西宮薫達は準備する。
グラウディング、オーバーロード殲滅作戦。
これをGODと名付けた。
このGODの目的は3ヶ月後の決戦に備え、世界中にいるグラウディング、オーバーロードのメンバーを排除し、3ヶ月後にグラディエーターを倒しても世界滅亡、という最悪なシナリオを辿らないようにするための作戦である。
3ヶ月後に自動的に世界滅亡を予定しているからな、沼西は。
僕達だけではその時になった場合止められるはずがない。
なので今のうちに削っておこうという訳だ。
というのを、先生が喋っていた。
話し終わるちょうどのタイミングで師匠が帰ってきた。
フリンさんとムーさんにやるべきことを伝えて、師匠は僕を連れてどこかへ出かけた。
まぁ、どこかというか、魔法軍本基地なんだが。
蓮寺家と魔法軍の共闘は滅多にないことだ。
というか、前例をみない。
個人的な付き合い…話を聞く限り少なくとも、要と父さんは繋がってたとして、組織ごとというのは聞いたことがない。
…単純に仲が悪いそうだ。
僕はこのGODを決めるにあたって師匠と魔法軍に訪問した。
「ガキが来ていい場所ではない!!立ち去れ!」
門の前で僕が話す前からこの言葉である。
半泣きだよ。
「ほーう…コイツが西宮薫でもダメっていうのかクソ雑魚が」
基本かたっ苦しいやつとうるさいやつと偉そうなやつが嫌いな師匠はあの一言でキレた。
全部を兼ね備えた一言だったな…。
西宮という名前を出したらすんなり通してくれた。
父さんは偉大な人だったんだなぁ…と感心した。
事情を説明し、ある部屋まで案内されていた途中に師匠が、
「あの…あれだ、すまんな。お前の父さんのことだが…私がもう少し早く到着してりゃあ、死ぬことなんて…なかったのに」
と謝ってきた。
父さんはあの時師匠と会う約束をしていたらしい。
それがどんな約束かは知らないけど、師匠が言うには僕に関して重要なことと、言っていたらしい。
気になるけど…
もう聞けない。
「やめてくださいよ師匠、ここでツンデレ属性とかぶち込んでキャラ崩すのなんか似合わないですよ」
「はーん、人が素直に謝るとお前はそーゆー態度とるのな。殺す」
殺す、と言い放った瞬間、僕は7階ぐらいあるだろうこの魔法軍本基地の5階まで貫いた。
1階から師匠に蹴り上げられたのさ。
まぁもう慣れっこです。
しかし、今回はタイミング悪く会議している部屋に顔を出してしまった。
しかもよく見る真ん中だけ広くスペース開けて机並べてる感じの。
その真ん中のスペース。
全ての目線が僕に注がれた。
「え、えへへ…どーも…西宮薫と申します…」
まぁどーにかこーにかして、協力を得たのだ。
あとは、日本の異能力機関に師匠が説明をし協力を仰いだ。
これで日本の準備は整った。
世界の異能力組織にはムーさんや蓮寺家の火蓮寺、黒蓮寺、煌蓮寺があたった。
ムーさんは表立って活動できない、いわばマフィアみたいな組織の協力を仰いだ。
フリンさんはー…うん、よく聞いてないけどすごい数の軍隊を引き連れて帰ってきた。
さすがに引いた。
そしてGODが開始したのである。
…。
……………。
「おはよー薫。なんか久々だね」
「あ、おはよう達馬。待ってて、準備するから」
「あーー!!お兄ちゃん、また布団ぐしゃぐしゃにしたままでしょー!!」
「悪い和…和美ちゃん。直してくれると助かる」
「お兄ちゃんの頼みごとだったら…別に嫌じゃないけど……メンドくさいんだからっ!」
和美が僕の部屋のある二階へぱたぱた駆け上がる。
今日は達馬が家に来て一緒に学校登校するようだ。
ようだ。って、だって、達馬がインターホンを鳴らし僕の家に来たんだから。
一緒に登校するようだ。
平凡な平日。
平日っていう字は、平凡な日を略してできているのだろうか。
しかし、今日のような日が平凡な日でしっくりくるとしても、昨日のような非凡な日は平日ではなくなるのだろうか。
そういった場合、平日ではなく…非日?
