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テンプレを壊して僕はモブ子に恋をする。  作者: 戸塚 秦
エンド・オブ・ザ・グラディエーター
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西宮薫は腐敗する。





「久しい名を口にするな…同志よ」



そう微笑しながら呟くと、僕達2人の攻撃を、魔法も超能力も使わずいなしていく。


「ッ!?」


全く手応えを感じない達馬が驚いていた。僕も同じだ。これだけ、魔法を短時間ながら形成し全力でぶつけているのにも関わらず、素手で弾いていることに関して驚いていた。



「その程度か、同志」


達馬が途端に吹き飛ばされた。


「グアァッ!!」


「達馬!!!」


相当な距離飛ばされた達馬は氷の地面へと突っ込んだ。


「よそ見している暇があるのか?」


次は相手の猛攻が襲いかかってくる。


実際相手は指1つ動かさず、仁王立ちしているだけなのだが、その状態で魔法を繰り出してくる。

こちらのスピードよりも速く。



でも、

押される訳にはいかない。





もっと速く。速く。速く。


「フハハーハッ!!いいぞ!もっと、もっと!!」


高笑いし、余裕の笑みを浮かべている。



クソッ…こっちはいっぱいいっぱいだってのによ…。


「ここで私の能力というものを見せてあげよう…」


グラディエーターが呟く。

できれば距離をとりたいが、魔法を打ち合っている状況、ここで動いたら確実に死ぬ。


「ハァ…ハハッ見せてもらうよ沼西。お前の超能力ってやつをよォ!!」


精一杯の強がりを使い、余裕ぶって言ってみた。

できれば、ここで超能力とか使わないでほしい。正直すごくマズイ。



「そう慌てるな…。みたい気持ちはあるだろうが、こんな状況では同志も余裕がなくて見れないだろう?」


と言うと、風魔法で僕を10m程後ろに飛ばした。ダメージはゼロに近かったが、圧倒的有利だった状況を自ら壊した。



完全に遊ばれている気分だった。




「余裕しゃくしゃくだなぁコノヤロウ…」


「まぁそんな怒るでない…。同志も超能力とやらを使えばいいだろう…」


と不思議そうに問いかける沼西であったが、あいにく能力を把握していないので、まぁ無理である。


「いやいや…そーゆーのってアニメとかだと基本最後の最後で使うってもんでしょ」


「フンッ…戯言を」


となんとなく誤魔化した。



「プブァ!!!」


吹き飛ばれ、氷に埋まってた達馬が出てきた。


なんだその声は。



「大丈夫か!?達馬!!」


「まぁなんとか…じゃなくて!!!グラディエーターに近づくな!!!そいつの能力は…」


「もう遅い」





気づくと僕の右腕が黒く染まっていた。




「え…」



途端に激痛が走る。


「グァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」



そこに僕は倒れ込んだ。


「………しまった…!」


能力を分析しようとあえて2人と一緒に突っ込まず、後方で控えていたムーさんが、焦ったように僕の方へ向かう。


「………まさか…こいつ…!!」


ムーさんが沼西の方を見る。

眼は闇によって歪んでおり、微笑した顔はまさにラスボス、といったような顔だ。

その顔で僕達を見下ろしてくる。


「そうだよ…グラディエーターの超能力は…『腐敗』」


「………こいつも例外の1つってわけか…」


達馬が言ったように、たしかにコイツの超能力は『腐敗』。

右腕がピクリとも動かないし、動かすこともできない。

そして、これも魔法より強い超能力。例外の1つ。

実に厄介だ…。


てか身の回りに例外多すぎないか?

…これがテンプレ世界のアレってわけか…。


回復魔法も効きそうにない。



これは…マズいな…。



「フリーーーーーーーンッッッッッッ!!!」




ムーさんが今まで聞いたこともないような声でフリンさんを呼んだ。
















「よう、もっと楽しませてくれないのか?」


「…クソ女が…」


その頃、サーマルキュレーと木蓮時希の対決では、防御に徹しなければならないサーマルキュレーの姿があった。



「…一方的じゃのう……つまらんのう…」


フリンも見飽きていた。




「しょうがない…この力は使いたくなかったんだがなぁ…」


サーマルキュレーの雰囲気が変わる。

雰囲気だけではない、なんらかの異変を感じ希は距離をとる。


「…なんだこいつ」


希は笑った顔ではいたが、そこに余裕を含むことはできなかった。

さっきとは違う。

希はまた戦闘態勢に入った。


「行くぞ…クソ女…」


「そんなんだとモテねぇぞコノヤロウ」


「フンッッッッ!!」




…。

相手が向かってくることはなかった。

サーマルキュレーの肩を優しくもしっかりと掴むグラディエーターの手があった。


その直後に向こう側から大きな声がする。


「フリーーーーーーーンッッッッッッ!!!」


その声を聞きいた後、刹那、フリンの姿は声のする方にあった。


「サーマルキュレー…その力はこやつらごときに使うものではないぞ…」


「すいません…つい熱くなってしまいました」



グラディエーターは優しく、子供でもあやすかのような声でサーマルキュレーをなだめた。

しかし、サーマルキュレーの顔は少し恐怖していた。


手下ですら、恐怖する存在。


「では、行くぞ」


「ハッ!!」


そう答えると、グラディエーターとサーマルキュレーは魔法で上空へとゆっくり浮上していった。


足元が漆黒の魔法で包まれる。


サーマルキュレーも同様である。





そして距離のある僕達と師匠に告げた。




「ここに辿り着くのが早すぎたの…。私はここの地とは真逆へ向かう。同志も力を整え次第、立ち向かってくるといい…。だが、長く待つつもりはない。………3ヶ月、3ヶ月待ってやろう。今宵が…19なら、3ヶ月後の19日。その日に姿を現さなかった場合、各地に手配してある者共と共に、この世界の破滅を開始する。……待って…では、楽しみにしているぞ…」


そう告げると、フリンさんが使ったようなワープを展開し、2人は闇へと消えていった。






僕の腕は腐敗したままだったが、フリンさんが駆けつけて僕に最上位治癒魔法をかけ続けてくれている。


だんだんと黒みが消え、元の腕へと戻る。





それを見た全員は安堵の表情を浮かべたが、その後は誰も言葉を発することはなかった。










想像以上過ぎたのだ。

グラディエーターが。




沼西奈々が。



あの頃から容姿や身長は変わらない。

しかし、眼は闇に濁り笑みは混沌を浮かべ…。


全くの別人にしかみえなかった。




「グラディエーター…」


達馬がボソッと呟く。

自然と全員が耳を傾ける。


「この前まではこんな強さじゃなかったんだ。『エンド・ザ・ワールド・グラディエーター』の時はこんな強くなかった…。そう、薫が圧倒できる程、希さん達が簡単に勝ってしまえるほどの力だったんだ…。なのに…」


「あいつの話は、テキトーなこと言ってるわけじゃなかったのな」


師匠が言いたいことは多分改名した、というとこだろう。確かに改名したからと言って強くなっているなど、思うはずもない。




「こりゃ、異能戦争になりそうだな」



頭をかきながら、困ったように師匠は呟いた。


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