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テンプレを壊して僕はモブ子に恋をする。  作者: 戸塚 秦
昔話を語るとしよう。
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西宮薫は傍観していた。


「テメェの能力はもう俺にバレてんだよ。しかも痛みを引き継いだ状態で勝てると思ってんのかァ?元魔法軍のエースとはいえ手負いの状態で……」


「お前は……相変わらずよく喋るな」


義人は相手が喋っている時に言葉を挟んだ。

会話からしてあの2人は以前も戦った事があるらしいと僕も予測できた。……が、


「ま、魔法軍……?」


僕はその言葉だけは理解できなかった。


「ケケケッ。そういうお前は相変わらず人の話を聞かねぇなァー…。思い出すぜ…テメェの連れを俺の『亜空湾曲』でズタズタにして殺した時のお前の目。殺気でちびりそうだったぜ。今のお前はー…腑抜けちまったがーー…なァァ!!」


男はそう言うと、両手を前に突き出し湾曲した空間を義人に放った。

空間を放つという表現は間違っているかもしれないが、湾曲した空間がすごい速度で義人に迫っているのを見ると、その表現が1番あっていた。


「クッ…手を出すのが早いな、【亜空使い】…!!!お前がやった、お前達組織がやった罪を覚えていないのか!?」


義人は上に人間ではありえない程跳び、湾曲したものを避けた。それが当たったコンクリートの地面はねじれ崩れた。


「亜空使い…懐かしい名だなァ…。テメェらにそう呼ばれてた時期もあった…。俺たちの組織は後々テメェらにぶっ壊され、ノコノコ逃亡しこのザマだクソが」


「フッ…。そこまでは俺たちは成功してたんだけどな。お前が生きていた事が、俺たちの何よりのミスだ…ッッ!」


空中にいる義人が重力に身を任せ落下するのを利用し、男めがけて拳を落とした。

男は即座に自分の下の空間を湾曲させ勢いよく戻した。その反動で体を後ろへ飛ばし拳を回避した。


「そのパワー…何を引き継いだ?」


「なに、ポケットにあった金を少し触っただけだ」


「いやー怖いねぇ〜…『継承』ってやつは。あの距離から拳から落ちて怪我1つないのかよ」


大体2人と能力は理解した。

男が『亜空湾曲』で、義人が『継承』。

2人とも人とは思えない程の戦いをしており、一撃でも当たれば即死、そんなような気迫をしていた。


「けどよぉ…その拳、息子の痛みもあって今そーとー痛えんじゃあねぇのか??お?美しい親子愛だけどよ、お前が殺されたら息子も殺すから本末転倒じゃねぇか?」


「いらん心配をかけたな。こんなもん痛みにすら入らん。どうやら薫はお前の攻撃はそんなに痛くなかったらしいぞ」


「ハッ!!!強がってられるのはいつまでかなァ?」


「フン、言ってろ。…今度は虫で行かせてもらうぞ……ハァァァァ!!」


2人がまた交戦し始めた。

義人はポケットに入っていた小さなケースの1つを開け中身を触った。その直後から格段に義人の動くスピードが変わった。

先ほど男の攻撃を避けたのは多分バッタか何かの跳躍力を使ったのだろう。

そして今は細かな動きが素早く、切り返し、回転、加速が自在に操られている。これはトンボではないかと僕は予測していた。


「クソッ…さすがに厄介な能力だこの野郎。なおさら欲しくなったねぇ。俺たちの組織に」


「黙れ。お前はここで確実に殺す」


「な……ッ!?」


機動力を生かし、『亜空湾曲』で距離をとる男の懐へ潜り込んだ。

攻撃をするには絶好過ぎる間合いだ。


義人の右手が金色に光っている。また金を引き継いだのだろう。

格段にパワーアップしている様に見える。


「一撃で沈める。くらえ…ハァァッッ!!」


みぞおちに鋭く速い正拳突きを入れた。

衝撃で男は後ろへ大きく吹き飛ばされる。


吹き飛ばされた男は交差点の近くにあった廃工場へ突っ込んで瓦礫に埋れていった。


そこからビクともしなかった。


「…終わった……?父さん…!!父さん!!すごい!!あんな化け物1人で倒すなんて!」


倒れている彩さんを気遣いながら遠くにいる義人に僕は声を送った。

そして彩さんをおぶって父のところへ行こうとした。

その時、


「ダメだ!!!!薫!!来るな!!!!」


義人の大きな怒号で僕はピタッと止まった。

その顔はいつもの平穏な父からは想像できないような怒りに歪めた顔をしていた。


どうしたんだ…?あの男はやられたはず…

そんなにそっちが危ないのか?


「どうし…」


僕の声は最後まで義人には届かなかった。

言い終わる前に廃工場の瓦礫から轟音が響き、男の上に乗っていた瓦礫が弾け飛び、四方八方へ飛ばしていた。


「いい1発だったぜェ…さすがにこれは堪えた…しかし、これで俺を本気にさせちまったなァ!!!!!!」


あいつ…あんな一撃くらったのにまだ立ってられるのか!?

義人の正拳突きはクリーンヒットした様に見えた。しかしダメージを食らっているとは様子からは全然見えない…


「……タフだな」


「それがウリだからな」


また交戦が始まった。

先ほどの闘いよりも男の方が優勢に見えた。

全くスピードが違う。

男の言っていたことは本当のようだ。




これが、本気の命の取り合い。




「どうしたどうしたァ!?前までの余裕の表情がないぞ!!エースはそんなものかよォ!!」


「クッ…そろそろまずいかな…引き継ぎ変えるか…」


「そんな暇は与えねェ」


義人の右太ももの一部が弾け飛んだ。

中の肉が丸見えになるほどえぐられていた。

空間を湾曲する時に太ももを巻き込ませたのだ。


右ポケットにはケースが入っていたのだ。そこを男に狙われた。


「チッ…クソッ」


「おいおい…足えぐられてその反応だけかよ〜。叫んじゃってもいいんだぜ?息子の前でかっこつけなくても」


「これくらいで弱音吐いてるようじゃ、魔法軍は務まんねぇ…よッッ!」


義人は左ポケットに入っていたケースを取り出し、何かを引き継いだ。


「クソッ…左にもあったのかよ!!」


「そういうケースを予測しないからお前は弱いんだよ」


「黙れッッ!!くらえ…」


「もう遅い」


男がもう一度義人に攻撃をしようとした時にはもう義人は男の後ろにいた。


そして男は全身から大量の血が飛び出した。


「グハァァア!!!…お前…一体何を…」


「敵に攻撃のタネをバラす馬鹿はいないよ。漫画の世界じゃないんだ、聞けばポンポン答えが聞けると思うなよ」


すごい…一気に状況を一転させた…

目の前に広がる死闘に僕は目を奪われていた。







そんな余裕があったのはこの時だけである。




義人が優勢だったのはこの時だけである。

















義人が死んだのはこの後である。

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