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人間というもの  作者: 国見あや
12/16

苦しみの十字架

事件の当時の様子を思い出す。詳しい記述は連日寝ずに千夏は父親のJ氏から聞いて、文書に書き残した。


それらは顧問弁護士に提供するひとつの資料ともなり、また正確な記録として保管している。管轄の警察署にも参考資料として送っている。


しかし警察署の対応は遅い。事件の当日は16時頃事件のあった管轄の警察署に打撲したフラフラの父を連れて母と3人でタクシーで行った。


始めは父親をJ氏を病院で診てもらった後、車でJ氏の住んでいる管轄の警察署に行った。父は歩くことができず車の運転なら、と気丈にも自分で運転した。地元の警察署には、ここで時間を食ってしまったが事件のあった管轄の警察署に行くように、と言われた。そこまでは相当距離があるので、地元の警察署に車をおかしてもらいタクシーで向かったというわけである。


地元の警察署は話がスムーズにいくよう担当に伝える、と言っていたものの、事件のあった管轄の警察署に着くと一体どんな事件で来たのか何も分からない、という具合である。


そして、見るからに強烈な打撲を全身に受け、84歳という人工透析を3日に一回3時間受けている重症の身体障害者となっているJ氏に、翌朝が透析日だというのにもかかわらず夜中2時まで聴取を繰り返した。


写真を撮るときの指示は「そっちじゃない、こっち!」と乱暴で面倒くさそうに警察署側の人がやっていた印象にも思う。


夜中まで付き添いは母と私、千夏。最後に兄が仕事が終わってから急いでスペアキーを使って地元の警察署に置きっ放しの車を運転して迎えに来てくれた。



それでも、まだ再現、という事件の実際の様子を再現してみるために警察官が数人と弱々しい父を連れて、「これは身内にも見させません。」と言って父は警察官と共にエレベーターの中に入ってドアはしまった。


20分後父はさらに憔悴しきって現れた。エレベーターがあくとなんとか、といった足取りだった。


途中で警察署の外の自販機に買いに行ったミネラルウオーターを飲んだ。


警察官はなおも淡々という。

「このまま現場検証にも行かれますが日付が変わっているので、もうよし、としましょう。」



そして「何かあったらこちらに電話ください。」


と強行犯という部署の名刺を差し出した。


あれから何か進展があったとは思えない。


未だ現場検証はされず。


長くかかりそうなだ。


今、無事に生きている父を見て安心する。


苦しみの十字架を背負っている父を側でみながらも

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