼んでいいぞ」


へんな奴だなぁ…父の知り合いってへんな奴しかいないのか…

でもなんにせよ僕の目的を知っていて、そして僕に言いたいこととはなんだろう。


…どこで僕の目標知ったんだよ…絶対誰かから聞いたな…


「それ、やめた方がいいよ。うん、迷わず、殺した方がいい」


……え?


「な、何言ってんだよ。僕は…いや、コッチの世界での僕は救うって言っていたんだ。しかも元は沼西も普通の奴だったんだろ?だったら戻すこともできるんじゃないのか?」


「勿論、闇堕ちしたあの子を救うこともできるし、元の魔法使いに戻すこともできる。その方法を誰に聞いたんだい?」


それはええっと。


「たしか…いつだかのししょ…木蓮寺家の人から聞きました。闇堕ちした魔法使いを戻す方法を」


その言葉を聞き、水蓮寺要は大きな声で笑った。


「あははははっ!!希ちゃんが教えてくれたの!そりゃあ知ってるはずだ!」


この人、師匠とも繋がっているのか…

てかなんで木蓮寺だけで師匠とわかったんだ?

この人について疑問ばかり生まれる。

本当になんでも知っているんじゃないのか…


「あはははは…そりゃあ元に戻せるよ。きっと今の君なら、超越者の君なら可能だ。大いに可能だ」


「なら…!」


「しかしその後がダメだ」


今度は水蓮寺要が僕の言葉を遮った。

今までの緩んだ顔は変わらないが、目だけは冷たく、僕を睨んでいた。


「君は後先考えず、闇堕ちから救ってグラディエーターを連れ戻すだろうね。そこまでは別に構わない。いや、構うのかな?闇堕ちから救った時点で、この世界に終わりが迎える。要するに、世界を滅ぼす根源を叩くのではなく、救うとまた、根源が産まれるというわけさ。言っている意味が分からないかな?君は分からなくていい事だよ」


「けど、蓮の…お前なら知っているんだろう。蓮の事も」


「あぁ知っているさ。君のお友達、塚本蓮君だろ?」


「そう…あいつの『未来視』にはそんな事は無かったはずだぞ!?」


またケタケタと笑う。


「あははっ。所詮は能力で見えたことだからね。全部は見えていない。全部を見るには、眼球だけじゃ小さすぎるよ」


…こいつは何を言っているかわからない。

けど危険だということは分かった。こいつは危ない。

いずれ敵に回るだろう、と。

ここで消すか?

いや、いくらなんでも住宅が近くにある中で殺し合いはいけないだろう。

…気づかれないように瞬殺すれば?

僕の『狂戦士』と魔法を上手く使えば…できない訳ではない。


「あはははははっ!さすが希ちゃんの弟子?だね!血の気が多いや!私は希ちゃんと違ってね、争いはあんまり好まないんだ。ごめんね、君の相手はしてあげられない」


僕の殺気だけで水蓮寺要は察したらしい。

けど引かせるわけにはいかない。僕の本能が告げている。

こいつはマジでヤバい奴だと。


「ごめんなさいね、水蓮寺要さん。お前にその気が無くても、僕の本能がお前を消せって言っているんだ。警報鳴りまくりだ」


「あははっ!怖い怖い!元の世界での君とは大違いだなぁ…やっぱり力を持っちゃうと人って変わるんだね!いや、その性格はコッチの君の性格かな?」


!!

また無意識にこちらの『俺薫』に引っ張られていた。

落ち着け。

この感情は僕のものだ。



僕は、僕だ。


「違う…僕だ」


「ふーん…じゃあ希ちゃんの弟子だけども、この後希ちゃんにめちゃくちゃ怒られるだろうけど、ちょっとお灸を据えてやろうかな」


そう言うと水蓮寺要は両手を挙げ、魔法を練り始めた。


そして僕は驚いた、というか恐怖した。

出会った時の違和感がハッキリした。

そうか、コイツが危険と感じたのは、危ない奴だと感じたのは、



闇堕ちの魔法も、通常魔法も使えるからだったのだ。




左手には黒い、ドス黒い闇堕ちの魔法。


右手には神々しく、光り輝いている魔法。


「おま…どうして……」


「私はねー、元の世界ではバランスをとる仕事をしていたんだよ。いわば…処刑人みたいなものかな?魔法使いの処刑人、闇堕ち能力者の処刑人。両方持っていた方が便利だろ?闇堕ち処刑人とか雇わなくていいし。ま、そういう訳さ」


