西宮薫は変化する。
「ねぇ!!!バカなの!?!?首トンッてやっただけで人間気絶するわけないじゃない!!!!しかも今ドンッッッッだったわよ!?首トンッじゃなくてドンッッッッだったわよ!?絶対殺しにかかってきてるわよね!?」
立ち上がって僕に怒りをぶつけてきた。
いや、僕が悪いんだけど。
というか、先生だとは思わなかったし…
というかここに来るのが早すぎる。
魔法使いでもない限り、ワープでも使えない限り、僕たちより後にこの場所についているはずだ。見た所、魔法使いではないみたいだったし。
初めて見たときも、光ってはなかったしな。
しかもなぜ先生が生徒を襲う必要があるんだ?
考えられるのは、先生がグラウンディング、またはオーバーロードの一味だという可能性だ。
ちなみに、
襲われそうになった生徒は蓮が介抱した。
近くで見ると結構可愛い女生徒だったのか、ニヤニヤしている。
正直、すんごい怖い顔である。
「ねぇ!?聞いてるの!?」
「あ、えっとー…なんで先生がここに…?」
返答次第では、ここでケリをつけなければならないのか…。うちのクラス、コロコロ担任が変わることになるな。
それに違和感を覚えないんだろうな、ウチのクラスは。テンプレ世界のモブ……
あれ?…待てよ、さっきなんて言ったんだ…?
「なんででもいいでしょーーーー!もうかお…」
「せ、先生。さっき、なんて言いました?」
プリプリ怒っているところを遮る。
「だからー…」
「いや、そこではなくその前です」
どーせテンプレ通り「だから、なんででもいいでしょー!」って欲しい回答とは違う方を言うに決まっているであろうから、先に言っておく。
「…え?その前って言ったら…『いたーーーーーーーい!!!』かな?」
これ…は…。
「先生…」
「な、なによ…」
「この世界の住人じゃ、ありませんね?」
……。
間が空く。
「へ?な、なんのことかなー?」
目が完全に泳いでいる。
その姿は一般の人から見たら可愛いと感じるのだろうが、僕はそう思わない。というか、この状況では思わない。
逆に腹立つ。
「目ぇ、泳いでますよ?先生…。どこの人なんですか?フリンさんが個人的に結界をはる人なんていないだろうし、師匠の知り合いでもなさそうだ…。だったら蓮寺家関係の人なのかな…。ということは、鈴谷って偽名…?」
バーーーッと言葉を浴びせたので、相手に答える隙を与えなかった。
なんでかって?
なんでだろうね。
「…まだ言っちゃダメなんだよなぁ〜…とにかく君の抑止力にならないといけないって言われたからなぁ…でもなぁ…」
なんかあやふやな事を言っている。
僕の…抑止力がなんだって?
「今素性を明かせないのは、上からの命令かなんかですか?」
僕はゆっくりと戦闘態勢に入る。
足をジリジリと肩幅より少し大きく開き、腰をかがめ、利き足である右足を少し前に、両手は魔法を早く繰り出せるように腰の位置の高さに手のひらを持ってくる。そして少し左右にあげ、手のひらを相手の方へ向ける。
これはムーさんから教えてもらった構えである。
これにしてから接近戦での闘い(特訓)がしやすくなった気がする。
「えへへ〜…まぁそんな感じかな?今は少し話せない感じかなぁ…」
素性は明かせないらしいが、多分蓮寺家関係の人だと考えられる。
ちなみに僕は蓮寺家を信用していない。
だって、初対面でボコボコにされたし。
顔も見た事ないお偉いさん達ってなんか印象良くはないよね。
だから戦闘態勢である。
この世界での影響を受けていないあの人達が、僕に…いや、僕達の学校に何の用があるのか。
味方についてくれるならありがたいが、味方についてくれる人達なら素性を明かしてくれるよなぁ…。
「そうですか…あなたは僕の味方ですか?」
そう問いかける。
「…味方でもないし、敵でもないね。いわば中間、バランスをとるような役割を任されているかもしれないねっ!」
「なんか先生から嫌いな雰囲気がするんで…すいません…ねッッ!!」
なーんか、どっかであったような嫌いな雰囲気。
なんかムカつく。
とりあえず先制攻撃を仕掛けて様子を伺う。
手を突き出し先生に向かって魔法で作った弾、異能界で言われる魔法弾を4発程度繰り出した。スピード重視したのでダメージは軽いが、着弾が速いため、命中率は高い。
が、全て避けられたようだ。
「もー!血の気が多いよ!」
先生は廃ビルの奥へ逃げ込んでいた。
…早いな。
やはり能力持ちだな…。
「先生も、能力持ちですか」
「あなたのその魔法とは違って、元の世界からあるわよ」
ぬ…。
そこまで知っているのか…。
「薫ーッ!生徒の方は安全な場所に避難させたぞ!…後、ちなみにだが、その闘い決着つかずに終わると視えたから、よろしくな」
と言って、蓮はどこかへ行ってしまった。
多分BARに行ったのだろう。
しかし決着がつかないで終わる…と?