いや、なんか非常勤みたくなってしまうな…。
よーするに、GOD始動といっても、上の人達が今は動いていて僕はやることないのだ。
なので、いつも通り学校へ行く。
「なぁ達馬」
「なんだい、薫。はやく準備してくれないかな」
「……沼西のやつ、本当に世界滅亡しようとしてんのかな」
「何度言ったらわかるんだい薫、真名で呼んじゃあいけないんだって!」
はぁ…。
なんだろうな、いやだって。
目的なくない???
世界を我が手に!!ならまだわかる。
100歩譲ってもな。
滅亡て…。
なんか恨みでもあったのだろうか、現実世界に。
いや、ちょっと浮いているからって、恨みを持つほどでもないだろう。
人類滅亡というシナリオを淡々とこなすヒールキャラとしてこの世界で生きているのだろうか。
この世界で、元の沼西の感情を全て消し、滅亡だけをこなすゲームのキャラみたいになってしまっているのか。
……そんなことがあっていいのか?
……つくづく嫌になる世界だなぁ。
…ん?なんか大事なことを忘れている気がしてならない……。
「薫!!薫!!」
「お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!」
2人の声で我に戻った。
「ん?なんだ?」
「朝ごはん!!!!」
「学校!!!!!」
ちゃんと朝ごはんを食べて、ちゃんと遅刻した。
「はぁ…結局遅刻だよー…」
「まぁそういうなって。慣れればいいもんだぞ?遅刻も」
「慣れたくないよそんなの…そういえば、かなちゃん先生今日休みなのかな?時間になっても全然こないし」
そう、朝のHRの時間になっても先生は来ていない。
それはそのはず。
昨日一通りGODの内容を話し終えた後、仕事があるからと言ってBARを出て行ったのだ。
まぁ多分GODに参加しているのだろう、今は。
そう言ってると代わりの先生がHRをしてくれた。
なんの変哲もない、先生だ。
HRを終え、一限目までの休み時間。
僕は一時は戦闘に参加した達馬に話しておかなければと思い、GODの内容を説明した。
「へぇ…なるほどねぇ…。そんなことが起きてるんだ。だから先生もいないのか!」
「あぁ…うん。先生の能力は『大袈裟な道化師』とか呼ばれていた気がする」
「えぇ!?薫大丈夫だったの!?って、大丈夫か。天下の超越者だもんね」
「その皮肉っぽい言い方やめろ…。で、大丈夫だったの!?ってなんだよ。そんなにヤバイやつなのか?」
「いや、『腐敗』とか『継承』、『愚者』とか例外の超能力ではないけれど、『大袈裟な道化師』は力だけでいったら例外に値するレベルだよ」
ん?こいつなんで父さんの能力や師匠の能力を知ってるんだ?
でも『大袈裟な道化師』だったり、グラディエーターとの戦いでも『腐敗』を知っていたようだし、異能力界では有名なのかな…?
だとすると、僕勉強不足過ぎないか?
身の回りの超能力しか知らない。
「ほー…力だけでいったらねぇ。何がいけないんだ?」
「それは、多分薫が知っているものもあるよ。それで勝ったんだろう?多分だけど」
「あー…なんとなく」
うん。ピンときてない。
それを察したかのようにため息をつきながら説明してくれる。
「はぁ…いい?『大袈裟な道化師』は相手の超能力をコピーする能力だ。これは自分を相手にしているようなものだから、厄介この上ないよね。さらに、この能力の怖いところはコピーした能力の力を一定時間二乗にすることができるんだ。…まぁ五分程度だけどね。これには心当たりない?」
そうか…コピー能力か。
あ、いや、名前からは察していたけども。
力を一定時間に二乗にするのは知らなかった。途中で、先生のスピードやパワーが段違いに上がったことが納得できる。
いや、これだと例外に匹敵する強さだぞ?
