表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/19

日記・トードリリー02

 今日は不思議な人と出会った。

 ボクがいつも通りコピー品のDVDを売っていると、ゲートの向こうから彼はやって来た。


 清潔そうな金髪(ブロンド)。優しげだけど凛々しい(おもて)。身の丈は周囲に対し一際高く、鍛え上げられた靭やかな両腕を広げれば、それこそ神話のロック鳥の様に空へ羽ばたいてしまいそうにさえ見えた。


 隣に立つホコリ塗れの、だぼだぼした迷彩服を着こむ垢抜けない兵士とは違う、いかにも都会で洗練されたといった知的な外貌。

 或いはここには似つかわしくないと言ったほうが良かったかも知れない。


 むかし父さんに連れられて遊びに行った学校の、先生みたいな雰囲気。いやそれよりも格段に格好は良いのだけれど……

 多分にきっと銃を構えるより、教科書を持った方が似合うんじゃないだろうか。




 ――ああ駄目だ。家族が居た頃の記憶を掘り起こすと、どうしても憂鬱になる。そして次の瞬間には、全てを奪われたあの日の光景が、何度も何度も繰り返し脳内を駆け巡る。消えようも無い憎悪と、やるせない虚無をひたすらに増しながら。


 まったく、今日の彼が雄々しいロック鳥なら、ボクはまるで鳥籠に囚われた惨めな小鳥だ。飛び立つ事も(さえず)る事も許されず、ただ死に至る日を待ちわびるだけの真っ黒い雛。


 ボクの帰依する宗教の伝承には、こうある。

「子は死ねば鳥になる」と。


 だったら直ぐにそうなってしまえば良い。

 静かに散って終わるなら、ボクは早く鳥になって全てを忘れたい。


 籠の中のじゃない。今日出会った彼の様な、自由な空に白く羽ばたく、あの大きなロック鳥の様に。――気高く、強く、美しく。そんな風に。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