「全然説明になってねぇんだ…よッッ!!」


僕が強化された足で間合いを詰める。

この前…なんとか先生に使ったような強化ではない。

ガチで強化した足である。

音速を超える速さ。


「あははっ!速い速い!」


いつの間にか後ろに回っていた水蓮寺要。

音速を超える速さで詰めているのにその後ろをとるなんて…想像を超えていた。


「この…ッ!」


急停止し、後ろにいる水蓮寺要に裏拳を食らわそうとしたが空を切った。

伸びきった僕の腕の上に立っていた。


「あれれ?毎日稽古してたんじゃないの?」


「なんでそんな事まで知ってんだよ!!」


僕のラッシュがいとも簡単にかわされる。

笑いながら。


「私は全てを知ってんだよ。西宮薫君。さてさて、君が言うところの、『次は僕の攻撃でいいですか?ターン制でいったら僕ですもんね』だったっけな?」


「一字一句知ってんな!!!」


今思うと恥ずかしいな、あの時。

アニメの主人公気取りの恥ずかしい中2野郎だったな。

と、自分を辱めている間に、水蓮寺要は闇堕ちの魔法を使ってきた。

左手を地面に向け、魔法を流す。そして地下で形を作り地中へ勢いよく出す。

太い針のような魔法が僕に迫ってくる。


咄嗟に地面を蹴って空中へ飛んだ。

気がつくと上には水蓮寺要がいた。


「知っているかい?闇堕ちの能力って、通常の能力よりも一回りほど上なんだって。だから下手に闇堕ち能力者に手が出せないんだってさ!」


雑学を僕に披露してから、今度は通常魔法をまとった腕で僕を地面に叩きつけた。

強化された足で飛んだのだから、地面から相当な距離だ。

その距離を一瞬にして叩き落とした。


「グホォハ…!!」


落ちる前に全身を強化して、ダメージ軽減を狙ったのだが、意味はなかった。

いや、強化してなかったら瞬殺だっただろう。


僕が瞬殺できるのではなく、相手が瞬殺できるのだった。


上からドス黒く光った、もう1つは光り輝いた僕が教室で作った両手剣を握った水蓮寺要が降りてきた。


「こういう剣を使っていたのかい?うーん…スピード重視に作られているねぇ」


「おまえ…知りすぎだろ…」


「さぁーて。まずはどこからいたぶってやろうかな?脚かな?腕かな?」


自分が恐怖しているのを感じた。

まだ日は浅いのだが、この世界に来てから、主人公になってから恐怖を感じた事はなかった。焦りも、絶望も、なかった。


しかし今のコイツには全て含まれている。

恐怖、焦り、絶望、最強、最恐。


僕は全身で感じた。



あぁ。勝てない。




この体験をするのは2度目だ。

ちなみに1度目は木蓮寺希である。


「なーんちって!!私は君を殺してやろうとか、取って食おうなんて事は思っていないよ。ただただ、古い友人の子にささやかなアドバイスをしてあげに来ただけなんだから」


「ハッ…そうかよ…」


「無理して強がっているところ悪いんだけど、私はもう行くね。こちとら暇じゃないんでね!それじゃまた〜」


「おい待て…!!」


僕が止めようとした時にはもういなかった。

今まで目の前にいたのに。


……というか、強がってるとか言うなよ、恥ずかしい。

いいだろ別に。








この日僕は学校に行かず、家に帰って寝た。

死ぬ思いしてるのに、学校へ行く気になれなかったのだ。


家に着くと、妹は学校に行っているのでいるはずもなく、僕だけだった。

自分で冷蔵庫の中の緑茶をグラスに注ぎ、それを飲みながらリビングのソファに体を委ねた。


「ふぅ〜〜〜…サボるのもたまにはいいもんだな。しっかしアイツはなんだったんだ?…敵では無さそうだったが、危険すぎる存在だよなー…」


勢い良く座ったので緑茶が溢れそうになる。