ハッ!!言ってくれる、いや、視てくれる。…?日本語おかしいか?まぁいいや。
今の僕が超能力持ちの女性に負けるだと?僕は毎日修行してきているんだぞ?みくびっちゃあいけない。ここで修行の成果、見せてやるぜ!!
とフラグビンビンな台詞を心の中で呟き、先生の方を見る。
「…私と薫君、闘う理由ある?」
「いや、なんとなく…先生の雰囲気すんごく嫌いな感じが漂ってるんですよ」
よく考えれば、それだけで戦闘って…
頭沸いてるな、僕。
「まぁ、修行で身についたことを試したいというかなんというか…」
「嫌いな感じって酷いね…。まぁうん、試したいならいいよ。かかってきなさい」
なんか了承を得た。
よし、ひとつひとつ思い出しながら行くぞ!
思い出すといえば、僕が現実世界で毎日やっていたルーティン、風呂で一日の反省って最近やってないなぁ…。いつからやってないんだろう、コッチの世界きてからかな?
僕が先生の方へ強化した体の速度で向かった。
距離を詰めるのは一瞬である。
その時、ボソッと先生が呟いた。
「…結構、重症ね」
ん?何がだ?
そう思ってるうちに、気がついたら先生の正拳突きが、僕のみぞおちめがけて迫っている。
「!!それはセコい!!」
と言った瞬間僕は廃ビルの向かいの家に突っ込んだ。
いってぇ……。
気を奪って攻撃はセコいなぁ…。
「セコくなーいセコくなーい。反応して思考をとられた方が悪いのーっ」
ぴょんぴょんと跳ねるように歩いて廃ビルから出てくる。
僕は瓦礫と化した家から、僕の上に乗っかってる家の残骸をどかして立ち上がる。
「ッラァ!!……リフォーム代は、先生持ちですよ」
「そこは薫君の魔法でどうにかしてよ!」
そりゃそうか、魔法って便利だな。
「先生…貴女の能力ってなんですか…?」
10数メートル越しに喋りかける。
「私のねー能力はねーって言うわけないでしょ!!聞いたら答えが返ってくるって思わないでよね!」
いや、それはそうだけど。
先生と生徒の立場で話してたらそれは問題でしょ…。
あとスピードと、パワー…。僕の『狂戦士』と似ているな…。同じ系統の能力と予想できる。
その系統の弱点は僕はよく知っていた。
「行きますよ…先生ッッ!!」
僕は魔法で前学校で使った双剣を錬成した。
一番易しい魔法。
超スピードで距離を詰めラッシュを繰り出す。
それをかわすだけで先生は精一杯のようだ。
攻撃を仕掛ける隙を与えない。
「その系統能力の弱点はですね、先生」
「…ッ何よ。こっちは避けるのでいっぱいいっぱいなのに、話しかけないッ…でよねッ」
当たるか当たらないかのところでかわす。
ムーさんに特訓の時教わった剣術が活きている。
剣さばきが前回とは変わって、段違いだ。
「弱点、それは、攻撃が肉体攻撃しかできない。体を強化して防御力を上げても、同じ力、スピードで武器を持った相手だとその防御力は0に等しい。だから今の僕のように、剣を持たれると肉体攻撃を仕掛けることができないよね…僕が防御を上げているから、先生はダメージを与えられないし、ダメージは食らってしまう」
「嫌ってほど、自分を理解しているようね…」
「それを踏まえて、普通なんですよ。西宮薫は」
しゃべっている僕の隙をつき、後方へ飛び距離をとった。
廃ビルの奥へ逃げたようだ。
「それが言えれば、よろしい」
?
