亜空の元凶
「この世界は私達異能力使いが頂点へ立つべきだ。…なのにコソコソコソコソコソコソコソコソ……。散々なんだよもう隠れて世間に溶け込むのはよぉ…。この際、派手に暴れて全世界に見せつけてやろうぜ。俺達の存在をよぉ!!!」
照秀の学校を襲った犯人、いや、ここでは集団と言った方が正しい。その集団、オーバーロードは日本にある異能力学校を襲っていった。
オーバーロードは現実世界からある、既存の集団だ。
その主犯である、通称『亜空使い』。
魔法軍からも目をつけられている危険人物だ。
「ここは異能力使いが集まるって言われてる学校だったよなぁ?こんだけハデに暴れりゃ一般人が気づかねぇ訳がねぇ。しかも被害者の生徒や教師共が同じ異能力使いときた。こりゃあタブーもクソもねぇよなぁ!!」
亜空使いは瓦礫の山の上に立って叫んでいた。
その姿を確認した私は、ゆっくりと男のところへ向かった。
が途中で体を掴まれ止められた。
「由伸殿、ここは落ち着いて、冷静に対処しようではありませんか」
「…誰だ貴様は」
「えっとー…魔法軍からきたー…近藤勝です。あっ!義人の友達って言った方が分かりやすいか!」
ノリの軽そうなおじさんは近藤と名乗った。
西宮義人の友人となれば信用に値する男だ。
西宮義人と蓮寺家とは良い友好関係を築いていたからである。
「そうか…。義人さんの友人か…。で、魔法軍の人間がどうしてここに?」
「どうしても何も、こんだけ結界も張らずに暴れられたら、異能力世界のタブーもクソもないでしょう。一般世界への誤魔化しと後処理を任されたんですよ。あー面倒クセェこと押し付けられたな」
このノリの軽さが鼻に付くが、殺気を抑えられていない。今にでも瓦礫の上に立つ男を殺しそうだ。
「そうか。…魔法軍の手を借りるのは癪だが、仕方がない。ここは共闘と行こうか」
「まぁーまぁー。魔法軍のお偉いさん達は蓮寺家を嫌うけど僕は嫌いではないですよ。魔法軍ではなく、僕の手を借りるってことで手を打ってくださいや」
「わかった。はぁー…お前と話すと緊張感が無くなるな」
「よく言われますよ。リラックスになって丁度いいじゃあないですか」
私の中の魔力に無意識的に過ぎった黒い影は消え去った。
そう私は感じた。
「あんまり根詰めるとー…闇堕ちしちまいまっせ」
私はこの男の甘くみていたわけではないが、少し驚いた。
私の黒い影に気づいて気さくに私に話しかけていたのだ。
「貴様…できる奴なのだな」
「お!火蓮寺当主にお褒めの言葉を頂けるなんて、恐縮ですなぁ」
恐縮した素振りも見せていない。
少し笑ってしまった。
だが、心に余裕ができ、視野が広くなった。
「さて!ここからが本題なんですが、『亜空使い』本名は鈴木了、アイツは魔法軍でも追っかけてる指名手配犯でしてね。ここで逃すわきゃいかないんですわ。まぁ情報は色々と集まっているんでね、それを軸にして作戦を立てていきましょーや」
「では、作戦自体はお前に任せる。俺はアイツを殺した後、照英を探しに行く」
「……そーですかい。じゃあソッコー作戦考えますね。時間なさそうだし」
「……なんだこの結界は?俺の世界へのアピールを邪魔しようってことかァ?しゃらくせぇ…」
亜空使い、鈴木了は今になって結界の存在に気づいた。
結界が張られていたのは20分ほど前なのだが、残った生徒や教師の殺害、かろうじて形を留めていた物を破壊するなど暴れていたため気づかなかったのだ。
「この結界は俺の異能力じゃどうこうできねぇからな…使い手を殺すしかねぇようだ」
了は頭が弱い方ではない。
むしろキレる方である。
自分の力量を冷静に分析し、自分の力では不可能なことは違うルートを考え、答えに辿り着く。
この頭こそ、魔法軍を悩ませている原因の一つなのだ。
頭のキレる男故に、今になっても始末できない理由だ。
「さて…結界の使い手さんはぁ?どこだぁ?どうせ魔法軍の手先なんだろうがなぁ!!見覚えのあるやつなら1発でわかるんだがなぁ…。っと!…敵さんからやってきてくれたわけだ!!」
了の前に2人の男が向かってくる。
「亜空使い、鈴木了ッ!!!魔法軍の者だ!!…まぁー魔法軍の誓約に誓いお前を抹殺するから。よろしく」
「貴様が…この惨状を作った元凶かッッッッ」
「おやまぁ…これまた随分と厄介で」
鈴木了はニヤリと笑った。