バケモンじゃねぇか。『継承』とかコピーしてみろ、敵なしだぞ。
「いや、でもね、デメリットも大きいんだ。この能力。1つ目は何でもかんでもコピーできるもんじゃない。自分の能力以上の力を持った超能力はコピーできないんだ。しかもそのコピーできるかできないか、その境界線はハッキリしていない。その場になってみないとわかんないことなんだ」
むっ。
それはすごい辛いデメリットだな。
下手すれば強力な能力を持った相手に蹂躙されるということか。
かわいそうに。
「二つ目は能力の弱点が相手に知られていること。これは結構なデメリットだね。いくらコピーしようとも、相手は熟知している弱点を突くだけで倒せるんだから。しかも、その弱点については自分は知らないからね。ただ、同じ能力なのになぜこちらが押されるのだろう?ぐらいしか思わずやられていくのさ」
あ、これは僕が勝った時のやつだ。
僕のような能力持ちには全般的にいえる弱点だけどね。
「しかし、この2つ目の弱点は能力二乗効果で消すことができるね。相手の能力を二乗しちゃえば、相手は勝てるはずないんだから。しかしここからが3つ目の弱点だ。一定時間能力を強化した後、能力の力は元へと戻らず、生涯その能力をコピーすることができなくなる。例えば薫がコピーされ、二乗効果を使われたのならば、もう薫の能力を、先生は生涯コピーして使うことができなくなるね。ということはだい薫。言いたいことわかるかい?」
これはハッキリわかった。
「あ、あぁ。二乗効果がきれたら…能力のない、無能力者になって能力者を相手するのか」
「そう、正解だよ薫。しかもそのことに気がつかない相手は、すぐに殺しにかかってくるだろうね。まぁ、別に相手が無能力者と知っていようと関係ないと思うけど、びっくりしちゃうよね」
一般人を殺した感覚になっていて、ってね。
と、達馬は続けた。
それと同時に学校内にアナウンスが鳴り響く。
『あー…特別支援試験を受けた生徒に連絡します。至急、体育館に集まるように。繰り返す。至急、体育館に集まるように』
ん?
特別支援試験?
なんだそりゃ。言いにくいな。
「あぁ…記憶がない設定だったね。これは異能力者って意味だよ薫。行こう」
「設定とか言うな」
たしかに設定だけども。
まぁとりあえず体育館に行くことにした。
体育館の扉の前には何人かの先生が立っていて僕達は何も言われずに扉を開けて入れた。
多分一般生徒が体育館に入らないようにしているのだろう。
僕達は魔法使いなので、体が光って見えたから顔パスで行けたのだろう。
光っていない人達は何らかの質問をされ、それに答えて体育館に入っている。
体育館には結構な数の異能力者がいた。
ざっと…200人ぐらいいるんじゃないか?
「ほー…こんないたんだな」
「薫ー…隠してるけど一応は異能力学校だからね?」
たしかにそう言われれば普通なのかなぁ…。
と、考えていると、まえのステージに置いてあるスタンドマイクに向かって教師が歩いてきた。
マイクテストを済ますとこう告げた。
「えー…評価AからB-までの者はよく聞いてほしい」
そーいやそんな評価もあったっけ。
えっとー…俺はクラス何だっけ?C-だっけ?
「…知っているように、最近異能力者の行方不明が多発している。その理由は、グラウディング…多分ここにいる全員が知っている名だ。あの組織が関与していることがわかった」
「おい達馬…グラウディングってそんな有名なのか…?」
小声で隣の達馬に話しかける。
皆静かに聞いているから私語は目立つもんな。
「異能力者で知らない人はいないんじゃないかというぐらい有名だよ…。悪の組織の代名詞と言っても過言ではないぐらいだからね。…まぁさすがにオーバーロードは広まってはいないと思うけど…」
「そのグラウディング一味に、魔法軍や蓮寺家の者達が一斉攻撃を仕掛ける作戦が組まれた。その名もGOD…」
お、おいおい。
「そんなこと…生徒に言っていいのかよ…」
「なんか意図があるかもしれないね…」
嫌な予感がした。
「その作戦に日本の異能力機関も参加することになっている。無論、この学校も異能力機関。作戦に協力する。…そこでだ、異能力評価AからB-の者、その者達は今回の作戦に強制的に参加することになっている」
そう告げると体育館が一斉にどよめいた。
そりゃそうだ。
昨日まで平凡に暮らしていた人が、今日を境に血生臭い戦場へと駆り出されるのだから。
驚かないはずがない。
「……まぁ、僕は元から参加するつもりだった人間だからね、今更驚かないけど」
達馬が言った。
元から参加するつもりだったのかよ。
「そりゃ、グラディエーターと一戦交えたからね、その資格ぐらいあるでしょ」
との事だった。
いや、実際交えたの僕ね?