その緑茶を一気に飲み干し、テーブルに置いた。


「プハァ…戦闘ってこんなに神経使うもんなんだな…アニメとか見てると何気なくやってるけど、相当キツイな。そこは主人公パワーはついてないのか…」


僕はあまり独り言を言うタイプではない。しかし今日については、口にしないといられなかったので、誰もいるはずもないリビングで喋っていた。


なんだよアイツ…

って、ん?

ケータイが…


僕はポケットの中でバイブしているケータイを開いた。


「…智美からの電話だ……」


僕は静かにケータイをポケットに戻した。


……………。

鳴り止まない。

今の時間帯だとー…一限目と二限目の休み時間あたりかな?だからケータイを使えるのか。

休み時間残り9分ちょっとをこの状態にしているわけにもいかないので、しぶしぶ、嫌々、しょうがなく、ケータイをポケットから出し、電話に出た。


「もしも…」


「もしもしーーーー!?!?!?全然出ないから交通事故にでもあったのかと思っちゃったよーー!!!

大丈夫なの!?ちゃんと病院行った!?」


ほらやっぱり。

うるさくなるのは目に見えていた。

なんで僕がケガしてる前提なんだよ。


「あはは…大丈夫だよ。ちょっと気分が悪くなったから家でこもってるんだ。しばらく寝たら治ると思う。うん。誰にも邪魔されず、ケータイのバイブとか、ケータイの着信とか、ケータイのメッセとかに邪魔されずに寝たら治ると思う」


「そっかーー…よかったぁー!じゃあ大丈夫になったか、毎休み時間電話していい!?」


コイツ話聞いてたか?

僕言ったよね?しかも後半の方結構強調して言ったんだが、伝わってないのか?


「ぼ、僕その時多分寝てるから電話でれないかも!」


「うふふっ…やっぱ、かおるんの『僕』って聞き慣れないや」


ハナシヲキイテクダサイ。


「じゃーメッセ送るね!返信できる時に返して!じゃーねー!!」


ブチッ……

一方的に切られた。




地獄だ。




あんな奴と付き合っていた『俺薫』の器がしれない。


僕は戦闘と智美との電話で疲れてしまったので、瞼を閉じると、自然に眠りについた。



……起きる頃には、鬼のようなメッセージ通知がきていた事は言わなくてもわかるであろう。















僕はまた不思議な夢を見た。


あの空間。


魔法の源の痕跡で埋め尽くされたような空間。


今回は扉ではなく、人がいた。


正しく言うと、人の形をした魔法の源。


眩しく輝いている。


僕は話しかけた。今度は声がちゃんと出るようだ。


「ここはなんだ?お前は…人なのか?」


「今のところ全てがシナリオ通りだよ」


「何を訳のわからん事を言っているんだ、僕の質問に答えろ」


「少し、予定が狂う物が入っちゃったけど、物語にアドリブはかかせないしね」


「……お前は…もしかして…」


「おっと。それを知るのはまだ早いね。ここでオサラバしよう」


「おい!!待て!!まさかお前は…!!」


「この世界でシナリオを進めるについて僕がアドバイスをしよう。『運命に逆らう為には、それ相応の代価を必要とする』。覚えておくといいよ」






僕は目が覚めた。

時計は5時を指しており、あれから8時間弱寝ていた事になる。


「ーー…ッまたあの時のような夢を見たな…。そういえば夢にいたアイツ…うーん思い出せない…」


しかしアドバイスだけはしっかりと覚えていた。



運命に逆らう為には、それ相応の代価を必要とする。






それは僕自身が、一番分かっている事だった。


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