先生が言っていることを時々理解できない時がある。
「どーゆー意味ですか…?」
「まだ知らなくていいかな?」
僕は双剣を分解し自身の魔法に変えた。
そして体内に戻す。
魔法というのは体内のどっかから出し入れしているようだ。
感覚的なものでしかわからないが。
そして魔法の源の痕跡、のようなモヤモヤしたままの魔法で、剣のような形を作った。
今回はさっきの双剣とは違う、片手剣。
間合いが見えないようにモヤモヤさせている。
このアイディアはどっかのアニメを参考に…っとこれ以上は言えない。
見えない力が働くからね。
何とは言わないが。
「そんなのも…アリなのね…」
「魔法をつぎ込めば間合いはいくらでも伸びますよ?」
僕は居合の構えをする。
この剣は1発だけ当たるためにムーさんと考えたものである。
だから余計な動きはしない。
じっと待つ。時が来るのを待つ。
「そこだッッッッ!!」
『狂戦士』で強化された腕での居合斬り。
振り抜いたことさえ気づかせないぐらいの超スピード。
「そのスピード、薫君だけだと思ってない?」
気づくと、先生は真上にいた。
飛んでいた。
「やれやれ…コレは使いたくなかったんだけどなぁ…あと五分で終わらせるよ」
そこから、さっきとは比べものにならないほどのスピードになっていた。
「ッ!?…早い…!?」
「遅いよ」
前のような可愛らしい表情は消え、手練れのような顔つきになっていた。
顔は笑っているが。
全ての攻撃がかわされて、少しずつだが僕にダメージが入る。
全部肉体による攻撃なのだが、蓄積するとさすがに堪える。
「世界3人の超越者ってこの程度?思ってたより楽な仕事になりそうね」
「……ッ!…クッ…あれを試すしかないのかな…」
「ここにきて隠し球?いや、強がりかな?お得意の」
なんでお得意とか知ってんだよ…。
この前赴任したばっかだろ。
「それはどー…ですか…ねッ!いってぇ!!」
蹴りがまともに入った。
「そろそろ終わりかなぁ?本当、大したことなかったわね」
「ハッ!ぬかせ!!」
「もう強がりはいいわよ…これで終わりーッ!」
言っておくが、今回は強がりではないぞ?
なんのために、あのムーさんと修行していると思っているんだ。
『狂戦士』の肉体全身強化と、魔法による肉体全身強化。
この2つの強化に耐えられるからだを作ってきたのだ。
名付けて、
「白虎……ッッ!!」
「!?!?…ッッッッ!!」
先生が何かを察知し、後方へ距離をとる。
「なによ…その姿…」
『狂戦士』による肉体強化は、外見に大きな変化は出ることはない。
全身強化をした際に、目の横、こめかみ辺りにヒビのようなものが入り、青く光る。
しかし今はそれだけではない。
体に出し入れする魔法を、体に張り巡らされてある全ての細胞に魔法を注入し、体を強化する。
簡単に説明したが、これは死を絶する程の痛みを伴う。
しかしそれに耐えうるだけの体を、ムーさんと特訓で鍛え上げたのだ。
最初はそれが目的と知らなかったけど…。
そしてその注入された魔法が体の毛穴から漏れ出し、形を形成する。
その時に作られた形が、虎のような姿をしたのだ。そこから名付けられたのが白虎。
「この姿は、今の僕では長くは続かないんですよ…。なので早めにケリをつけますね…ッ!!」
今の僕は、全身が魔法みたいなものだ。
触れるだけで、大きなダメージだ。
先生がさっきよりスピード、パワーが上がっているのか知らないが、それをはるかに上回る肉体強化。
勝利を確信した。
もう間合いなど関係ない。
いうなれば半径4キロ以内が僕の間合いである。
その間合いの中であれば一瞬で移動できる。
音速を超える、光速。
「もらったッッッッ!!!」
僕の攻撃が通ることはなかった。