「…本当にすまないと思っている。急にこんな事を言いだして…。詳しくは話すことができないが、今この世界は、人類は滅亡の危機が訪れている。それはグラウディングの頭首、『名に触れてはならぬ者』の手によって滅ぼされようとしている」
体育館が驚きから悲鳴に変わった。
…。
『名に触れてはならぬ者』…?
『タブー』…?
タブーって言ってたよな?
「……え、誰?」
体育館が悲鳴でうるさいので、少し声をはって問いかけた。
「あぁ…グラディエーターの名称だよ。『エンド・オブ・ザ・グラディエーター』の名で呼ぶ人は上の実力者ぐらいさ。世間一般では、その名で呼ぶことすら許されない…。真名もね」
ほー。
あいつ色々呼び名あるのな。
あだ名にあだ名を重ねるって…
エンド・ザ・ワールド・グラディエーターだっけ?
あ、違うわ、エンド・オブ・ザ・グラディエーターだっけ?
もうわけわかんねぇよ。言いづらいわ。しかも大して名前変わってないわ。
…なのになんで実力はあんな変わるんだよ……。
というか達馬名前ハッキリ覚えすぎだろ…。
「どうか聞いてほしい。その魔の手から世界を救うためにも、君達の協力が必要だ。来たる日、Xdayに向け始動しなくてはならない……」
その後、グラウディングを先に叩くやら、3ヶ月後滅亡にくるやら、GODや沼西のやろうとしている事を説明し、強制参加の異能力者は授業受けないで戦闘特訓のカリキュラムを組むやらなんやら説明をした。
C-の僕には関係なかったのでほぼ聞き流して体育館を出た。
というか、言われなくても参加するよって感じだった。
「薫」
体育館から出て、教室へ帰る廊下の時に、真面目なトーンで達馬に呼ばれた。
「な、なんだよ。急に」
「グラウディングやオーバーロードは僕達がなんとかする、だから君は」
一息おいて言う。
「君は、グラディエーター…沼西奈々を救うために、余計な事を考えずに、特訓しててほしい。君の隣に立てるようにこの戦いで実力をつける。そしてグラディエーターと対峙する時に、君の背中を護るに相応しい男になって帰ってくるよ。だから、薫はあの3人と特訓して誰にも負けないヤツになってきて」
ムーさんとフリンさんと師匠と…ね。
テンプレ世界じゃないと言わないようなくさいセリフ。
この世界の影響だからか、心地よく聞こえる。
「あぁ。待っててやるよ。その代わり、僕より強くなって帰ってくるなよ?」
「ハハッ!薫は精神面で弱いからね、そこは充分に優って帰ってくるよ」
と、僕は曲がり角でコケた。
なんかイイ感じでしまるかと思ってたのに、コケた。
誰かに足引っ掛けられたようだ。
「よぉ、薫」
蓮だった。
「あっ…蓮くん…」
「あーっと…達馬だっけ?…ちょっと薫借りるぞ」
と言うと僕は服を引っ張られ人がいない空き教室に入れられた。
「俺、あいつになんかしたか?」
「いや、多分目つきな。じゃなくて!!なんだよ急に!!」
達馬のビビってた反応にいちいち落ち込むなよデカい図体して。
で急に呼び出された訳を聞いた。
「おい…」
急に表情が変わって真剣な顔になった。
そして力強く僕の両肩を掴む。
「な、なんだよ…急に」
すると蓮は僕の顔を見て、端的に言葉を発した。
「お前、このままじゃ死ぬぞ?」
それだけを告げられた。




