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日記・トードリリー05
その日はカンムリウズラの話を聞いた。
ルフが住む国の、故郷のシンボルらしい。
――黒い冠を戴いた、美しい狩猟鳥。
いつか行ってみたい、そんな思いが頭を過る。
憎くない――、訳が無い。
ボクの家族を奪ったのは彼らだ。
勝手に人の国に上がり込んで、勝手に引っ掻き回した挙句、勝手に怖がって勝手に殺す。
その勝手の果てにまた勝手な手を差し伸べるのは、一体どんな残酷で悪意か。
――でも暖かいのだ。
どうしようも無く暖かいのだ。
ルフと過ごした暖かい時間は、まだ家族がいたあの時以上にボクの心を火照らせる。
ああ、これじゃあ全く逆じゃないか。
レイリとメジヌンの物語は、レイリへの恋に狂ったもう一人の主人公が、正に狂人に成り果てる事で幕を下ろす。
だったらルフも、ボクに対してそうなってくれれば良いのにと時々思う。
或いはトードリリーの花言葉が当たっているのかも知れない。
夜風に当たりたい。
この思いがどうか嘘でありますように。




