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人間というもの  作者: 国見あや
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状況①

 静香が電話でこの残酷な報告を千夏にしている間ではあるが千夏は意外にも冷静に受け止め、取るべき手段として、

 「警察署より、今の時点ではまず病院じゃない?」

と母親の静香に話した。母親はまだ混乱というか、妙に怖じけづいていた。

 「そうかしら?もう千夏、あなた話を進めてよ。どこの病院?」


 千夏は一端電話を切った。自宅で布団から這い出し、パソコンをつけて人権

センターに電話していた。同時に合間をぬって午後から初診で救急で脳外科やその他を診察できる近所の病院を探した。


 千夏の父親のJ氏には親族に医者が多く、およそ10人以上がそうであり、またJ氏の亡くなった実兄も今回の傷害事件で加担してしまった認知症である実弟も同じ地区の有名な病院でそれぞれ名医とそて名を馳せていた医学博士であった。


 そのために彼らやJ氏のプライバシーに関わるような病院は簡単に選べない。


 人権センターで確認したこと、それらは事件を直結して結ぶものではないけれど、確かによい判断を電話の相談員は促してくれた。


 病院に行き、診断書を手に入れること。


 つい、千夏はこの状況を踏まえ、閃いたある病院に電話した。もう時間は午後になっていたが電話が病院の交換手や看護師に次から次に回される時間を辛抱しながら、「午後から初診・救急・犯罪被害者・人口透析を受けている身体障害者・脳外科・警察署に届けるため本日中の診断書要」などのキーワードを盛り込めながらも、そうは言っても病院の対応はスローで話の理解はあるが


 「本日は脳外科で診れる先生がいないのですが少々お待ちください。」


とゆっくりと看護師が説明した。


 千夏は胸の中で鼓動が少しずつ早くなり、それとともに焦りを感じ、まだ見ぬ父、J氏の今の健康状況を想像してみた。



 3か月半経った今、もちろん警察署でも撮影されているがJ氏のもっと鮮明な事件直後の痣や傷や疲れ切った何とも言えない表情の写真を千夏は待ち合わせた病院で自分のiphon5で撮ったものをしげしげと、またじっくり見れば見るほど溜息がでる。


 心の中は張り裂ける、という感情ではない、何か鈍った悲しい気持ちだ。

 


 幸いJ氏は生きている。今、生きている!


 後遺症などの影響から半年以内かもしくは1年以内には死が待っているかもしれないことをその当日に診てくれた医師に口頭で言われた。しかし、予測がはっきりしないことを診断書には書けない、とも。


 人間は生きていれば、生きているからこそ善き人間として生きていかなくてはいけない。



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